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2003.12.3
 
 


日銀の輪転機頼み…

 日本銀行にツケを回す仕組みができつつある。
  → 日銀へのツケ回し

 国債が回ってきたのは、大蔵省が一手に国債を管理してきたからだが、日銀の状況を見ると機能不全の兆しが見える。
年度   償還   借入   借換
1996  3兆4727億円 15兆4052億円 26兆5524億円
1997  4兆0561億円 21兆0631億円 31兆4320億円
1998  5兆7829億円 29兆4287億円 42兆4310億円
1999  8兆5952億円 27兆7219億円 40兆0844億円
2000  8兆4975億円 37兆1727億円 53兆2697億円
2001  5兆9152億円 45兆3184億円 59兆3296億円
2002  9兆7936億円 51兆0030億円 69兆6156億円
2003 19兆4410億円 49兆7807億円 74兆9690億円

 国債は名目上償還年限があるが、実際の償還は60年とされている。10年国債の償還時期が来ても、6分の1しか返済しないのである。残りの6分の5は借換債を発行することになる。
 償還時に借換債でなく、現金化したい保有者が増えることを想定していない計画だ。国債保有者は、大蔵省の指示通りに動くことを前提にしている訳だ。

 このような体制を維持できるならよいが、日銀の状況でわかる通り、これからは綱渡りになると思われる。
 2003年度は借換債は75兆円近い。膨大な額である。
  (http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/siryou/syoukan01.pdf)
 2005年には、100兆円レベルになる。
 30兆円程度の新規国債を引きうけ、100兆円もキャッシュ化しなくて済むものだろうか。

 2003年3月末の安定保有者は、政府41.9%、日銀15.1%、預金金融機関18.7%であるが、日銀を除けば引き受け能力があるとは思えないのだ。
  (http://www.mof.go.jp/singikai/saimukanri/tosin/ksk151125_s07.pdf)
 どこを見ても、大変な状況だからだ。
 郵貯は預金量が減るし、簡保も保険料収入ダウンが進むだろう。その上、運用益はあがっていないから、現金支払いに対応するための国債の現金化が発生するのは間違いあるまい。国債引き受け増どころではない。
 民間銀行にしても、預金量が増えるとは考えにくいし、ペイオフ解禁で預金大幅減少の可能性さえある。生保も契約残高は減る一方だし、国債引き受け増などありそうにない。
 年金だけは多少余裕があると言えないこともないが、年金支給増に保険料収入の方が伴っていない状態だ。しかも、運用が上手くいっていない。国債引き受けはピークアウトしたと見てよいだろう。

 それなら個人保有を進めればよい、と語る人もいる。ところが、実態を見れば、その流れは見えない。おそらく、預金金融機関への預金が個人国債に変わるだけだ。このような施策では、何の意味もない。何時キャッシュ化に動くかわからぬ保有者を増やすだけである。かえって危機を深めることになりかねまい。
 要するに、家計部門の貯蓄増で国債を消化する路線が成り立たないのだ。

 残るのは、日銀に国債を保有させ、輪転機を回させる道だ。
 その金で債務返済に回すことになる。何の経済効果も生まない政策である。その結果、民間に回る金が無くなる。
 政府/日銀は、ついに、奈落の底に引き込む路線に踏み込むようだ。


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