表紙 目次 | ■ 分類の考え方 2015.10.13 ■ 「門-綱-目」の暗記は無意味では 生物分類の「界」という用語ほど、概念が曖昧で、恣意的な主張だらけなものも珍しい。 言うまでもないが、これは生物全体をどう眺めるかという、哲学的な観点が含まれており結構重要な問題である。結果より、議論そのものに価値があると思う。そんな議論を知れば、概念形成の重要性に気付くだろうから。 と言うことで、グダグダと、とりとめもなく書いてきたが、分類用語として問題なのは「界」だけではない。 もっとも、それは素人の観点での話。・・・ 気にならない人の方が多いだろうが、「ドメイン-界-門-綱-目-科-属-種」の階層構造が全く理解できないのである。 小生は、用語としては、「科」と「属」だけあれば十分と見る。というか、それ以外の用語にさいsたる意味があるようには思えないからだ。単に樹上分岐階層構造上のランクとして、どちらが古いかを示すだけ。どこまでを、1つのグループにするかは、視点で決まるから、一意的に確定するのは難しかろう。それをいつまでも引きづっていると、煩雑化するだけではないか。分子生物学の発展で、この程度の数の階層構造ではとても対応できないからである。もともとは、階層が見えやすくなるということで用いられた筈だが、いまや分岐が多すぎて、部外者には階層構造が煩雑化してかえってわかりにくい。 これからも、グループ再編成は発生するだろうし、分岐の数も再現なく増えていく。脊椎から脊索に替えたように、より本質的に映る分岐でまとめたくなる可能性も高い訳で、「門-綱-目」という固定化した印象を与える分類は理解しにくくするだけでは。 ともあれ、「ドメイン-界-門-綱-目-科-属-種」表記方法は、部外者には極めてわかり難くなってしまった。 例えば、「綱」など、どう見ても、一意的に決まる訳がなく、議論したい範囲で、わかり易いように設定するしかなかろう。「目」にしても「科」を便宜的にグループ化しただけとしか思えない。 どちらも概念的意味付けがほとんど無い用語になっているように映る。 それに分岐の数は増える一方であり、俯瞰的に眺めるには、妥当な階層数はどの程度かも、全くわからない状態では。にもかかわらず、「ドメイン-界-門-綱-目-科-属-種」の形式を続けようという姿勢はどうかと思う。 → 「現生人類への分岐シナリオ」 実際、種の数が極めて多い領域で眺めると、素人にはその煩雑さは耐え難いものがある。 下記に「ハツカネズミ」の分類を分岐図にしてみたが、綱と目だけで、「上綱-綱-亜綱-下綱-上目-大目-目-亜目-(Clade)-上科-科-亜科-(Division)」と、なんと13階層もある。見ればおわかりのように、もっと増やしてもよさげ。哺乳綱とグリレス形大目の間はこれではよくわからないだろう。唐突に単歯なる用語での分類になるのはどう見ても論理の飛躍があり、歯の特徴としての前段階の階層(例えば、トリボスフェニック型臼歯類といった名称)は必要では。下図では哺乳形類のなかに含めているが、位置はここでよいのかはなんとも。単歯類の分類だというのに、歯と顎に関係する分岐が階層にあがってこないのも納得がいかぬ。 それに、一般的には、北半球系か否か、あるいは、有胎盤類v.s.有袋類の階層は重視されているのだから、そこを目立たせるような階層表現になっていない。 (尚、下図の学名表記はいい加減なものだらけだから、使用しないように。Wiki等からの寄せ集め情報に依拠しており、その時点ですでに矛盾があったりするが、一切気にしていない。欠落やミスだらけと考えて欲しい。単に、階層構造がいかに深いかが見えるようにしただけのもの。) そもそも、「動物界とは何ぞや?」について、どのような見方があるのかよくわからない。その状態では、「ドメイン-界-門-綱-目-科-属-種」の階層を決めるといっても、視点が定まらないのでは。 例えば、脊索動物「門」という言い方がされるが、昔のように脊椎でもよい筈だし。神経系を重視するなら、視覚動物「門」という概念を創出してもよさげに想うが。あるいは、発生上の大変化で切るべしというなら、間違い無く後口発生動物「門」では。 切れ目はいろいろ。 脊椎+頭蓋・・・ヌタウナギ 尾索神経系・・・ホヤ 頭索神経系・・・ナメクジウオ 後口発生+散在神経系・・・珍渦虫動物 上下[背腹]軸形成=左右相称動物 萌芽的筋肉組織+視覚蛋白・・・クラゲ 浮遊性・・・クシクラゲ 移動能力・・・後方1本鞭毛型単細胞 【ドメイン/Domein】 │ 【界/Kingdom】動物界/Animalia ├────クシクラゲ(有櫛動物)類 ├────海綿動物類 ├────サンゴ,クラゲ(刺胞動物)類 ├────冠輪(軟体動物,等)、線形、有爪、節足(昆虫,等)動物類 ├────珍渦虫動物類 │┌───ナメクジウオ(頭索動物類) ├┤ │└───ヒトデ,ウニ,ナマコ(棘皮動物類) 【門/Phylum】脊索動物門/Chordata ├────ホヤ(尾索動物類) [亜門] : 