トップ頁へ>>> オジサンのための料理講座
←イラスト (C) SweetRoom 
2009.5.20
「料理講座」の目次へ>>>

 


素人が教授するハーブ入門[1:紫蘇系]…

  ハッカ味はたいていは合成メントール。野依教授の不斉合成は有名だ。
  たまには、天然ハーブもどうか。複雑な香りに触れるのは楽しいものである。

↑ (C) SweetRoom 

 今回はハーブの解説といこう。多分、オジサン族が一番苦手な分野だと思う。もっとも、若い女性とおつきあいになっている方々は逆で、薀蓄派が多いようだ。こうした情報を、どう役に立てるのかのノウハウが記載されている本でも出したら売れるのではないか。余計なお世話か。
 実は、オジサンが苦手と見なしたのは、友人だった建築士がハーブになんの興味も持っていなかったから。仕事一途の壮年プロフェッショナルで、専門はビルの衛生設備と配管の設計。芸術志向の建築家から程遠い体質とはいえ、ハーブどころか、花木の名前をほとんど知らないことに驚いた覚えがある。
 ところが、ハーブで食事が楽しめることを知り、香りを覚え始めたのである。残念ながら、そうこうするうちに、亡くなってしまった。どうせなら、もっと早く楽しんでおけばよかったのに。合掌。

 そんな個人的な昔話はどうでもよいのだが、こうしたオジサンにとって、ハーブ話は退屈極まりないのである。聞き慣れぬ名前だらけで、つまらぬ情報は矢鱈に過多だからだ。しかも、どんな時に、どれをどう選ぶかという肝心な話は滅多に聞けない。と言うより、質問すると、好き好きだからと答え、すぐに細かい話にすり替える人が多いのである。お陰で、全体像はさっぱりわからない。

 そこで、オジサンにわかるように、少し工夫してまとめてみることにした。(間違えてはこまるが、このサイトは教育の場ではない。骨子は、個人的な体験ベース。従って、世の常識と合っている保証は皆無。そのようなものとしてお読み頂き、後は、ご自分の頭で考えて欲しい。)

 先ず、日本のハーブの代表を考えるとよい。誰でも知っている、【シソ[紫蘇]】である。
  → 「紫蘇」 (2008年5月7日)

 葉、実、(花)芽、を利用するし、色も緑と紫がある。使い方も色々。様々な食素材を、大葉で巻いて、油で揚げる料理は子供から大人まで結構な人気。もちろん、色々な場面で薬味的に加えることも多い。漬け物にも使うし、“ゆかり”というフリカケ的なものもある。
 紫蘇の香りが好きなら、展開は工夫次第。これがハーブの楽しみ。

 当然ながら、西洋にもシソの仲間がある。従って、先ずは、それを知ることから。

〜 代表的な薄荷類(1)
- 名称 - - 薄荷名 - - シソ科の属 -
Peppermint ペパーミント “洋種” ハッカ属
Spearmint スペアミント
“緑” ハッカ属
「日本のハッカ “和種” ハッカ属
Apple Mint アップルミント “丸葉” ハッカ属
Pineapple Mint パイナップルミント ハッカ属
Pennyroyal Mint ペニーロイヤルミント “目草” ハッカ属
Lemon Balm レモンバーム “西洋山” セイヨウヤマハッカ属
Catnip キャットニップ “犬” イヌハッカ属
Catmint キャットミント “千曲” イヌハッカ属
Hyssop ヒソップ “柳” ヤナギハッカ属
Summer Savory サマーセイボリー “木立” トウバナ属
 それなら、誰でも知っているハーブからということになる。それはなにかと言えば、【ミント[Mint]】類。
 紫蘇の葉を小さくしたようなものが多い。もっぱら、その葉を使う。

 「薄荷」なら言われなくても知っていると答える人が多いが、実はその種類はとんでもなく多い。(世界中で実に140種以上(2))最近は、アップルミントなるものもスーパーの棚に並んだりしており、ミント好き人口は増えているのかも知れぬが、オジサンには遠い世界ではないか。
 どうもミント類は相互に混ざったりするらしく、それでなくても種類が多いのに、さらに紛らわしい。素人には難しい領域である。ハーブマニアになるつもりでないなら、ミントを極めようなどと思わない方が無難だ。とりあえずは、ツンとくる“ペパーミント”と、清涼感溢れる“スペアミント”の香りの違いを理解しておけば、十分ではないか。(オジサンならこの辺りの香りはガムと薄荷飴でご存知だろうから、違いを学ぶ必要はないかも。)

