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2009.11 .11
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市販カレー“ルー”を使った「学び」…

 汗をかき 哲学気分で 伽哩食べ
  印度料理の魅力とは、食養の理屈ではないと思うが。 

↑ (C) Hitoshi Nomura NOM's FOODS iLLUSTRATED

「カレー」ルー製品は完成度が高く、そこからの“学び”は難しい。
 オジサンが料理に“挑戦”という話になると、必ず登場するのがカレーライス。
 無理もない。たいていは、キャンプ等で作った 経験があるし、滅多なことでは失敗がないから。奮発して、上質な牛肉でも使えば、好評間違いなしという点も嬉しい。
 それに、日本では、代表的な海軍料理だったから、男の料理イメージが強く、オジサンとしても気分がのる。もっとも、事業家が普及させた料理というのが実態のようだが。
  → 「カレー記念日に想う 」 (2004年6月2日)

 しかし、多人数料理を目指すのなら別だが、オジサンが料理を学ぶ上では余りお勧めではない。ルーが素晴らしいから美味しいのであって、オジサンの技量などたいして必要な訳ではないからだ。
 それは、合宿の料理担当になったことを想い起こせばわかる。
 スーパーでの原料調達に悩むことはない。先ずは、野菜売り場で玉葱・馬鈴薯・人参を籠に入れ、次に精肉売り場で廉価な豚肉(カレー/シチュー用か小間)を選ぶ。後は、「カレー」の棚で好きなブランドのルーを取れば終わり。
(豚肉にしたが、沖縄や西日本は、豚でなく牛が定番らしい。)
 作るのも簡単だ。「カレー」の箱に書いてある通りに調理するだけ。よく読まなくても、ルーの分量を間違わない限り、それなりのものができあがる。不味いものができあがった話は耳にしたことがない。しかも、大量に作るほど旨い。
 尚、無難なのは、“林檎と蜂蜜”が入ったルーのようだ。多人数の食事の喜びもあり、子供から大人まで、皆、食が進む。
 しかし、これはこれで楽しい食事が実現できるが、いくら作っても、料理の腕が上がる訳ではなかろう。

ルー製品でインド感覚を味わうのはどうか。
 拙宅では、10種類以上の香辛料を調合した自家製熟成品カレーが食卓に登場したりする。当然ながら、小生にはそんな料理はできかねる。
 初心者が香辛料を使いこなすのは難しいから、このレベルを目指して始めるとなれば相当な覚悟が必要だと思われる。・・・どうも、そこまで踏み切る気にはならないのだ。
 そうなると、市販のルーを使うことになるが、問題はそこから何を学ぶかだ。

 昔、ご近所の、在日インド人経営の“家庭”料理屋で話を聞いてわかったのだが、(お店の片隅で子供がインドの教科書を読んでいるような環境。もちろんナンでなくチャパティ。料理は手抜き無し。)日本人が考えるカレーとは、インド風の香辛料で味付けした煮込みでしかないということ。カレーに、特別なレシピがある訳ではないのである。
 それなら、市販のお好みのルーを使って、作り方を原始的にして、煮込みの味を堪能してみたらどうだろうか。
 できれば、バターライス、サフランライス、あるいはチャパティが欲しいところだが、市販のルーを使っていながら、こちらだけ凝るのもアンバランスだから、バケットの薄切りで済ましてもよかろう。ただ、インドの手食文化を楽しむために、スプーンを使わず、パンにカレーをつけて食べるたら面白かろう。
 従って、ピクルスはガーキン。これなら、手食の抵抗感も薄かろう。

原始的な煮込みにして香りを楽しもう。
 これでは、なにを学ぼうとしているのか皆目わからないか。
 眼目としては、できる限り、調理を“原始的”にして、インドの“香り”を楽しもうということ。

 と言っても、市販のルーを使っているのに、どこが“原始的”だとなろう。
 ここで、“原始的”というのは、できる限り包丁を使わないという意味である。些細な話に聞こえるが、煮込んだ結果はかなり違う。その味と食感の違いを楽しもうという趣意。
 特段、難しいことはない。生の玉葱・馬鈴薯・人参を物理的に強引に潰して使うだけのこと。
 ただ、超丈夫なマッシャーか、大振りの肉叩が無いと、潰すのには難儀する。安全のためにも、道具を購入した方がよい。といっても、たいしたものではなく、キャンプ用の小さな俎板。(薄い華奢なものは折れて危ない。それなら“すりこぎ”の方がよい。)本当は、単なる板切れが一番だが、都会では、かえって、そんなものの方が入手しにくいし、材木から切ってもらうとえらく高価。
 ご想像がつくと思うが、通常使用する俎板に野菜を載せ、その上にこの俎板を被せて、力まかせに野菜を潰すのである。野菜が硬い場合は、潰せる大きさに包丁で切る必要があるが、できる限り切らないようにしたい。
 水分が多いと、潰した時にエキスが流れでかねないので、家に残っているような野菜を使った方がよい。

 さて、使う肉だが、インドは牛、イスラムは豚が、それぞれ禁忌だから鶏肉にしよう。できれば、これも潰したい。従って、骨と皮が無い肉を使うことになる。野菜同様、水分が多いとエキスが出てしまう。つまりブロイラーは向かないのだが、そうもいかない。廃鶏など売っている訳もないし、廉価鶏肉はそれしかない。しかたないから、ラップに包まず冷蔵庫で放置して少し乾燥させるとよい。たいした効果は期待できないが。
 こちらは、潰すというより、俎板の角で徹底的に叩こう。肉叩きを使ってもよいが、俎板の方が力が入る。

 これ以上の説明は不要だろう。ルーのレシピに従い、潰した材料を調理すれば完成である。

 ただ、忘れてならないのが、ガラムマサラ(Garam Masala)。常備していないなら購入すること。安物や古い製品しか入手できないなら、試行は中止すべきだ。これが決め手なのである。
 調理の最終局面(火を止める寸前)でほんの少量を加えて混ぜるだけだが、それだけで、Hot感が生まれ、香りもたちのぼる。これこそ、この料理の決め手。
 従って、この効果を薄めかねない余分な調理は厳禁。(例えば、ニンニクやトウガラシ類を勝手に加えるようなやり方を指す。)チャツネ類もなくてもかまわぬ。

 野菜の「煮込み」の美味しさを実感できたら、でもお試しになったらどうかな。
 初心者にとって、豆を選び、じっくり煮るのはそう簡単ではないから、水煮缶詰を使うのがよい。使う場合は水を捨て、野菜同様に豆を潰そう。但し、半量に留め、残りは豆の形態のままで使う。日本人は潰した豆食に慣れていないからである。
 これは口に合いそうだとなったら、ホウレンソウの水煮缶詰に進むとよい。

 食後にマサラティーといきたいところだが、こちらも各家庭が勝手に香辛料を入れるだけのこと。好きなスパイス配合が命。初心者は、こんなものをとても真似できない。
 従って、シナモンステイックを添えたミルクティーを味わうことをお勧めして、今回はお開きとしよう。

 --- 参照 ---
(カレーライスのイラスト) (C) Hitoshi Nomura NOM's FOODS iLLUSTRATED http://homepage1.nifty.com/NOM/


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