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2007.3.29 |
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投資家の質について…「創薬ベンチャーに投資して大損。経営者は儲かると言っておいて、実に不愉快。」との話を聞かされた。こんな話、聞かされる方も不愉快極まる。 薬の開発など予定通り行くことなど稀。 例えば、1980年代、動物実験で癌を縮小する成分が見つかった。誰もが、これこそ制癌剤の本命と思ったろう。しかし、結局、ヒトでは効果無し。 例え、ヒトで素晴らしい効果が出ても、予想もつかない副作用で頓挫したかも知れない。創薬とは、そんなもの。 医療機器のように、先がかなり読めるものとは大きく違うのだ。 当たる確率が低いのだから、外れて当たり前。大損して不愉快なら、始めから投資すべきでない。 メディアに登場する「株主被害」の話も、この姿勢とよく似た感じがする。 “多くが必死の救済を訴えるものであり,中には虚偽情報に踊らされて多額の損失を蒙った方,とりわけ高齢者や年金生活者等も存在”しているというのだ。(1) 投資対象は、成熟市場でポジションを確立している歴史ある企業ではなく、飛躍を目指し、新市場に賭けるベンチャーである。 潰れる危険性さえある投資対象である。 そんな企業に投資しておいて、「必死の救済」を願うという主張にはとてもついていけない。 いい加減な判断で、ハイリスクな投資を行なえば、被害を受けることもあるというだけのこと。 2004年頃、書いたことを思い出した。・・・ “あるベンチャーの社長のブログを2週間分ほど眺めてみた。確かに一見の価値はある。 毎日のように、食事処の名前や行きつけの飲み屋の場所が記載されている。他社の社長と会ったとか、役員会出席といった、仕事関係のスケジュール話。あとは、休みに、疲れをとりにマッサージに行ったとか、家で流行の映画を見た、自転車をこいだ、買い物に行った、等々の簡単な報告。” → 「言志四録で感じたこと」 (2004年5月11日) 想像できると思うが、この社長とは、当時の堀江貴文社長。小生には、こんな話しかしない経営者のベンチャーに投資する人の気が知れぬ。 ライブドアのもともとの事業は結構堅くて小規模なもの。 しかし、もてはやされたのは、堅いからではない。インターネット事業を寄せ集めただけのこと。これだけで、大化しそうだとの期待感が満ち溢れたのである。 ・livedoor デパート-----楽天 ・livedoor プライス------価格.com ・livedoor オークション---Yahoo!オークション ・livedoor オート------オートバイテル ・livedoor 証券------カブドットコム ・livedoor PICS------flickr ・livedoor frepa------mixi どれも競争は厳しい。一般の人達の茫漠たる期待感を集めただけで事業が大成功するとは思えまい。とてつもないハイリスクな話だ。 なかには、弥生(会計ソフト)のような業界リーダー的な事業もあるとはいえ、livedoor が買収することで、それ以上の価値が生まれる理由はよくわからぬ。 マイクロソフトの対抗商品事業にしても、もともと、Eudora(メール)日本語版販売事業を保有していたとはいえ、Operaの独占販売権(ブラウザ)を入手し、ターボリナックス社を買収(OS)して、標準に対抗すると言う掛け声は、面白いとはいえ、全体構想は感じられない。 そもそも、社名からして、傾いてしまったが、名をはせた、無料インターネットプロバイダーのもの。 異端的起業家への期待感はわからぬでもないが、曖昧模糊とした話しかしないリーダーを、インターネット産業の希望の星と見なす発想にはとてもついていけない。 公正な市場を要求するなら、投資家の姿勢も問うべきではないかと思う。バブルは避けられないし、悪いものでもないが、理由無き熱狂が度を越せば、資本主義社会がダメージを受けてしまう。 こんな風に考えるのは、ここのところ、堀江被告への実刑判決が話題になっているからではない。 平成電電の「被害者」を守れという話がマスコミにしばしば登場しているからだ。 こちらの投資家も不思議な人達である。 そもそも、インターネット化が進んでいて、携帯電話の人気が急上昇している時に、固定電話で大いに儲かるという話にとびついたのだ。 もっとも、そんなビジネスこそ、一時的に儲かることが多いから、悪くない話かも知れぬ。 しかし、そんな上手い儲け話を、新聞で大々的に宣伝をするのだから恐れ入る。しかも、匿名の投資組合。この特徴とは、運用実態を公開しないこと。 そんなに儲かるなら、公開してもよさそうなものだ。 「予定現金分配率10%相当」というふれこみも、驚き。・・・低金利時代に、高い数値をあげたから驚いているのではない。元本も返すイメージを振りまいているからだ。 集めたお金を設備投資に回せば、資金は寝る。元本を返すなら、実質利回りは驚異的な数字ということ。そんな事業が可能なら、宣伝などしなくても、プロが喜んで投資するに違いない。 そうそう、忘れてはならない。 大新聞に何回も広告を打つ費用や、お金集めの事務処理費用も馬鹿にならない。さらに、商品券のおまけまで。 素人が手を出すべき投資案件ではないことは、見ただけでわかる代物。 こんな状況を外から見ていて、心配になるのは、もっともなことだと思う。 “Since Japan's banking crisis, main bank cross-shareholdings have been run down and the lifetime employment system has eroded. Now that the country is no longer in catch-up mode and the economy has matured, the state's guiding role has become less effective.”(2) その通り、guiding roleを担う当事者が見えなくなってしまったのである。 イノベーション創出をエンジンにして、起業家が次々と現れてこなければ、日本経済に先が無いのはわかっているのに、“There is a corporate governance vacuum.”では、どうにもならなくなる。 投資家の質が決定的に重要になっていると思う。 --- 参照 --- (1) http://www.livedoor-higaibengodan.jp/aisatsu.htm (2) John Plender: “An accountability gap is holding back Japan's economy” Financial Times [2007.3.14] 有料 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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