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2007.12.6
 
 


ついに日本衰退の幕開け…

 2007年11月、 「75歳以上人口が初めて総人口の10.0%に!」(1)とのニュースが流れた。

〜 人口推移(万人)(1)
15〜64歳 65歳以上 (75〜) 就業者(3)
1995年 8,726 1,828  718 6,414
2000年 8,638 2,204  901 6,298
2005年 8,442 2,576 1,164 6,151
2007年 8,298 2,753 1,276
 総人口に対する割合は1割だから、“まだなんとかなる”と考える人もいるかも知れないが、“絶対数”を見れば愕然となる筈。女性が797万人、男性は479万人、の合計1,276万人に達したのである。1990年は、599万人だったから、ただならない膨張。
 言うまでもなく、この数字が、年金・健保・福祉の負担増に直接影響するのだ。

 しかも、この先、団塊の世代が65歳以上に入ってくる。
 遠からず、老人人口は3,900万人レベルに達するということ。この数字、警告のために大きく見積もった数字ではない。
 日本人の寿命(2)
は図に示すように着実に伸び続けている。この先も、さらに伸びると考えてよいだろう。
  → 「深刻化する死亡率低下問題 」 (2005年3月8日)
 その上、再生医療の実用化が夢物語ではなく現実的視野に入ってきた。
 従って、老人人口は3,900万人レベルは堅い予測と考えてよいだろう。

 いよいよ本格的な社会保障費急増の時代が始まったということである。
 退職金を廃止し、全てを年金に振り替えるとか、支払い能力ある人は医療費を負担してもらっても、社会保障制度は成り立たなくなる可能性が高い。
 頭のなかだけで収支バランスを考えた見積もりをもとに、増税でなんとかしのごうというという作文が多いが、そんなレベルで対応できる問題ではない。
 15〜64歳人口が確実に減り続け、そのなかの非労働人口も増えるから、今のままなら、2020年代に労働人口は5,000万人レベルまで落ちておかしくないからだ。この5,000万人が高齢者人口3,900万人を支える図が成り立つとは思えまい。
 現在の仕組みのままでは、社会はもたないということ。

 高齢化問題とは、社会保障費の財源問題ではないのである。
 国の体裁さえ崩れかねない、深刻な問題であり、この解決のための突破口を切りひらくことは、国家としての最優先課題と言っても過言ではない。
 労働人口を増やすか、労働生産性の飛躍的向上ができなければ、お手上げということ。

 しかも厄介なのは、労働人口増の施策など、どれも絵に描いた餅でしかないこと。

 例えば、少子化対策(4)は、大成功したところで、気休め程度。
 頑張って、出生率の平均値1.32を1.75に上げたところで、今が結婚世代人口がピークだから、この世代人口急減に合わせ、子供の絶対数は激減する。
 それでも、出生率向上に注力する気持ちはよくわかる。なにせ、東京都の出生率など1.02。種の絶滅を意味する数字だからだ。

 と言って、移民増はかなり難しい。受け入れ体制はテロ対策という名目で整えつつあるようだが、今から本格的に始めても、とても、2020年に間に合わない。
 それに、グローバルに見れば、これから移民の供給余力は急速に落ちる。今のままなら、日本経済は低迷を余儀なくされるから、移住先としての魅力も乏しいのだ。移民政策を打ち出したところで、シナリオ通りに進むことは考えにくいのが現実。

 そうなると、なにをすべきかは自明。

 しかし、残念ながら、生産性が低い産業をそのまま温存したい人が多数派。
 生産性が高い産業など、ほんの一部。現在の“安穏”な生活は、その稼ぎで実現されていることを知らない訳ではあるまい。しかも、そんな仕組みでは、とても対応できない状況になることが見えているのに、改革だけはご免被るという人ばかりなのだ。

 なにせ、地方を中心に、素人が考えてもリターンが見込めないモノに、官民あげて、次ぎ次ぎと資本を投下してきたのだ。それを食い潰して、生活しているのだから、経済成長できたら奇跡に近い。
 流石に、批判の声が高まったから、今度はミクロでのリターン増を図る投資を進めているようだが、マクロでは結局はマイナスになるような投資や、良貨を駆逐するような助成ばかり目立つ。

 おそらく、地方経済は悪循環に陥っている。
 一端こうなってしまえば、ちょっとやそっとのことで、流れを変えることはできない。

 ついに、どうにもならないところまで来てしまったのである。

 --- 参照 ---
(1) “統計トピックスNo.25 最 近 の 人 口 動 向 〜「人口推計月報」から〜” 総務省 [2007.11.21]
  http://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/topi25.htm
(2) 「平成18年簡易生命表 平均余命の年次推移」 厚生労働省大臣官房統計情報部
  http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life06/sankou02.html
(3) 国勢調査最終報告書 日本の人口
  http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2000/kako/roudou/zuhyou/ro01.xls
(4) 「平成19年版 少子化社会白書」 http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2007/19pdfhonpen/19honpen.html


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