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2009.2.20
 
 


政府・日銀は信用不安を抑えることができるか…

 CDSプレミアムの数字をみると信用不安の状況が見て取れる。
 2007年7月にはパリバのサブプライム問題で上昇。高止まりしていたのが、2008年3月のベアー・スターンズ問題で急上昇。それでも、ある程度収まったのだが、9月のリーマン・ブラザース破綻でさらに急上昇。しかも、自動車Big3破綻懸念が出てきたから、落ち着く訳もない。
 しかし、どうやら、年末には、天井を打った感じが出てきた。

 ・・・と言いたいところなのだが、それが当てはまるのは米/欧(CDX NA.IG/iTraxx EUROPE)
 Bloombergのニュースを見続けている程度の情報で語っているにすぎないが、米/欧は、2007年に比べれば極めて高いが、2009年に入ってから、平穏化し、僅かながら下降基調の兆しも出てきたようだ。
 米国の対応の動きは速いから、急激な信用収縮はないと見られているということ。銀行の損失カバー策で、1期の決算だけは安心ということでもあろう。不良債権を消すところまで踏み込めるとは思えないから、長期的に安心できる訳ではない。住宅市場も相変わらず悪いから、さらなる不良債権が積み上がる可能性もあり、先はわからぬ。様子見というところだろう。
 欧州も、企業に対する支援策を打ちだして破綻防止に注力してきたので、多少、安心感がでてきたということだろう。こちらも、前途は不透明。東欧投資が焦げつけば、政府の手に負えなくなるし、日本政府が資金を融通したIMFがなんとか処理できる規模を超える可能性があるからだ。
 ともかく、一時的ではあるが、落ち着きはとりもどしているように映る。

 これに対して、日本(iTraxx Japan)は逆。不安は高まっているのである。
 2007年は米・欧より低かったが、今やずっと高く、しかも上昇気基調。特に、2009年1月中旬からは急上昇だ。
 考えられる理由はたいしてなかろう。
  ・外需依存型企業が多く、この経済環境下では、信用力に乏しい。
  ・政府の実効性ある支援策は期待薄である。
  ・日本のCDS取引が閑散化し、市場として機能していない。

 まあ、ミクロで見れば、自動車や電機業界の社債のCDSスプレッドが急上昇するのは当然だ。だが、生産性が低い非製造業セクターより、製造業の方が高いのである。そんな経済秩序がまともと言えるだろうか。
 日本を支えてきた産業に属する企業は、これからは高利の借金しかできなくなるのである。換言すれば、社債市場から資金調達できなくなる。この産業を弱体化させたくなければ、それぞれの企業に、公的資金投入を申請してもらうしかあるまい。
 とんでもない話だが、それ以外に手はなさそうである。
 もし、この仕組みが、機能不全だったりすると、信用不安が発生するかもしれない。その位の深刻な事態になりかねない状況ではないか。

 ともかく、何でもよいから、すぐに始めないと大変なことになるかも。下手に信用不安から株価急落につながったりすれば、銀行が損を抱え、さらなる悪循環に陥りかねないからだ。

 もっとも、上手くいくということは、企業の信用リスクを政府が負うことになるから、国債の信用度はさらに低下することになる。痛し痒しだが、改革をしないツケが回ってきたのだから致しかたあるまい。
 2009年2月から、日本ソブリンCDSスプレッドの急拡大がニュースに登場するようになっており、すでにそんな動きが始まったのかも。
 まあ、クリントン国務長官訪日の一番の使命は、どうせ日本の財政出動による内需拡大要請だろうし、もともとがバラバキ路線の首相だから、赤字国債増発で対応しそうと思われていることもありそうだ。

 それにしても、よりにもよって、こんな時に、経済センスの悪い政治家が財務大臣就任だ。口では危機と叫ぶが、硬直的な財政健全化主義者であり、柔軟に動けるとは思えまい。
 ニュースによれば、この19日、国会で質問を受けるらしい。リーマン・ブラザーズ破綻時に、「ハチが刺した程度」の影響と語った点についてだ。グローバル感覚を欠く政治家ということだろう。
 当時の茂木敏充金融担当相が、すぐに「スズメバチもいる」(1)と指摘したが、素人でも“crisis”との認識があるのに、そんなことは全く感じない政治家もいるのである。
   → 「悲観論主導の時代か」 (2008年9月4日)

 --- 参照 ---
(1) 「茂木金融相 米金融問題日本も痛みの可能性」 産経新聞 [2008.9.21]
  http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/080921/fnc0809211947003-n1.htm
(参考:グローバル経済の「危機」を理解 するのに役に立つ話)
  Takatoshi Kato, IMF Deputy Managing Director: “Implications for Asia from the Global Financial Crisis and Policy Perspectives”
   [February 14, 2009]   http://www.imf.org/external/np/speeches/2009/021409.htm


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