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■■■ 分類の考え方 2014.6.10 ■■■


空木で見る分類

卯の花の季節も過ぎたと思ったら、猛暑到来。これでは、古典的な季節感を味わうどころの話ではない。

卯の花にしておけばよいのに、ご存知のように、正式名称は「うつぎ/空木」である。この木についてはすでに触れた。
  シーボルトが賞賛した潅木 [2013.4.12]

言うまでもないが、茎に空洞がある樹木ということで名付けられたとされる。

その説明には、一応は納得するのだが、どうも引っかかる。

それは、「ウツギ」の解説の最後に、植物分類学上では違う種類の、「ウツギ」と呼ばれる樹木が紹介されているから。
例外的というなら、見過ごすのだが、数がかなり多いのである。

多分、ホウ、そうかネで、それ以上考えないのが普通だろう。
どう見ても茎に空洞があるとは思えない樹木だらけだから、そんな名前になっているのは「空木」に外見がよく似ているからだろうと勝手に解釈してしまうからである。
小生も、そういうことだと考えていた。そこで、「空木」の特徴とはどういう風に解釈されているのか、こうした樹木をざっと眺めてみたくなったのである。

そこで、以下の樹木で比較してみた。
この程度なら、ちょっと努力して探せば、実物ご対面可能である。(例えば、皇居東御苑や小石川植物園。もっとも開花期に訪れることができるとは限らないが。)
  空木
  糊空木
  谷空木
  房藤空木
  小米空木

その結果だが、はっきり言って、似ているとは言い難い。
ウツギの場合、花が咲いていなくとも、種がとれた後の、堅くて小さい実が残っているから、ド素人でも違いわかる。
谷空木の花弁は紅色。まあ、色違いはよくある話だが、実の形はボーリングのピンのよう。しかも集合状態だ。
小米空木に至っては、葉は対ではないし、形も全く異なる。米粒のようだが、花が似ているとの理屈で説明がつくのだろうか。それに、房藤空木など、フジのような花のつきかた。どうして同類としたくなるのか、はなはだもって疑問。

こうなると、どうしてこれらの木々をわざわざ「空木」と呼ばねばならぬのか、まるっきりわからなくなってしまう。

このことは、「空木」という樹木は、ことのほか人々の日々の生活に密着していたということ。
なんらかの信仰心と関係しているのかも。

ちなみに、どのような分類になっているか、分子生物学的検討を重視しているAPGで整理してみると、とんでもなく分散していることがわかる。
いくら、従来のように形態上の差違からの総合判断での種別ではないとはいえ、外見から同類と見なせないものだらけなのでは。にもかかわらず、どうしても同一の呼び名にしたかったのである。現代人が思い出せなくなった感覚があるのは間違いなさそう。・・・
--菊類--
 水木目  アジサイ科
   ウツギ
   アジサイ属 ノリウツギ
   バイカウツギ
 [紫蘇系]紫蘇目  ゴマノハグサ科
   フジウツギ
 [桔梗系]松虫草目  スイカズラ科
   ツクバネウツギ
   タニウツギ
--薔薇類--
 [豆系]瓜目  ドクウツギ科
   ドクウツギ
 [豆系]薔薇目  バラ科
   コゴメウツギ
   ヤナギザクラ属 ウメザキウツギ
 [葵系]クロッソソマ目  ミツバウツギ科
   ミツバウツギ

   -----上記に属す様々な空木-----
<アジサイ科ウツギ属(Ch.:繍球花科溲疏属)
 空木(Ch.:歯叶溲疏)
 姫空木
 筑紫空木(丸葉)、豊後空木、
  大島空木/沖縄姫空木、八重山姫空木
 東北溲疏,甘粛溲疏,四川溲疏,西蔵溲疏,寧波溲疏,長江溲疏,台湾溲疏,・・・
<アジサイ科アジサイ属(Ch.:繍球属)
 糊空木(Ch.:円錐繍球)
 額空木
<アジサイ科バイカウツギ属(Ch.:繍球科山梅花属)
 梅花空木(薩摩)
<スイカズラ科ツクバネウツギ属(Ch.:忍冬科六道木屬)
 衝羽根空木
<スイカズラ科タニウツギ属(Ch.:忍冬科六錦帶花屬)
 谷空木/紅空木(Ch.:錦帶花)
 箱根空木
 鬱金空木
<フジウツギ属(Ch.:醉 魚草科)
 藤空木(Ch.:日本醉魚草)
 唐藤空木(Ch.:波叶醉魚草)
 房藤空木(Ch.:流蘇醉魚草)
<ミツバウツギ科ミツバウツギ属(Ch.:省沽油科省沽油属)
 三葉空木
<ドクウツギ科(Ch.:馬桑科)
 毒空木(Ch.:台湾馬桑)
<バラ科コゴメウツギ属(Ch.:薔薇科野珠蘭屬)
 小米空木(Ch.:小野珠蘭)
 金空木
<バラ科ヤナギザクラ属(Ch.:薔薇科白鵑梅屬)
 梅咲空木[利休梅](Ch.: 白鵑梅)


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