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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2008.11.12 |
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香港家庭料理に学ぶ…LEA & PERRINSは、1800年代、英国Worcestershireで生まれた。(1)さらさらしており、アンチョビとタマリンド風味があり、独特。 小生も独身時代に、味の変化をつけるのによく使った。 コレ、香港では定番らしい。 香港の料理といえば、地元の蠣油が有名だが、1888年に開発されたという。(2) どちらのソースも、それほど歴史がある訳ではない。 食事とは文化そのもの。今回は香港料理を参考にしてみようと思う。ここは中国だが、イギリス文化と混交しているから、中華料理のなんたるかを知る意味では面白い題材ではないか。ただ、中華料理店は、ウリが微妙なコツが必要な蒸しモノのことが多いし、油と湯(スープ)を多用する品が多く、強火短時間調理で美味しさを引き出して提供している。香港も日本も、家庭で、こんな料理は簡単にできないから、どんなものになりそうか想像しながら、考えてみた。 参考にしたのは、1948年生まれの謝華顕 聘珍樓総料理長の本。(3) この本が気に入った理由は単純で、“基本のメニューは三菜一汁”、“香港の晩御飯は白いご飯とスープに、おかず3品”とされていたから。 三菜は、「酒のつまみ兼用+野菜+メイン」だそうで、ご飯が温かいことが必須条件だという。家庭料理と宴会料理は全く違うそうで、それほど重くしないものらしい。まあ、一日のリズムが「軽い朝粥+温かい弁当型の昼食+点心のお八つ+晩御飯+夜食スープ」という5食になっているからだ。 なんとなく、ほほ〜、そういうものか、と納得感が生まれる。
このなかで、素材で珍しいのは「鹹魚」。塩漬半発酵後乾燥させたもの。謝華顕料理長によれば、“毎日ご馳走を食べているお金持ちが「たまには粗食で」というとき”のメニューだという。 小生は食べたことがないので、いつか是非味わいたいと思っているが、そんじょそこらで、手に入りそうもないからどうなるか。と言うのは、悪臭紛々モノだからだ。ただ、加熱すると、臭みが消え、旨味が引き出されるそうだが。 尚、「曹白」は、ニシン科の骨っぽい魚。 → 「ヒラ 」 (2008年11月7日) 他に、日常的に使わない素材としては、蝦米[干海老]と袋茸(缶詰)があるが、これは大きなスーパーや中華食品店で売っている。中華料理が好きなご家庭ならすでに常備品かも。ただ、干海老はどうも品質がピンキリで厄介である。値段と品質が一致していないことがあるから要注意だ。 以下、簡単にメニューを説明しておこう。鹹魚焼を除けば、中華料理店(広東系)で類似のものを食べたことがある筈。 ■胡瓜のニンニク和え■ ・乱切り胡瓜を塩揉みして、洗ってから、冷蔵庫で冷やす。 ・ニンニク微塵切りをよく炒め、塩で味をととのる。好みで砂糖も。 ・最後に胡麻油をくわえて、これを皿に盛った胡瓜にかける。 ■冬瓜と砂肝の湯■ ・乱切りした冬瓜を軽く茹でる。 ・砂肝に片栗粉をまぶし軽く茹でる。 ・鶏スープに冬瓜と砂肝を入れて煮込み、塩/胡椒で味を調える。 ■鹹魚焼■ ・油をひいたフライパンを熱し、余分な油を捨てて、鹹魚を入れて、煎り焼き。 ・皿にのせ、「LEA & PERRINS」ソースをかける。 ■空心菜と蝦米の炒めモノ■ ・蝦米[干海老]をひたひたの水につけて戻す。(30分程度) ・空心菜を適当な長さに切り、軽く茹でて、湯をよく切る。 ・中華鍋を弱火で熱して、生姜とニンニク微塵切りを入れ香りを立てる。 ・干海老を入れ、焦がさないように、十分火を通す。 ・強火にして、茹でた空心菜を入れ、一気に炒める。 ・水溶き片栗粉を加える。 ・鶏油(葱の香り)か葱油を数滴。 ■豆腐と袋茸の煮物■ ・蠣油を加熱し、香りが出たら、鶏スープを加えて暖める。 ・豆腐と袋茸(缶詰)を入れ、紹興酒少量を加えて煮る。好みで砂糖も。 ・水溶き片栗粉を加える。 ・できれば、最後に葱油を数滴。 別に、上記のメニューに挑戦することをお勧めしている訳ではない。どのように設計すれば、香港家庭料理風になるのか、仮想料理を考えてみた結果である。挑戦されるなら、この真似ではなく、方針をご理解の上、ご自分で設計されることをお勧めしたい。はっきり言って、家庭料理なのであるから、難しいことは何もない。 【鶏スープ味を基本とする。】 汁に限らず、鶏スープ(正確にはスープストック)はできる限り入れる。 1970年代、香港の下町を歩いていて、英語が通じない店に入ったことがあるが、その辺り一帯が鶏スープの匂いで満ちていた。多分、飛行場を降りたとたん、そんな香りを感じる人もいるのではないか。日本の飛行場は醤油の香りがするという人がいるのと同じようなもの。 【多様な調味料と油から、自分流のものを選んで、味と香りを楽しむ。】 さて、このメニューを見て感じるのは、調味料や油の多彩さ。いろいろ試す精神があるようだ。