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2004.6.7 |
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原油高が醸し出す不安…2004年5月25日、Fitchratings が「Higher Oil Prices: Import Costs and Export Revenues」を発表した。(1)これによれば、G7諸国の原油名目輸入額は大きいものの、GDPに占める割合は1.3%と低水準である。価格についても、インフレ調整後で見れば1980年代初めに比べ大幅に低い。データから見れば、原油高のインパクトは限定的と言えそうだ。 5月13日のReuters による欧米のストラテジストの調査結果も、この見方を支持しているように見える。原油価格がバレル40ドルが続いても、若干のGDP成長率の減少(回答は0.1〜1.3%で、平均は0.3%)ですむ、との予想だからだ。(2) 原油価格が高騰しても、以前の石油ショックのような事態にはならない、というのが大方の見方のようだ。 もともと、中東・ベネズエラ・ナイジェリアでの政治的緊張がなければ、中国の需要拡大を考慮しても、原油価格は上がる筈はない、と言われていたのだから、再度の確認とも言える。 大規模テロさえなければ、長期的に見て価格は下がるとの読みが主流なのである。 つまり、専門家は、米国大統領がガソリン価格高騰に対して、備蓄原油放出でもすれば、争って売りが始まり価格は急落すると考えているのだろう。 しかし、今までも需給関係に問題なし、と言われながら、価格は上昇し続けてきた。 専門家の見方のどこかに盲点があるのではなかろうか。 → 「原油50ドル時代到来か」 (2004年2月9日) 一番の問題は、供給体制だろう。サウジアラビアを除くと、すぐに増産できる状態とは言い難いのではなかろうか。従って、どこかで問題が発生すれば、需給がタイトになる可能性は高い。しかも、ジャスト・イン・タイム方式になったから急激な変化が発生し易い。 不安定さが増しているから投機が発生している、と見るのが自然だと思う。 最近のテロ勢力の動きを見ても、戦略的に動いているから、おそらく一番の弱点を狙ってくると思われる。しかも、米国はテロを煽りかねない施策を展開しているから、何時問題が発生してもおかしくない。 とはいえ、GDPに占める割合から見て、テロで世界経済が壊滅的な影響を受けるとは思えないから、大騒ぎする必要はない、とされているだけの話しだ。マクロでは理屈は通っている。 実際、40ドルを越える価格になっても、世界経済の成長基調が続いているから、この見方は正しいように見える。 しかし、経済が計算通りに進むとは限らない。 もともと、人々は必ずしも合理的に動かないから、バブルが発生する訳で、当然ながら、逆バブルが発生してもおかしくない。 又、風が吹けば桶屋が儲かる型の隠れた連鎖で、状況が変わることも多い。 従って、重要なのは、理論的な「安心」を解説することではない。発生しそうな「大事」はどのようなものか予想し、その対応を考えておくことだ。 しかも予想は簡単である。例えば、素人がちょっと考えるだけで、次ぎのような「悲観型」シナリオを描くことができる。 先ず、原油価格上昇で、ドル価値が下がり始める。東アジアの国々が今まで行ってきたような、ドル安阻止策も考えにくいから、急落するかもしれない。 同時に、日本の主要輸出市場も急変する。ガソリン価格高騰で、米国の自動車市場が縮小するからだ。燃費の良い日本車のさらなるシェア向上が進むと思われるが、円高だけでなく、日本からの輸出増が難しい政治状況に陥るため、日本の経済成長の牽引車である自動車産業全体が低迷する。 一方、東南アジア諸国も、原油価格の影響が大きいため経済が低迷する。しかも中国はバブル抑制策を展開中だ。 日本、中国、東南アジア間の貿易量が減り始め、一気に経済減速感が高まる。・・・ 心配になるのは、こうしたシナリオはあり得ない、とは言いきれないからだ。この方向に動く兆しが見えたら、それを阻止する国際的な仕組みがあるならよいが、今のところ既存組織は機能しそうにない。 --- 参照 --- (1) http://www.fitchratings.co.jp/contents/Press_Sovereigns/38_035.shtml (2) http://about.reuters.com/pressoffice/pressreleases/index.asp?pressid=1542 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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