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2004.2.21
 
 


わからぬ映像産業育成運動…

 日本は、文化・興行分野が弱体であることは、昔から知れ渡っているが、そのインパクトを軽視してきたのが実情だろう。
 収支尻は当然ながら入超だ。(8年間の月平均の受取22億円、支払117億円)(1)

 しかし、これは収支問題として取り上げられず、もっぱら、海外文化の流入問題として語られてきた。
 典型は、フランス政府の米国流大衆文化に対する姿勢の解説だ。フランスと比較し、日本は自国文化に大事にしていない、と主張するパターンが多かった。
 しかし、そのフランスでさえ、映画・音楽分野での入超状態を変える力はない。
 フランスの真似をしたところで、効果はほとんど無いと見るべきだろう。

 しかし、これを文化問題だけで捉えていると、これからの変化を活かすチャンスと失うことになりかねない。

 産業統計とは、必ず過去の産業区分をベースにして作られる。変化はすぐにはわからない。特に、文化・興行産業は、他産業との融合や、今までになかった新タイプの産業創出に繋がるから、要注意なのである。

 もっとも、その重要性は、理解されているようで、特に映像分野での梃入れ策が、少しづつではあるが、進んでいるようだ。

 典型は、フィルムコミッション活動の開始である。2000年2月に、日本初の映画・テレビドラマ・コマーシャルフィルムなど映像制作に際してのサービスを提供する組織が、大阪で活動し始めた。(2)
 大阪商工会議所も、「映画ロケ誘致活動の推進をはじめ、映像産業の育成・・・に資する具体的事業を展開する。」との方針を掲げている。映画・映像産業の新産業創造特区を作り、中小企業振興を図ろうという構想だ。(3)
 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを中心に、映像産業の大阪集結の可能性を感じさせる動きである。このニュースだけ聞いていれば、期待が高まる。

 しかし、実態を見れば、期待はすぐに萎む。
 実は、全国で、60以上の組織が動いているのである。(4)
 全国で一斉に動き始めた訳だ。

 関西だけでも、大阪、神戸、滋賀、姫路、舞鶴と5組織もある。
 これとは別に京都には、時代劇のテーマパーク化した東映太秦撮影所を始め、撮影場所が揃っている。日本の映画史の原点でもある。(5)
 これらの間に有機的な連携はないようだから、各地のロケーション活動の位置付けは、外部のものには、よくわからない。当然ながら、大阪を映像産業の拠点とすべき理由も思いつかない。
 もちろん、各地のフィルムコミッションが互いに切磋琢磨して、日本でのロケ活動が盛んになるという見方もできないことはない。しかし、何時までも拠点ができないとも言えそうだ。
 拠点がなければ、知恵を生み出す交流は難しいと思うのだが。

 そもそも、文化・興行分野の強化と、使い易いロケ地提供がどう繋がるのかよくわからない。
 魅力的なコンテンツを生み出せる拠点とはこうあるべき、との思想が必要だと思う。これなくして、効果が上がるとは思えない。
 → (2004.2.22)
 --- 参照 ---
(1) http://www2.boj.or.jp/dlong/bs/data/bp004sr2.txt
(2) 大阪ロケーション・サービス協議会 http://www.osaka-fc.jp/council/index.html
(3) http://www.film-com.jp/fc.html
(4) http://www.osaka.cci.or.jp/j/page_02-1.html
(5) http://www.arc.ritsumei.ac.jp/cinema/aruke/index.html


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