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2009.10.21
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英国食文化を考えながらのFish Cake作り…


 英国料理の代表は、日曜昼食の「ロースト」ビーフとヨークシャー「プディング」。
 外食だとフィッシュ・アンド・チップスか。
 他の調理方法としては、「パイ」「ダンプリング」が知られる。
 だが、代表にふさわしいものは他にもありそう。

↑ イラストby (C) National flag & Road sign Mt. http://nflagrsign.xrea.jp/

イギリスの魚食はおしなべて手抜き調理である。
 サンドイッチを考えていて、気付いたことがある。
  → 「英国食文化を考えながらのSandwich作り」 (2009年10月14日)

 スモークサーモンやオイル漬けツナを使うことはあるとはいえ、魚はできる限り使いたくないのでは。海に囲まれた島国でも、魚食を工夫する気はなかったような気がしてくる。
 経済的な余裕がなかったせいもありそうだが、もしかすると、面倒くさがりなのでは。

 そう見るのは、フィッシュ・アンド・チップスというファーストフードに人気があるからではない。(もっとも、家庭で食べるものではなさそうだが。)
 使う魚といえば、大型の白身魚と鮭・鱒で、極めて限定的だ。和食的になりそうなのは、鱸位のもの。鰯・鯵・鯖系の青魚は、日持ちしないことがあるとはいえ、酢漬けか燻製しか使わない。
 今の日本の若者と似て、鰊のように小骨がある魚は苦手なのではないか。まあ、フォークとナイフでは、箸で小骨を避けながら食べる芸当は無理ということもあろうが。
 ともかく、様々な魚を楽しむ熱意に欠けるのは間違いなかろう。そのため、海外食への憧れをいだく人が出るのかも知れぬ。プロバンスを愛したPeter Mayleなど典型的英国人なのでは。
 マリネ系にしても、“Ceviche”と呼ばれており、どう見ても外来文化。

ただ手がかかる“フィッシュケーキ”もあり、これは日本で流行っている。
 しかし、そんな低調な魚食文化が日本で、もてはやされている。
 だいぶ前から、“Fish Cake”なる料理をそこここで見かける。小田原の蒲鉾屋さんが、お洒落な「デリ」感覚カフェビジネス(1)を始めて有名になったが、それだけではなさそうである。

 なにせ、冗談半分に、板ワサの山葵抜きをフィッシュケーキと称する呑み屋があるそうだし、超厚コロッケ形態の、野菜入り薩摩揚げを供する定食屋もあるというのだから。
 ここから類推するに、家庭では魚ハンバーグをフィッシュケーキと呼び変えているかも。

 “Cake”は、“gateau”や“torta”とは出自が違い、北欧系の古い言葉で、甘味を意味しない。例えば、餅はライスケーキ。(2)従って、魚のすり身を使った固い塊をフィッシュケーキと呼ぶのは間違いではない。蒲鉾の英訳は“Fish Cake”が正解ということ。

英国の“Fish Cake”の特徴はジャガイモ入りという点だ。
 しかし、イギリスの“フィッシュケーキはイギリス食文化を代表する食べ物”で、日本で食べている「洋食」フィッシュケーキとは全然違うものではないか。
 “他の国のフッシュケーキは、ただ単に魚をすりつぶして、味を付け、かりっとするまで油で揚げるというものですが、イギリスでは魚とジャガイモを混ぜて使います。伝統的には魚は他の料理の残り物を使いました。”(3)ということ。
 さつま揚げとか、魚肉ハンバーグとは、出自が違うのである。
 日本流に言えば、“副食[おかず]”の肉や魚と、“主食”の芋や穀類が合体したものと見るべきもの。

 ということで、そんな観点で、イギリス料理を設計してみようか。間違えてはこまるが、これは超簡素化した正餐であり、遅い昼食として摂るべきもの。当然ながら、夜が更けてからの夕食[supper]は軽いものにすべきである。

■■スターター■■小麦+チーズ■■Welsh Rarebit■■
 スターターは、ウエールズ地方のチーズトースト。
 名前が奇妙だ。Gruyereのフォンデュからヒントを得た料理だと思われる。
 まあ、それほと面倒なレシピでもはない。(4)

