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2009.2.4
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猪鍋のお勧め…


 山鯨との命名は、言いえて妙。
 これは禁忌を破るための言葉とされているようだが、本当かネ。
 昔、新宿で、醤油系で煮込んだ甘い猪肉を食べたことがあり、
 そこでわかったのである。
 学生の頃、山で一人で食事をしていたら、お隣さんのグループに、鯨肉大和煮缶詰を頂いたことがあり、
 その時の味とどっこいどっこいだったのだ。

 鹿肉の話をしたら、猪肉を放っておく訳にはいくまい。こちらの肉は、やはり江戸伝来の鍋といきたい。
  → 「鹿肉料理を探る 」 (2009年1月28日)

 その猪鍋だが、鹿鍋とは違って、山里ではよく出くわしたものである。
 これをボタン鍋と呼ぶ人もいるようだが、それとは違う。専門店のように、牡丹の花のような盛り付けになっていないからだ。と言うより、始めから鍋に肉が入って少々煮込んであるものを供されることが多かった。
 一番印象に残っているシーンといえば、東京に雪が降った翌朝、中央線の駅から山を越え、夕刻に道志に入った時。登場したのはやはり猪鍋だった。冷え切った体がこれで一気に戻った。学生時代のことだから、大昔だが、その頃すでに民宿の定番だった訳である。
 この鍋が優れているのは、気にせずグツグツ煮ても気遣い無用な点。と言うより、硬かろうが、じっくり噛んで味わって食べるなら、それなりに嬉しいという点。鍋奉行役も不要だし、話がはずんで煮過ぎたところで、一向にかまわないのだ。
 それに学生が払える価格だった。・・・当時は、学生割引の風習もあったから、時価はよくわからぬが。
 まあ、この鍋は、地元以外では、当時の、若い人向きだったと言えるかも。
 と言うことは、ひょっとすると、今は、ノスタルジアを追う高齢層相手の高級料理になっているかな。そうならないことを願ってはいるが。

 そう思うのは、最近はイノブタなるものに代替されつつあるから。イノシシ君が少なくなったのか、需要が旺盛で応えられなくなったのか、安価で提供できるからか、はたまた、猪臭さが嫌われているのか、皆目わからないが、情緒を欠くことは確か。小生はご遠慮させて頂いている。

 さて、鍋だが、具は、何を入れようがかまわないとはいえ、煮込むのだから、本当は大根がお勧めだ。それに、グッタリ野菜がお好きなら長葱・芹・春菊あたりがよかろう。お後は、茸程度にして、色々加えないのがよいと思う。猪臭さが嫌いなら別だが、笹欠ゴボウは入れない方がよい。
 もちろん、味は、味噌仕立て。さらに、万葉から連綿と続く、猪食い文化の雰囲気を加えたいなら、粉山椒を振るべきだろう。

 そうそう、言うまでもないが、猪の旬は冬である。肉が入手できそうなら、猪鍋を試してみよう。
 もちろん、高アルコール濃度の純米酒をお燗することを忘れずに。

 --- 参照 ---
(歌川広重「名所江戸百景 比丘尼橋雪中」) [Wikipedia]  http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:100_views_edo_114.jpg


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