調味料として、Worcestershire sauce[英式辣醤油]と蠣油が登場しているが、これは、和食の、味噌・醤油だけにむやみにこだわる調理方法とは相当違う。日本ならウースターソースといえば、もっぱら洋食用となりがちだが、そんな定式化はお嫌いのようだ。まあ、味はいくらでもあるのだ。流行のXO醤(4)など典型。ソースについては、新しモノ好きなのである。ここは調味料王国と言ってよさそうである。おそらく、家庭では混合した自製も沢山ある筈。それが家庭の味なのだと思われる。 味噌系: 芝麻醤,桂候醤,豆板醤,辣椒醤,甜辣醤,XO醤,沙茶醤,豆鼓醤 甘味噌系: 海鮮醤[広東風],甜麺醤[北京風] ソース系: 生抽[濃口醤油],老抽[たまり],番茄醤,魚露[魚醤],豆板醤,鹹蝦醤,柱侯醤,梅醤,叉焼醤 発酵豆腐: 白南乳,紅南乳 油にしても、揚げ油[油炸油]、サラダ油[沙□油]、オリーブオイル[橄欖油]といったものとは別に、香りをつけた葱油、鶏油、辣油、花椒油、等がある。日本では、ラー油は常備品だろうが、油で香り付けという発想はなさそうである。販売している油の種類は多いのだが、使う時は買ったものを色々な用途で使う傾向があり、油にこだわる割りには、使い方には無神経な感じがする。中国は、油の使い方に凝るから、様々な調味/香味油が必要となるのだと思う。 例えば、香港新潮流の刺身料理には落花生油となる。拙宅でも、中華街で覚えてきた、「鯛の刺身+大根千切りのツマ+ポテトチップ(揚ワンタン皮の代替)+砕きピーナッツ+香菜+落花生油」という料理を楽しむことが多い。 【油調理が原則。・・・鍋を十分暖めてから調理し、素材の食感を保つ。】 中華料理の基本はやはり油。家庭で炒める時は、油を入れて蓋をして加熱して、(空焼き可能な器具)完全に熱くなったら余分な油を捨てて素材を入れるべきだとか。これが食感を大きく左右する。そういえば、厨房の料理人は毎回そんなことを小まめに行っている。家庭では強火ができないから、蓋をした空焼きは必須と言えよう。 つまり、ベースの油と、調味油や香味油を明確に峻別するということ。中華料理のポイントはここだ。おそらく、家庭では調味/香味油は自製し、瓶にとっておくのだろう。 これは、たいして難しいことでもないから、販売されていない味や香りのものを、作ってみることをお勧めしたい。 【片栗粉をできる限り使うことで、美味しさを保つ。】 和食では片栗粉はトロミをつけるためのものとされているが、香港家庭料理ではそれだけではなさそうである。 御飯にしても、お握りのような冷えたものは食べないそうで、調理後冷めにくくし、エキス分流出を少なくする効果を狙っていると思われる。和の“さっぱり”感は駄目で、“とろ〜り”感を信条とする料理だと思う。 【野菜を沢山摂る。】 香港料理の特徴は、皿に盛られる野菜の量の多さ。日本人は食べきれないかも。 青野菜は、それこそなんでも食べるという姿勢のようである。茹でて、炒めるのが基本だろうが、茹でたものに、調味料をかけるというのもよさそうである。例えば、「蠣油+醤油+砂糖+片栗粉」でかけ汁を作るだけのこと。和食より、一手間かかるが、その位しないと沢山は食べれないということでもある。 尚、食べやすくするためには、野菜は必ず下茹でした方がよい。日本の家庭では面倒だからそんなことはしない。これは結構重要である。ただ、絶対に茹ですぎないこと。もしも、「下茹で→炒め」だけでは、野菜が硬いとか、筋があり食べにくいとなったら、少量の鶏スープを入れて煮込むべきである。食べにくいものは絶対に駄目。それが香港流ではないか。 そうそう、茹でる際は、塩を入れ、野菜の色を保つとよいそうだ。例外はレタスで、塩と反応して色が変わるので、塩のかわりに油だそうである。 --- 参照 --- (1) ABOUT LEA & PERRINS http://www.leaperrins.com/about-lea-perrins.aspx (2) 李錦記の歴史 http://japan.lkk.com/aboutlkk/aboutlkk_legend.asp (3) 謝華顕: 「香港菜單-おかずメニュー-」 柴田書店 2004年 [目次] http://www.shibatashoten.jp/pdf/05950.pdf (4) 半島酒店1楼で開店した「嘉麟樓 Spring Moon」が開発したと言われているが,通称名化している. [Spring Moon, The Peninsula, Tsim Sha Tsui, Kowloon] http://www.peninsula.com/Hong_Kong/en/Dining/default.aspx#/Hong_Kong/en/Dining/Spring_Moon/ (1900 advertisement 写真) [Wikipedia] http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Leaperrins.png 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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