脊椎動物亜門/Vertebrata ├┬───ヌタウナギ(円口類) │└───ヤツメウナギ類 ├─→[化石]錐歯,翼甲,甲皮類/Ostracodermi ├┬───ギンザメ,サメ,エイ(軟骨魚類) │└───[化石]板皮類 ├────[化石]棘魚 ├─→軟骨魚類/Chondrichthyes ├─→硬骨魚類/Osteichthyes ├─→条鰭類/Actinopterygii ├─→シーラカンス(総鰭類)/Coelacanthimorpha,肺魚/Dipnoi ▼肉鰭類/Sarcopterygii │ [上綱] : 四肢動物上綱/Tetrapoda ├┬→両生綱/Amphibia │└───無足化類 ▼爬形類/Reptiliomorpha │ ▽[化石]コティロサウルス/Cotylosauria ├─→[化石]ディアデクテス/Diadectomorpha ▼有羊膜類/Amniota │ ▼単弓類/Synapsida ├─→盤竜類/Pelycosauria ▼獣弓類/Therapsida ├─→異歯類/Pelycosauria ▼獣歯類/Theriodontia │ ▽[化石]Cynodontia ├─→[化石]Dvinia,Procynosuchidae ▽[化石]Epicynodontia ├─→[化石]Thrinaxodon ▽[化石]Eucynodontia ├─→[化石]Cynognathus,Tritylodontidae,Traversodontidae ▽[化石]Probainognathia ├─→[化石]Tritheledontidae,Chiniquodontidae ├─→[化石]Prozostrodon ▼哺乳形類/Mammaliaformes ├─→[化石]三錐類/Morganucodontidae・・・下顎骨顎関節化 ├─→[化石]梁歯類/Docodonta・・・大臼歯顕著 ├─→[化石]ハドロコディウム/HadrocodiumHadrocodium ├─→[化石]エオマイア/Eomaia/始祖獣 【綱/Class】哺乳綱/Mammalia ├─→原獣類/Prototheria or Australosphenida:カモノハシ(単孔類) ▼獣形類/Theriiformes ├─→異獣亜綱/Allotheria [亜綱] : 獣亜綱/Theria ├─→後獣下綱/Metatheria [下綱] : 真獣下綱/Eutheria ├─→有袋類/Marsupialia ▼有胎盤類/Placentalia ├─→異節上目/Xenarthra ▽Epitheria ├─→アフリカ獣上目/Afrotheria │ [キンモグラ、ハネジネズミ、テンレック、ツチブタ、等] ▼北方真獣類/Boreoeutheria ├─→ローラシア獣上目/Laurasiatheria [上目/Superorder]: 真主齧類上目/Euarchontoglires ├─→真主獣大目/Euarchonta [大目/Grandorder]: グリレス形類/Gliriformes ├─→[化石]/Arctostylopida ▼グリレス類/Glires ├─→ウサギ目[重歯目]/Lagomorpha 【目/Order】ネズミ目[齧歯目]/Rodentia ├─→ヤマアラシ亜目/Hystricomorpha ├─→リス亜目/Sciuromorpha or リス顎亜目/Sciurognathi [亜目/Suborder] : ネズミ亜目/Sciurognathi ├─→ビーバー下目Castorimorpha [下目/Infraorder] : ネズミ下目/Myomorpha or Myodonta ├─→[化石]+Platacanthomyidae(spiny dormouse+pygmy dormouse) [Clade]:Eumuroida ├─→トビネズミ科/Dipodoidea [上科/Superfamily] : ネズミ上科/Muroidea ├─→キヌゲネズミ科/Cricetidae,等々 【科/Family】ネズミ科/Muridae ├─→アレチネズミ亜科/Gerbillinae,等々 [亜科/Subfamily] : ネズミ亜科/Murinae ├─→Rattus Division,等々 [Division] : Mus Division ├─→エチオピアストライプマウス属/Muriculus 【属/Genus】ハツカネズミ属/Mus ├─→Coelomys [亜属>/Subgenus] : ハツカネズミ亜属/Mus ├─→オキナワハツカネズミ/Mus caroli,等々 【種/Species】ハツカネズミ/Mus musculus │ [亜種] : カスタネウスマウス/Mus musculus castaneus,等々 [飼養変種] : イエハツカネズミ/Mus musculus domesticus (C) 2015 RandDManagement.com |