 卵は重そうだから、無しがよいだろう。要するに、牛乳を暖めて、小麦粉、バターを溶かす。これに、マスタード粉を溶かしたビール(エール)と、スプーン一杯のWorcestershire sauce(LEA & PERRINSが定番)を落とす。さらに、Cheddarの粉を混ぜて、薄切りトーストに厚く塗って焼けばよいのである。
 つけあわせとして、Picklesが欲しい。できれば、小玉葱。

■■メイン■■ジャガイモ+魚■■Fish Cake■■
 メインは“Fish Cake”。名前から見て、北欧に類似料理がある筈だが、これはブリテン島から海に突き出ている地域のDevonやCornwall辺りで独自色を培ったものではないか。[魚とジャガイモをオーブンで焼くだけではつまらぬし。]調べた訳ではないから、外れている可能性もあるが。
 レシピは前述引用(3)がピタリ。
 日本風ということで、鮭の代わりに鯖を使ってみるのも面白いかも。
 尚、間違えても、つなぎにパン粉を入れたりしないこと。それではハンバーグだ。フライパンで焼く時の打ち粉として小麦粉をつかうが、あくまでもジャガイモと魚の料理であることを忘れずに。

 つけあわせだが、フィッシュ・アンド・チップスなら、“Mushy Peas”(5)が定番らしいが、これはやめておこう。

 イギリスならなんといっても有名なのは、味付け無しの完全に熱を通しきった茹で野菜。だが、これには日本人は耐えられまい。
 そこで、蒸し野菜をお勧めしよう。できれば、圧力鍋がよいが別にこだわる必要はない。
 対象野菜はニンジン、タマネギ、ズッキーニ、アスパラガスといったところ。塩・胡椒をふって頂く。良質で新鮮な野菜なら美味しくない訳がない。

■■デザート■■燕麦+クリーム+ベリー■■Cream Crowdie■■
 まごうかたなきスコットランド地方のパフェ。(6)女学生のお好み甘味の類だが、たまにはオジサンもよいのでは。ただ、少量にしておこう。

 重要なのは、ウイスキーの香り、ライ麦の食感、ベリーの酸味。
  ・少量のオートミールをフライパンで炒る。
  ・これに、少量のバターを加えて、香ばしさをだし、皿にあけてよく冷ます。
  ・スコッチウイスキーと蜂蜜をクリームに加え、よく泡立てる。
  ・ブルーベリを入れた容器にクリームをのせ、ライ麦をふる。

■■ドリンク■■大麦■■Pale ale/Stout■■
 イギリスは地ビールの国だ。(7)ここは、英国のビールでいきたいところ。輸入瓶詰めで簡単に入手できるのは“Bass Pale Ale”(8)か。国産Pale Aleでも。(9)
 Irishだが、黒ビールで代用するのも手だ。「自宅で楽しむ本物の味わい」が可能な缶だし。(10)

 --- 参照 ---
(1) 「FISH CAKE&DELI」(株)鈴廣
   http://www.fish-cake.com/
(2) “Rice Cake” [ How Products are Made, Volume 4 (1996) by Gillian Holmes ]
   http://findarticles.com/p/articles/mi_gx5205/is_1996/ai_n19124785/
(3) John McEvoy: 「サーモンとディル魚のケーキ」
   http://www.eigotown.com/culture/johns_kitchen/2009/06/fish_cakes.html
(4) “Welsh rarebit” BBC
   http://www.bbc.co.uk/food/recipes/database/welshrarebit_8197.shtml
(5) “Mushy Peas” allrecipes.com
   http://allrecipes.com/Recipe/Mushy-Peas-I/Detail.aspx
(6) “Cream Crowdie” Tour Scotland
   http://www.visitdunkeld.com/cream-crowdie.htm
(7) [Eng/Ire/Sco/Wel] trash.net's Virtual Beer Server
   http://beer.trash.net/index.php
(8) http://www.bass.com/history/
(9) http://www.ginga-paleale.com/
(10) 「ドラフトギネス缶」
   http://www2.guinness.com/ja-JP/Pages/thebeer-draught-can.aspx
(国旗のイラスト) (C) National flag & Road sign Mt.
   http://nflagrsign.xrea.jp/


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