 ミントは試すなら生葉で。よそのお宅の庭で見つることも多いから、頼んで頂戴するという手がベスト。手入れゼロで茂りまくっている状態は結構多い。できれば、見ず知らずの人から、ほんの少量いただこう。そうでないと、結局は高くつくのがオチ。(ハーブ仲間と認識され、その後、ずっとくれたりすると実に厄介という意味。)
 入手したら、ミントティーで香りを堪能しよう。
 紅茶用のポットでなく、葉と液の色がよく見える、透明なガラス製の廉価な急須を、ハーブティー専用に、別途購入することをお勧めする。(金網が付いていたら外して使うこと。)

← (C) SweetRoom 

 せっかくハーブティーを賞味するのだから、純ミントだけでなく、もう一つ体験しておくとよい。
 上記の表に登場する、【レモンバーム[Lemon Balm]】を。
 名前通り、レモン風味をうっすらと感じることができる。

 多分、オジサンはミントフレーバーは嫌いではないが、ミントティーが習慣化することはあるまい。緑溢れる環境にのんびり住んでいる人でないと、清涼感の嬉しさは、どうしても限定的になってしまうからだ。濃い緑茶や、アールグレーの癖ある香りがたち込める紅茶、エスプレッソといった、脳味噌を刺激するような喜びには勝てないのである。
 この偏見に同意される方は、ベルベル人が愛するミントティーも試したら如何かな。[緑茶(中国茶)、ミントの葉、氷砂糖を直火可能なポットに入れ、熱湯を注ぎ、苦くなるまで煮出し、ミント葉が入ったグラスに注ぐらしい。]モロッコの喫茶道があるようだ。(3)
 小生は飲んだことはないが、感冒予防になりそうな感じの飲み物ではある。

 ここで注意すべきは、ミントの生葉入手。少量にしておくこと。
 応用場面は限られているから、どうしても余ってしまい、もてあます。干してもどうせ使わない。(清涼感が欲しいのはたいていは飲み物で、ほんの少々で済む。後は、スイート系やカナッペに乗せる程度だが、こちらも飾りものに近い。と言って、素人が無理に他の料理に使っても美味しいものができるとは思えない。)
 まあ、ミントはたまの気分転換と割り切り、毒見程度で済ませたらよい。

 ミントはこんなところで次に移るが、上記の表で「ヒソップ」とか「セイボリー」が登場していることにお気づきだろうか。これらは、ティーというよりは料理の香り付けに使うもの。葉の形が全く違う。
 尚、後で述べる「オレガノ」も、ハナハッカとも言われると記載されている本もあるが、よくわからない。確かにハッカ臭はある。

 さあ次。

← (C) SweetRoom 

 食べ物ではないが、一面紫色のお花畑で有名なハーブの香りに触れて欲しい。
 そう、■■■【ラベンダー[Lavender]】■■■だ。

 ミント系とは葉の形状が違うことに注目して欲しい。しかし、れっきとした紫蘇の仲間である。
 女性が溜まっている雑貨屋には、たいてい花の乾燥品が売られているから極く少量購入しよう。お洒落感がある商品で高価だからといって良質とは限らないから、そのつもりで。もちろん他のタイプの店でも入手できるが、こうしたお店には、香りを楽しむ様々な商品が並んでいるから、それらを眺めておくことは悪いことではない。ただ、オジサンが一人で入るのは大いに勇気を要するから、覚悟してかかろう。
 ラベンダーの香りが心地よいか否かは、人それぞれ。一般的には、女性には人気抜群のようである。
 食とは無縁の香りに感じられるかも知れないが、この香りが気に入れば、紫蘇系のハーブは楽しめると思う。違和感があったら、多分無理。従って、ハーブ料理を試す時は、食べずに捨てることになることを前提にして計画をたてよう。
 ともあれ、準備体操代わりに、ラベンダーの芳香体験ができればそれだけで大成功と考えよう。尚、ただ嗅ぐのではなく、匂い袋にして(「ポプリ」)枕元に置くのも一興。その結果、悪夢が襲ってきたら、香りが体質的に合わないということ。もったいないが捨てるしかない。(当たり前だが、普通は気分が落ち着いて、安眠を誘う。)

 ここで突然だが、ジントニックはお好きだろうか。もしこれが化粧品臭くてたまらぬという人は、次は跳ばした方がよいかもしれない。ヘアートニックで感じるような香りを試す段階に入るからだ。
 と言うことで、ここからが料理の本番。基本ハーブに入ろう。
 2種類学ぼう。ローズマリーとタイムである。ラベンダーに似て、細長い葉が、茎にバラバラと付いている。枝のまま使うといかにもハーブという気分が出るが、葉のみを使っても効果が落ちることはない。

 生の枝が売っていればよいが、なければ、香辛料売り場で乾燥品の「ホール」(パウダー[粉末]ではないということ。)を購入。前者は肉料理の香り付け、後者は魚介の煮込みに使うことが多い。それぞれ試してみるとよい。

