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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2009.5.27 |
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素人が教授するハーブ入門[2:アニス風味酒]…ゲルニカを描いたピカソも好んだらしいカタルーニャのハーブ酒がある。 その名前は猿のアニス酒。[“Anis del Mono”] なんと、猿顔のダーウィンがトレードマーク。 もちろん、このボトルとグラス、カードが乗ったテーブルの絵も描いている。(1) 前回は、紫蘇系ハーブを解説したが、これを試した人は、ハーブは結構イケルと感じたのではないか。 それなら、次は芹系と予想したのでは。パセリ、セロリといった類の延長だから、紫蘇系より楽に学ぶことができそうと考えるのは自然なこと。 → 「素人が教授するハーブ入門[1:紫蘇系]」 [2009.5.20] しかし、これは止めた方がよい。ハーブは思ったより難しいから、甘く見ない方がよい。 ここは是非とも、違和感ある香りを学んでおくべき。 と言うのは、紫蘇系の説明では細かいことを述べなかったが、試したのはもっぱら「葉と茎」だから。香りが濃縮される「種」を使ったりすれば、すぐに別世界。折角挑戦するなら、そこまで試して欲しいが、急に、強い臭いを嗅げば、即座に立ち往生間違いなしだ。この加減が難しいのである。 そもそも、和食に馴染んでいると、微妙な香りを愉しむ習慣がつくから、強烈な「芳香」には耐えられないから、慎重に運ぼう。 要するに、ソロソロと、違う香りに近寄ることが、馴染むコツなのだ。 そこで、今回は、ちょっと寄り道。 なにかと言えば、「アニス(Anise)」風味の理解。 この植物は、芹の仲間。芹系は、ほとんどの場合、かすかな苦味を感じる。それが、「良薬口に苦し」的な感覚を与えるのか、病みつきになる素。アニスの葉茎も似たところがあるそうで、セロリ風と考えたら当たらずしも遠からずだそうである。 だが、ここでは「葉茎」ではなく、芳香が凝縮された「種」を取上げる。 この種は「アニスシード[Anise Seed]」として売られており、簡単に入手できる。興味ある方は購入したらよいが、他の香辛料に混ぜて使うことが多く、アニス風味が出る応用はクッキーのようなものがほとんど。 これは初心者向けではない。 そこで、今回はアニス風味のお酒を賞味したらどうかという提案。 予めおことわりしておくが、多くの人は、このお酒は、多分、苦手。グラスを口につけたとたん、「あ〜、甘。薬酒か」と敬遠してしまうかも。しかし、それを覚悟で、挑戦してみたらどうか。古い地中海文化の香りに触れるつもりで。 香りは全く違うが、「養命酒」(2)とか、「蘭麝酒」(3)なら、たいていの人は飲めるのだから、海外のハーブ酒だといって躊躇するほどのことはなかろう。 それに、暖めた紹興酒を、粗目入りの小さなグラスで飲める位だから、本当は、アニス風味の酒がそれほど難しい筈はないのである。理屈では。 それに、中華でもアニス風味はアリだし。もっとも、これが嫌いな人もいるのだが。 (中華のアニス風味とは、アニスシードではなく「スターアニス/八角[Star-Anise]」。こちらは、芹の仲間ではなく木本の果実を干したもの。八角をじっくり嗅げば抹香臭さまで感じたりするから、強烈な香料である。沢山入れると耐え難い。少量で十分だから、そんな大きな市場があるとも思えない。にもかかわらず、最近、価格が高騰とか。インフルエンザ薬“タミフル”の原料だからとの説が流れているが、八角を使わず製造できる筈。(4)八角料理は予防になるという官僚の冗談が消費に繋がったと言う風説もあるが、商売人大国だから、話半分に聞いておいた方がよいのでは。) 講釈が長くなったが、それではアニス風味(アニスか八角入りを強調したもの)のリカーを紹介しよう。どれでも、お好きなものを購入して水割りでお試しになるとよい。(アルコール濃度が高いので、ワインレベルに薄めるのが無難。暑い日に、冷たいものが欲しくなった時に試すことをお勧めする。) とは言うものの、見かけないものが多いのだが。 (尚、どうしても口に合わない場合は、安くないのでもったいないが、洋風鍋料理に使うしかない。)
