■■■ 分類の考え方 2013.10.19 ■■■

兎も小哺乳類に近そうだが

哺乳類の小動物と言えば、「鼠」であると書いた。
 ・家(クマ、ドブ、ハツカ)+野
 ・モグラ[]+トガリネズミ[尖]
 ・ヤマネ[山]+リス[栗]
 ・滑空リス類(ムササビ/モモンガ)[]
 (これにコウモリ[飛鼠]を加えることも可能)

  → 小哺乳類を分類眼で眺めると [2013.10.15]

ただ、現代の分類から眺めると、かなり異なるものを一緒にしていることになる。
 ○門歯がはっきりしており、猿や人の遠縁(鼠の本流)
 ○世界(北方)に広がる食肉動物の遠縁(多くは土棲型)
 ○アフリカの異端

  → l哺乳類を昆虫食視点で眺めたら [2013.9.29]

なんでもつっこんだ感が濃厚だった「食虫類」を廃止した結果である。
そういう点では、かつての「齧歯類」も、鼠に純化させ、「兎」を別扱いにしたことも注目すべき点だろう。素人でも、目に見える前歯以外に、どう見ても類似性が感じられないのだから、一緒に扱う感覚は理解不能。だが、黙って暗記させられた訳である。
今や、門歯にしても、二重になっているから、「重歯類」と呼んだり。言うまでもないが、違いは小さなものではない。
  ・後肢が矢鱈に発達・・・跳躍走り
  ・完全草食・・・糞食
  ・集音用の大型耳朶
  ・尾や足に毛
  ・柔らかで長い毛足
  ・鼻の中央に割れ目・・・鼻開閉可能


ただ、多摩動物公園では、兎と鼠はお隣の展示。鼠ほど小さくはないが、小動物の範疇と見れなくもないから、両者を一括に括るのはそう悪くない気がしないでもない。
(もっとも、それは現生動物を見慣れているからか。約12キロもある化石兎がいるそうだから。まあ、鼠族も大型はいるからそれはそれ特殊と言えるが。ただ、極小鼠のような兎は存在していないようだ。そうなると、兎とは、中動物的存在かも。)

動物園では、教育効果ということで、ペットの飼いウサギとは、アナウサギが家畜化されたもので、ノウサギとは違うと大書してある。まあ、小学校あたりでウサギを飼えば、穴を深く掘るし、矢鱈に増えて群れのようになるから、野山を駆け回る種類とは違いそうなことはわかると思うが、野生の兎の存在を知らない小学生だらけだから動物園で初めて知るということになるのだろう。

それなら、折角だから、穴兎の解説でもしたら面白かろうと思うが、それはそれで批判する人も出そうだから、控えているのかも。
まあ、ご存知だと思うが、野と穴の違いは味である。・・・と言うとご立腹の方もおられるか。可愛いペットに対してなんという輩だとなりそう。しかし、兎を眺めるなら、その辺りが重要な視点だと思う。
ともあれ、野兎(hare)は古くから知られている。なにせ、旧約聖書レビ記[11:6]に登場するのだから。
  野うさぎ、これは、反芻するけれども、
  ひずめが分かれていないから、
  あなたがたには汚れたものである。

おわかりだろう。Hare食はキリスト教圏では本来は禁忌である。それに、しいて食べたくなるような美味でもなかろう。(小生は志賀高原で獲りたてで毛が僅かに浮かぶ兎汁をご馳走になったことがある。その一回だけの体験感だから、なんともいえないが。)
一方、穴兎(rabbit)は聖書には記載が無い。こちらは、禁忌ではないのである。多分、古代の文明社会では全く知られていなかった筈。イベリア半島とその対岸のアフリカ北西部の住民以外見たこともなかった動物だったに違いない。それが、現在のようなポピュラーな種になったのは、家畜化のお陰。どう考えても、欧州の中世、僧院が、毛皮/肉用に家畜化した結果。
ラビットは、日本には室町時代に欧州から渡来したとの説があるそうだ。東博には俵屋宗達「兎桔梗図」があるから、その頃になると白兎は珍しくもなかったようだし。本格的な流行は明治初期らしいが。

ただ、気になるのは、李白(701-762)「把酒問月」にもアルビノが登場すること。野兎だと思うのだが。
   白兔搗藥秋復春,嫦娥孤棲與誰鄰。
月と兎はつきものなのは、インドの信仰から来ていそうだが、そもそも兎が東アジア発祥ということだからその辺りの神話に関係していそう。インドの原典はなんだか調べてはいないが、今昔物語に、天竺の仏教説話「三獣行菩薩道兎焼身語第十三」が掲載されている。
  前世の罪でに罪で獸に生まれことを悔いた、狐、猿、兎に対し、
  老翁に姿を変えた帝釈天が食物の施しを乞う話。
  狐と猿は、採取してきたのだが、
  そんな能力が無い兎は焼身自殺でわが身を提供した訳である。
  そこで、これを思い起こすようにと、
  月の中に兎の形象をつくったという。

当然ながら、この兎は野兎である。大陸渡来の十二支も同じだろう。万葉集の兎も。
   等夜の野に 兎ねらはり をさをさも
     寝なへ子ゆゑに 母に嘖はえ

       [万葉集#3529-東歌]

しかし、古事記における因幡の白兎が、雪国の冬毛野兎とは思えないから、アルビノということになろう。お宝として渡来したのかも。
重要な祭祀は卯の日に決まっているようだし、兎は特別な動物だったのは間違いない。鼠と一緒に十二支動物になっているが、文化的背景は相当に違いそう。

---ウサギの分類---
  ○絶滅古代兎族
     ・・・東アジアから欧/北米へ
  ○鳴兎族
     ・・・[化石]東アジアからか
          鳴兎以外はすべて絶滅

     鳴兎/pika
       □北方系□
      北鳴兎・・・ユ-ラシアウラル山脈以東
        蝦夷鳴兎・・・大雪山
      <各地>
       □潅木帯・ステップ系□
       □山地系□
  ○非鳴兎族
     ・・・[化石]北米からか
          マダガスカル/ボルネオ/ニューギニアは未達
          豪/ニュージーランドは人為的導入のみ

       □主流□
     メキシコ兎(小耳型)
     野兎/hare
      雪兎・・・大陸
        蝦夷雪兎
      日本野兎・・・九州,東北,佐渡,隠岐
      <各地>・・・半砂漠,熱帯雨林,草原,北米湿地
     穴兎/rabbit・・・西,葡,北アルジェリア,北モロッコ
        飼い兎
     粗毛兎・・・南アジアアッサム地域
     ブッシュマン兎・・・南ア西ケープ州
     奄美野黒兎(小耳型)
     綿尾兎
     ピグミー兎
       □異端□
     スマトラ兎・・・熱帯森林棲:絶滅寸前
     ウガンダ草兎
     赤兎(小耳型)・・・アフリカ

(インターネットリソーシス)
1.ウサギの基礎 epc-vet.com/animal/rabbit/pdf/rabbit-1.pd
史上最大のウサギ化石を発見、スペイン by Christine Dell'Amore, National Geographic News, March 23, 2011
(書籍)
十二支考 兎に関する民俗と伝説 南方熊楠

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