← (C) SweetRoom 

 【ローズマリー[Rosemary]】とはラテン語で“ros[露] marinus[海]”だそうだ。どうしてそんな名称なのかは調べていないが。
 地中海の植物だから、日本で育てるのは厄介と見たが、日当りの良いところで生えていることがある。どうしても生が欲しいので自家栽培する人が少なくないようだ。多少、樟脳臭さを感じるハーブだが、病み付きになるのかも。
 そう思うのは、イタリアンの定番ハーブでもあるから。食材そのものが持つ美味しさを重視する和のセンスと通じるものを感じるということ。ハーブについても新鮮さを要求するだろうから、多くの家庭で自家栽培しているに違いない。
 イタリアンでは、魚介料理で引き立つハーブだが、欧州全体ではそんな食材調達状況になかったから、基本用途は肉料理とされるに違いない。
 初心者は、とりあえず鰯料理で試してみたらよい。簡単に作れて、リスクも小さいから。
 (自己流ハーブソルトに挑戦と考えてもよい。)
  ■■香草の鰯フライ■■
   ・刺身で食べれる鰯を捌いて[頭無しの開き]売られていたら大量に購入する。
     (ご自分の手で処理してもよいが結構時間がかかる。)
     (朝採りでない場合は、臭み抜き処理をした方がよい。)
   ・キッチンペーパーで表面の水分を取り去る。
   ・塩・(胡椒)を振ってから、ローズマリーの葉を散らす。
     (すべてにハーブをつけず、まず1枚試しに焼いて味を見ること。)
     (“不味い”と感じたら、ハーブは止めるしかない。)
   ・パン粉をつける。
     (生パン粉が望ましい。卵の黄身を使うのが一般的。)
   ・フライパンにサラダ油を引いて、好みの加減で焼く。
     (揚げ物のフライではなく、伝統的なフライである。)
   ・ともかく、冷めないうちに香りを楽しみながら頂く。
     (状況を頭に描いて手順を考えてから始めること。)
   ・冷やした白ワインが進む。
 この簡単料理が気にいれば、洋風香辛料は学びがいがある。洋風は、「塩+辛味+芳香」という味付けによって、油/脂分の味わいを深めるものが多いから、香りのバラエティを知ると食の喜びが増すからだ。和食とは考え方が違う。
 だいたい、日本人の常識的感覚なら、新鮮な鰯を、わざわざ強い香りのハーブを加えた上で、油まみれにしたくなかろう。薬味は使うが、油分を入れず、生・焼・煮と色々な調理方法で、青魚の身を楽しむことになる。
 洋風調理とは、鮮度が落ちた魚でも美味しく食べる調理方法だと思う。ハーブはこの場合、極めて有効。ご存知のように、和風でも、大葉(葉の筋を除いて千切)やお茶(煎茶を粗く粉末化)を使うと見違えるものに仕上がったりする。(初心者が試すと逆だったりするが。)
 この場合、純米の冷酒が欲しくなる。

 つまらぬ話をしたが、ここで、ひとつ注意事項がある。ハーブ初心者であることをわきまえ、新鮮な鰯を使うこと。鮮度がよさそうに見えても、加熱調理用の鰯は、料理が上手くできても、間違いなく臭気を感じる。このための美味しくない匂いが混ざり、芳香に集中できない。これはこまる。
 加熱調理用の魚を使うのは、ローズマリーの芳香がわかってから。

 尚、この香りを知れば、魚ではなく、臭みを感じるラムやマトン料理に使うべきハーブであることに気付くだろう。マトンは余り流通していないが、ラムは廉価な時があるから、そんな時に購入して試すとよい。
  ■■ラムチョップのグリル■■
   ・ラムチョップを購入。
   ・生のローズマリーを微塵切りして肉に振りつける。
     (残念ながら、フレッシュでないと味は相当落ちる。)
   ・上質の塩をかける。胡椒は不要。
   ・ロースターで焼く。
     (焼加減はお好みだが、ボケーとしていて焼き過ぎぬこと。)
     (これだけで抜群に美味しい。)
   ・キャンティが進むこと請け合い。
 牛・豚は、慣れた味から外れると、美味しさを感じられないかも知れないから、最初は避けた方がよい。