ご存知だと思うが、Peter Mayleがプロバンスを宣伝したため、お洒落なお酒と化したからである。まあ、一時の軽薄な流行ではないか。 本で主張しているのは、“Pastis de Campagne”[地酒]を愉しむ喜びであって、ブランド品のパスティスを飲む喜びとは違うと思う。こればかりは、現地に行かないと味わうのは無理だろう。 それに、お洒落な飲酒と言えるか、はなはだ疑問。苦草の味わいのカンパリ[Campari]ソーダとか、アルコール濃度が強いドライマティーニのように、アペリティフとして1〜2杯飲むというのは、建前にすぎないのではないか。 おそらく、何杯も飲むものである。 (マティーニ[Martini]はドライ・ジンとドライ・ベルモット3:1のカクテル。これよりジンが多いのがドライマティーニ。良質のジンを使うと実に美味しいものだ。尚、ベルモットは“ニガヨモギ”風味の白ワインである。) もともと、パスティスとは禁断の酒「アブサン」の偽者だ。ご存知、アブサンは世紀末の頽廃的ムードのなかで流行った“幻緑色”の強い酒であり、この代替品ということで生まれたのだから、胡散臭い素性と言わざるを得まい。はっきり言えば、そこが一番の魅力なのである。 (アブサンは“ニガヨモギ”とアニスシードを使うが、前者の成分が問題児。販売許可製品は濃度がかなり低いもの。(5)おそらく、それでは不満な人も少なくないだろうから、密造酒もありそうだ。法規制で酒飲みはコントロールできまい。) 要するに、アニス風味と苦味さえあれば、アルコールはどんどん入るという飲酒文化は地中海から欧州全域に広がったということ。知る人ぞ知る、北欧のアクアヴィットも、ジャガイモから作った蒸留酒をベースに、アニス風味をつけ、芹系ハーブを入れて苦味を出しただけのもののようだ。滋養強壮の酒というより、酒飲み用に映る。 そんな状況を眺めていると、芸術家がアブサンに溺れたとされているが、もともとの文化的素地が発露しただけと見た方が妥当な感じがする。アブサンはどこでも飲まれているようで、ドンドン呑もうぜという習慣があったということではないか。酒そのものが甘いにもかかわらず、さらに角砂糖を加え、水割りで飲むことが多いようだが、その甘さで、強いアルコールが気にならなくなるということと睨んでいるのだが。 ダーウィン風刺ラベルで有名な“Anis del Mono”も酒そのものが特甘らしい。まあ、伝統産品であり、味を現代に合わせるようなものでもないだろうが。 → “Fabrica de anis del mono”[カタルーニャ-バルセロナ-バダロナ市の案内] (“甘”といえば、表のお酒には甘草が入っているものが多いようだ。パスティスも正式モノは甘草が入るとか。表には記載していないが、バニラ風味を強調した、ガリアーノ[Galliano]/ストレガ[Strega](伊)というリカーもあり甘さは重要ということだろう。) ダラダラ書いてきたが、ここで、個人的にはどれがお勧めなのときかれても、申し訳けないが答えようがない。なにを隠そう、パスティスとガリアーノ以外は飲んだことがないからだ。それに、カンパリソーダやドライマティニは嬉しいが、アニス酒は、残念ながら苦手のままなのだ。本格的な酒飲みでは無いということかも。 と言うことで、今回はこれまで。 【参考: アニス風味を感じない有名なハーブ系リカー[純ミント系は除外]】 ・シャルトリューズ [Chartreuse] (仏): 修道院の“An Elixir of Long Life” http://www.chartreuse.fr/pa_history3_uk.htm ・ベネディクティン ドム[Benedictine DOM] (仏): 混沌 http://www.benedictine.fr/anglais/histoire_frame.html ・ウィスキーベース: ドランブイ[Dranmbuie]/グレイヴァ(Glayva)(スコットランド)、 アイリッシュ・ミスト[Irish Mist](アイルランド) ・苦草系: カンパリ/チナール[Cynar](伊)、スーズ[SUZE](仏)、ウンダーベルク[Underberg](独) (参考書) 渡辺一也監修: 「決定版 リキュール&カクテル大事典」 ナツメ社 2004年 --- 参照 --- (1) http://iberianature.com/spain_culture/tag/bottle-of-anis-del-mono-by-juan-gris/ (2) 養命酒 http://www.yomeishu.co.jp/about/product/ (3) 蘭麝酒 http://www.ranjyado.com/hpgen/HPB/entries/1.html#rekishi (4) Martin Enserink: “Oseltamivir Becomes Plentiful−But Still Not Cheap” Science [21 APRIL 2006] http://www.sciencemag.org/cgi/reprint/312/5772/382.pdf (5) “The Origins of Ancient and Modern Absinthe” Logan Distribution, Inc.[USA] http://absinth.com/links/history.html (Darwinの風刺画) [Wikipedia] http://es.wikipedia.org/wiki/Archivo:Darwin_ape.jpg 「料理講座」 の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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