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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2009.9.16 |
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自家製ふりかけ…どこの観光地のお土産品でも「ご当地ふりかけ」を見かける。 ふりかけ大好きな人間だらけということか。 「ゆかり(R)」が登録商標とは知らなかった。醤油を「むらさき」と呼ぶようなものと思っていた。梅干の色付け用赤紫蘇を“ふりかけ”にすることを思い立った事業家が考案した商品名なのだ。(1) 拙宅では、自家製梅干を作っている方から少量頂戴するが、それは「ゆかり(R)」ではない訳だ。 梅干を自製しないので、紫蘇が入りドライタイプの“ふりかけ”は作らないが、ウェットタイプの“ふりかけ”はよく作る。出汁作りで残った、鰹節、昆布、干し椎茸、等を利用するだけの話である。 → 「高野山の精進料理を考えてみた」“出汁とふりかけ” [2008.11.5] ピクニックやハイキングに行く時の“お握り”の実に最適だが、ご飯にかけてもなかなかの味。自製は美味しい。 ただ、残りもの活用というだけでは一寸寂しいから、干した雑魚や、松の実、あるいは枸杞子を加えたりする。よく考えれば、「錦松梅(R)」(2)もどきか。こちらも登録商標だろう。 どうでもよい話だが、こうしたウェットタイプは、“ふりかけ”なのか、“佃煮”なのか、よくわからないところがある。「縮緬山椒」、「胡桃小女子」、「牛肉時雨煮」、「田麩(でんぶ)」、は佃煮屋さんで売っているし。 ドライタイプでも、海苔は“ふりかけ”とは呼ばない。しかし、「もみ海苔」にすると別かも。 バラバラとご飯にかければ、どんなものでも、“ふりかけ”と呼ぶというだけのことかな。 それはともかく、“ふりかけ”の歴史、意外と新しいらしい。全国ふりかけ協会が、熊本県で売り出された、魚の骨を粉にした商品を元祖と認定したという。(3)尾道産の同様な商品もあり、こちらは軍隊用の持ち運び用として、ずいぶん使われたようだが、時間軸では少し後なのだ。(4)両者共に、“〜の友”というネーミング。優れたビジネスセンスだ。 小生の記憶には、“〜の友”は無く、「是はうまい」と、その後の「のりたま」(5)だ。佃煮の方が好きだったから、個人的には好印象は持っていないが、当時はどこの家庭でも定番品だった筈。“ふりかけ”食を経験していない人が珍しい、いわゆる、国民食だったのではないか。 まあ、元祖とは言うものの、商業的食品としてとの意味で、“ふりかけ”自体はとてつもなく古い料理だ。 と断言してしまうのは、西行憧れの歌人、能因法師のご愛用品だったからである。 ご存知のように、能因は、“都をば 霞とともに たちしかど 秋風ぞ吹く 白河の関”(6)[後拾遺518]の虚構で超有名。日焼けまでした酔狂さが人気の素だが、食についても数寄者だったらしい。 少食といわれていたが、“ふりかけ”ご飯をこっそり食べていたのである。なかなかの切れ者。 “・・・桜樹有り。その花を玩ばんが為と・・・童一人相従ふ 能因はおよそ小食と・・ 兼房朝臣の許に迎へられ罷るの間、菜のごときは勧めず 纔かに飯ばかり食ひて過ごす 兼房の君あやしみて、食物の時これを伺ひ見る処、 勧童丸を喚びよせて、かの懐より紙に包みたる物を取り出だして、 飯に加えてこれを食ふ 粉の如き物・・・何等の物ぞやと・・・不審なり。” [袋草紙](7) と言うことで、前置きが長くなったが、出汁をとった後のものを使うのではなく、能因法師の姿勢に習って、美味しさをトコトン追求した、自家製の乾燥型フリカケを作ってみようか。ベースはあくまでも鰹節の旨さである。 ■ 1 ■■■基本調味料■■■ 「醤油+味醂+酒」をだいたい同量混ぜる。 ・醤油の替わりに味噌でもよい。 味噌はモノによって甘さと塩辛さが全く違うので注意。 自分なりの味であることを確認したら、上質な削り節を入れて混ぜ合わせる。 ・しっとりと染み込むように、少しづつ加える。 ・限界まで、できる限り多く加える。 ・漬け込み時間は30分程度あれば十分。 ■ 2 ■■■菜炒め■■■ 新鮮な葉野菜を小口切りする。 ・洗って乾燥させた後に作業を始める。 水気が多い野菜は、叩いて、電子レンジ加熱で水分を蒸発させる。 茎が太い大根葉なら、茎のみ電子レンジ加熱が望ましい。 フライパンに少量の油をひいて、野菜を炒める。 ・油味を出さぬように。胡麻油の風味は避けること。 ・焦がすと失敗。中火から弱火がよいだろう。 ・調味料が野菜に染み込まないように十分炒ること。(逆の好みもある。) 野菜がしんなりしてきたら、上記の「基本調味料」を加える。 ・弱火で、じっくり水分を飛ばす。 ■ 3 ■■■混ぜ物■■■ 蛋白系材料を1種類だけ、適量加え、臭みが出ない程度に炒る。 ・十分乾燥した雑魚が定番(縮緬、粉砕干小魚)。 ・ほぐした焼魚でもよいが、塩味が合わなくなるかも。 白胡麻を最後に加え、軽く炒ることで香りを出す。 余計なものを加えない。 ・卵(魚卵も含め)と乾燥海藻(海苔、若布、昆布)は不要。 ・粒塩や香辛料類(七味系、紫蘇、茶葉)は入れない。 ・入れてもよいのは、ナッツ類だけ。 これで、方針はおわかりだろうか。 -朝食レシピの「生卵と海苔」代替品イメージは避けよう。 -炒飯の具を思い起こさせる、油味や肉味は感じさせないようにしよう。 -カレー味にすれば、ドライカレーの素になってしまう。 -しっとりした、ほぐし魚は、茶漬か簡便焼魚定食に近くなるのでよそう。 -「そぼろ」系は丼か散らし寿司が向く。 と言うことで、ついでに「そぼろ丼」にも挑戦したらどうだろう。これはこれで、立派な料理だと思うが。 ■ 1 ■■■白身魚そぼろ■■■ 白身魚の切り身に酒を振り昆布を載せて蒸し、皮や骨を除いて、軽く砕き、味醂と上質な砂糖を加えた蒸し汁に入れ、身をほぐしながら弱火で加熱し水を十分飛ばす。最後に、色が悪くならない程度に、醤油を加えてかき混ぜる。(鶏肉や鮭が多いが、自家製なら白身魚でいこう。) ■ 2 ■■■錦糸卵■■■ 軽い塩味だけにしよう。砂糖は焦げる。少量の水溶き片栗粉を入れると作り易いと言う人がいるが効果のほどはわからない。 ■ 3 ■■■緑もの■■■ 簡単なのは、そのまま使える大葉の千切り。これでは能がないのなら、インゲンかサヤエンドウを茹でて、斜め切りにしたののがよいだろう。茹でたオクラの薄い輪切りも面白いかも。 ■ 4 ■■■装い■■■ 丼に軽くご飯を盛り、刻み海苔を、ご飯の水分を吸わないように撒く。そぼろと錦糸卵を乗せ、緑もので飾る。 奈良漬でもつけたら如何かな。 --- 参照 --- (1) “「ゆかり(R)」命名のいわれ” 三島食品(株) http://www.mishima.co.jp/study/yukari/name.html (2) 「錦松梅」 http://www.kinshobai.co.jp/top.html (3) 「ふりかけの元祖 御飯の友」 (株)フタバ http://www.gohannotomo.co.jp/3_mametisiki/mametisiki.html (4) 「旅行の友」物語 田中食品(株) http://www.tanaka-foods.co.jp/ (5) 「沿革」 ごはんくらぶ 丸美屋食品工業(株) http://www.marumiya.co.jp/company/history.html (6) 「能因」 千人万首 http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/nouin.html (7) 「能因逸話 袋草紙」 平安王朝クラブ http://www2u.biglobe.ne.jp/~heian/kenkyu/waka-rokunintou/roku-people/noin.htm (参考書: 未読[本を読もうと思うほどは、“ふりかけ”には興味を持っていない。]) 熊谷真菜・日本ふりかけ懇話会: 「ふりかけ―日本の食と思想」 学陽書房 2001年 「ふりかけの本」編集チーム: 「ふりかけの本-日本の文化 ごはんがおいしい!」 コスミック出版 2008年 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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