← (C) SweetRoom 

 【タイム[Thyme]】は、葉がついた枝を、煮込む最初から入れる。香り付けというより、魚介臭さを和らげる効果が期待されているようなハーブだ。従って、上記の鰯のフライには、ローズマリーよりタイムが適当かも。しかし、タイムを使うと面白味が欠ける。
 タイムを使うなら、クラムチャウダーなどが最適だと思う。フレンチ料理のソースの香りつけもよいが、初心者向きではない。
 初心者に向くのは、青魚のグリル。本当は、鯖の切り身で学びたいところだが、鯖は好かんという人もいるので、丸ごとの鯵でいこう。この場合、和風っぽさも出る簡単料理がお勧め。
  ■■鯵の香草グリル■■
   ・塩焼に向いていそうな鯵を購入。
     (痩せた鯵は避ける。)
     (魚屋さんに腸とゼイゴをとってもらうと楽。)
   ・軽く水で洗いキッチンペーパーで表面の水分をよく取り去る。
     (ついでに、弾けないように、包丁で皮に十字の切り込みを入れるとよい。)
   ・タイムの枝を擦りつけ、塩を振る。
     (胡椒はいらないだろう。)
   ・タイムの枝を乗せて焼く。
   ・好みのオリーブオイルを垂らす。
   ・焼きたてを箸で頂く。
   ・お好きな焼酎のお湯割りで。

 ラベンダー、ローズマリー、タイムと、紫蘇のような軟い広葉ではなく、細くて若干丈夫そうな葉が付いているハーブを取り上げてみた。香りが紫蘇とは全く違うので、これぞハーブ料理という感じがしたのではないか。
 そこで、多少、紫蘇臭さにもどろう。
← (C) SweetRoom 

 わかり易いのは【セージ[Sage]】だ。
 名前からお分かりのように、ソーセージの肉臭さを抑えるため、細かく刻んで入れるハーブである。紫蘇入りソーセージが好きという人もいるから、なんとなくその価値はわかる筈。紫蘇同様に、相当に癖が強いハーブだ。香りは違うが、その点ではよく似ているのではないか。ソーセージつくりは大変だから、まあ知識として留めておくだけでよいか。もっとも、レバー料理をしたいなら、お勧めのハーブである。

 あとは広葉モノとして以下の2つを覚えれば紫蘇類は十分だろう。多分、馴染みがある香りだ。と言うのは、イタリアン料理で経験しているに違いないから。癖は、上記のハーブほど強烈ではないから、嫌いな人は少ないと思う。と言うより、好きになってしまった人の方が多いかも。

← (C) SweetRoom 

 一つ目は、【バジル[Basil]】
 この生葉は柔らかくて実に美味しい。トマト、オリーブオイルとの相性も抜群。ということで、オジサンの場合、伊語のバジリコと言う人の方が多そうだ。
 好きになると市販のバジリコ・ペースト[Pesto(4): Basilico Genovese]を常備品にしていたりする。
 言うまでもないが、葉は調理の最後に入れ、できる限り生の状態を保つことが鉄則。これを破ると、美味しさは半減する。
 マンションのベランダで育てていたことがあるが、美しい緑色のバッタ君がどこからともなく訪問してきて、食べられてしまった。膨れきった腹で茎につかまって休んでいたのにはまいった。都会で、どうやって探しだしたのか驚いたが、ともかく、以後栽培は止めた。

← (C) SweetRoom 

 もう一つは、【オレガノ[Oregano/Wild Marjoram]】。“Wild”なマジョラムという命名でわかるように、荒地で育っていたもの。だからこそ、香気を放っていたと思われる。
 これは乾燥品のホールを買っておくだけのこと。用途はピザ。バジルとトマトもよいが、オレガノもなかなかの香り。多すぎるときついので注意が必要だが、イタリアン臭さがでてくるのでお勧め。

 尚、マジョラムとして売っているのは、【スイートマジョラム[Sweet Marjoram/Bergamot]】。これはイタリアンではよく使われていると思うが、日本では余り取上げないようだ。この状況だと、手に入りにくいかも知れないので、これは割愛。
 余計な話だが、このハーブが紅茶に使われると書いてあるトンデモ本まである。アールグレーの香りは柑橘類のベルガモットである。

 --- 参照 ---
(1) 「ミント類」 MySelf【マイセルフ】〜ハーブと身近な植物〜
   http://www.geocities.jp/aaaself/syu--mi/ha-bu/minnto_rui.html#tag23
   http://www.geocities.jp/aaaself/syu--mi/ha-bu/mentha.html#tag21
   「お家で育てるハーブ INDEX」 同上  http://www.geocities.jp/aaaself/syu--mi/minnto.html
(2) 「Mint knowledge 種類と栽培」 (株)北見ハッカ通商
  http://www.hakka.be/mint/shurui.html
(3) 「世界の喫茶文化 モロッコ」 世界緑茶協会 http://www.o-cha.net/japan/world/culture/culture03.htm
(4) “Il Pesto” http://www.pestochampionship.it/pesto-home.asp


「料理講座」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2009 RandDManagement.com