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2010.2.3 |
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欧州の動揺…いやはや、またもや“Doctor Doom”の登壇である。(1)勘弁して欲しい。前回→ 「悲観論主導の時代か」 (2008年9月4日) 今回は米国発ではなく、低金利ユーロの借金バブルの破裂。これは、そう簡単に片付く問題ではないのは確か。 言うまでもないが、ダボスでの話題。 日本のニュースを見ていると、金融規制の話と自由貿易の話ばかりだが、ユーロ問題の方が大きいのではないかな。 去年からギリシャが危ないと言われてきたが、ついに崖っぷちに追い込まれたようである。国債の実質利率が上昇一途で、早晩、資金繰りがつなかくなるのは明らかである。 もともと財政規律など無きに等しい政府であり、政権交代で粉飾まで露呈してしまったから、どうにもなるまい。 ・・・“The EU statistics agency has said that Greek government budget figures have been unreliable and even appeared falsified in some cases.”(2) 借金のし放題は、古代ギリシャからの伝統であり、こんなことは驚きでもなんでもないと言う人もいるが、欧州お得意の二枚舌外交といい勝負であり、これが世界の現実である。 そんなこともあり、Provopoulosギリシャ中央銀行総裁/ECB理事が前もって、Finacial Timesで自力財政再建を進める所存と表明した。(3)そんなことで収まるとは思えないが、それしかできないということ。 イタリアならそれなりの経済力があるから、ユーロ圏(EMU)を離脱し、為替調整と独自金融政策でどうにか経済を立て直すこともできようが、ギリシャが新通貨導入とかドラクマ復帰しても、状況が良くなる見込みはゼロだから早目に言い出しただけ。 EMUを離脱すれば、たちどころに輸入物価高。インフレが家計を直撃し、暴動続発で政府がもつまい。 しかも、国債は、大半が対外債務。外貨建て負債化するから、債務返済コストが急増。さらなる通貨暴落の悪循環に陥り、結局のところ国債デフォルトでは。 もし、そうなれば、他の加盟国にも余波が及び、ユーロ圏全体が不安定化し、国際金融市場は麻痺しかねない。 そんな動きをさせる訳にはいくまい。従って、自発的発表というより、ユーロ圏全体の意向をうけた緊急表明に近いのかも。 ドイツ辺りが中心になって、協調融資という話がでてもよさそうだが、ダボスでの裏での議論はそんな方向には進まなかったようだ。 これも当然。 欧州の問題児はギリシャに留まらないからだ。それなら我々もと、次々と援助要求が出かねない状況にあり、そんな議論を表立ってできる訳がない。それに援助するにしても、ギリシャ政府が財政規律を守れる訳がないから、財政を直接管理することになる。これは、政治統合を意味するから、常識的には無理だろう。 残っている道は、「自主的な財政再建」か、デフォルトしかないのである。後者は欧州銭木の経済危機の引き金になりかねないから、前者で頑張りますしか言いようがない。 それは、当たり前だが、超緊縮財政路線を貫徹する決意表明と同義。まあ、口だけ。 信用していないというのではなく、決意自体に何の意義もないからである。 それだけの犠牲を払ったところで、支出削減での金利低下のメリットは僅か。それに比べてデメリットは巨大。多分、大不況に見舞われ、政権が持つまい。 ECBが金融緩和とユーロ安方向に振ったところで、ギリシャ経済に活気が出ることはない。主力は観光産業と海運業であり、輸出産業が支えている訳ではないからだ。ユーロ圏全体の国民所得が増えない限り、観光業が上向きになる可能性も低い。誰も、どうしようもないのだ。 残念ながら、悲観論しか描けないのが現実。 唯一の救いは、経済規模が小さく、厄介な場所に位置しているという点。社会的に不安的化すれば、たまらず、ドイツや米国が手をさしのべる希望が残っているということ。 しかし、それはミクロで見た楽観論にすぎない。マクロで見れば、欧州は危ない国だらけで、ギリシャ優先とはいかないからである。 ビジネスマンが注視しているのは、なんといっても英国とスペイン。雇用状況は悪く、当面回復の見込みはない。その上、英国には金融機関問題がある。英国の真似をしていたアイスランドの金融機関がメタメタなのだから、英国も同じような状態であっておかしくない訳だ。もしそうなら、英国政府の手に余る。今度は、昔のポンド危機の比ではない。余波は巨大だが、皆、傍観するしかないだろう。 一方、スペインだが、おかしいからといって、この経済規模の国をEUが助けることができるものでもなかろう。できないものは、始めから諦めるしかない。 こんな状態では、ギリシャは、できる限り自力で頑張ってよ、としか言えないのでは。 そんなことがわかると、金融規制の話とは「トービン税」[投機目的の短期取引抑制を狙い、国際通貨取引に低率課税]の話でしかないことがわかってくる。タックス・ヘイブンを無くすつもりもないくせ、取れるところからは徴収するというトンデモ手法を持ち出さざるを得なくなったのである。 要するに、おかしくなった金融機関を救うための国際金融機関の財源確保に奔走し始めた国があるということ。 そこまで欧州の状況は悪化してきたのである。 --- 参照 --- (1) Simon Kennedy and Thomas R. Keene: “Roubini Pessimistic on Euro Area, Calls Spain a Risk (Update3) ” Bloomberg [January 28, 2010] http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=a.QAomEUWl1A Nouriel Roubini and Elisa Parisi-Capone: “Doctor Doom The Greece Dilemma” Rorbes [2010.01.28] http://www.forbes.com/2010/01/27/greece-sovereign-debts-euro-opinions-columnists-roubini-capone.html? boxes=opinionschannellighttop (2) “ECB President: Greece Must Put Finances in Order” ABC-AP [January 23, 2010] http://abcnews.go.com/Business/wireStory?id=9641902 (3) George Provopoulos: “Greece will fix itself from inside the eurozone” FinacialTimes [January 21 2010] http://www.ft.com/cms/s/0/018d0a1e-06cb-11df-b058-00144feabdc0.html 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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