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■ 分類の考え方 2015.10.17 ■


齧歯類の祖先は北米族なのだろうか

素人的には日本人にとってのネズミ的な小哺乳類とはこんな感じと書いてから早2年。・・・・
   「小哺乳類を分類眼で眺めると」[2013.10.15]
 ・家鼠(クマ、ドブ、ハツカ)+野鼠
 ・モグラ+トガリネズミ[尖鼠]
 ・ヤマネ[山鼠]+リス[栗鼠]
 ・滑空リス類(ムササビ/モモンガ)
 ・網羅的にしたいなら、これにコウモリ[飛鼠]

たまたま、「リス・ネズミハンドブック」[飯島正広&土屋公幸 著,文一総合出版,2015年4月1日]を眺めたら、[化石]パラミス元祖シナリオが書いてあった。

 樹上棲"原始ネズミ"こと[化石]パラミス/Paramys出現@北米
  ↓@5,500万年前
 地上棲化し夜行性に
  ↓
 体躯が小型化
  ↓
 地中トンネル切削で土中棲化
  ↓
 堅固殻の種子を主食とするハムスター出現
  ↓
 臼歯発達(生涯伸び続ける「齧歯化」)
  ↓
 草食性齧歯類派生
  ↓
 ハタネズミ・ヤチネズミ類がハムスター凌駕
  │
  │ 残存ハムスターは、
  ├──→中近東・中国の乾燥地へ
  ├──→北米・マダガスカルでは天下
  │     ↓
  [現存主流ネズミ向環境変化対応]
  │     └→アメリカ鼠,足長マウス
  ↓
 各種ネズミの誕生

ネット上では、齧歯類の祖先らしき化石はアジアで発見されているという話がある訳だがその辺りはどうなのだろうか。まあ、シナリオとはそういうものだが、ユーラシアから北米に流れ込む種族は多々あるのに、その逆もあるというのなら、そこにはなんらかの理由をつける必要があるのではなかろうか。

素人からすれば、[化石]パラミス@北米はいかにも[現存]山ビーバー@北米-土中巣穴居住の元祖に映る。そのように描かれている情報が多いということ。この樹木食の山ビーバーはもちろん齧歯類だが栗鼠型とされている。誰でもが知るビーバー類は鼠型だが、全く違う系統に属する。
樹上の栗鼠が下りてきて鼠になるというのは、どうも感覚的に解せない。樹上の栗鼠が、地上の穴棲み栗鼠化するのはいかにもありそうなことだが。

そういう場合は、異なるシナリオを考えて見るのも悪くなかろう。

ちなみに、もう一つ、[化石]プレシアダピスがリス類の祖先とされていると記載されていたが、素人からすれば、齧歯的原猿形類としたくなる。細かいことは知らないからいい加減な推定だが、木鼠[ツパイ]や日避猿の系統の動物の可能性を感じる。

ともあれ、齧歯類の元祖を樹上棲とする見方は避けたい。それは、樹上棲が正しいかとうかという問題ではなく、議論がつまらないからである。
上記のようなシナリオ形成は、どう見ても新しい種から元祖へと遡っていく頭の働かせ方。これは、細かな分析の積み上げ的論理で構築される。不足情報をなんとかして補う作業の連続だろうから、おそらく、大変な仕事である。一種の推理小説の種明かしのようなもので、話は筋が通るがエンタテインメントならそれは面白いが、現実の世界を眺める場合はそうはならない。
想像力発揮の余地が無いからだ。つまり、方法論としては逆でないと、ふ〜ん、成程で終わってしまうのである。・・・余り似ていないが、血筋が繋がっていそうな様々な種をザックリと眺め、齧歯類とはどんな位置にありそうか考える方が有意義ということ。
これは一重に概念的な思考となる。齧歯類って、一体なんなんだという点が出発点となるからだ。ここに最初から分析的な思考を持ち込んでは駄目である。それは、定説化しているなんらかのパターンを持ち込むことになってしまい、新しいものの見方が生まれないからである。もっとも、学問の大半はおおかれすくなかれそんなもの。だが、それでは部外者にはさっぱり面白くない。

齧歯類の場合、頭蓋と下顎の咬み合わせ構造と噛み切り歯のセットが特徴な訳だろうから、それを踏まえて俯瞰して考えることになる。さすれば、素人の常識だと、元祖は樹上にはならない。落下したままで誰も食用にできなかった大量の堅果を食べれることができたのが、元祖齧歯動物。林床棲の筈。
木に登る必要があるとは思えない。
モグラ系(真無盲腸)の元祖はどう見ても、土中や地上腐葉土の蚯蚓や昆虫の幼虫を食べていたに違いなく、やはり林床棲かも。その後、土中トンネル生活へと進むと、競争相手が少ないので大繁栄ということでは。

ただ、齧歯類が林床棲からすぐに樹上棲になるのは当然のこと。食物は樹上に沢山あるし、住居も林床から樹木の洞にした方が便利なのは自明なのだから。まあ、こんな具合。・・・

   ─・─・─分岐の様子─・─・─

┌───齧歯
┌─┤<単歯類(齧歯)>
├───山嵐型齧歯
└───栗鼠齧歯
┌┤
│└────<重歯類>・・・兎
│▲門歯の発達
┌┤
││▼目の発達
││┌────<登攀類>・・・木鼠/ツパイ
│└┤
│▼手指構造変化(細枝把握可能)
│┌───<皮翼(滑空膜)類>日避猿
└┤
│┌──<齧歯的原猿形類>[化石]プレシアダピス
└┤
│▼真正両眼視
└──<(真正)猿類>

┌────<針鼠類>
├─ジムヌラ/Gymnure or Greater hedgehog
└─並針鼠[ヨーロッパ針鼠]/"Common" hedgehog,
満州針鼠/Amur hedgehog
│┌┤真無盲腸系
││└────<尖鼠類>
││├─土竜/Moles, Shrew moles, Desmans
││├─ソレノドン/Solenodon("slotted-tooth")
│││┌尖鼠/Shrew,川鼠/Water Shrew,
││└┤     麝香鼠/Asian house shrew
││地鼠/White-toothed Shrew
││森地鼠/Red-toothed shrew
││▲土中岩穴棲の進展
└┤

│┌───<鯨偶蹄類>
└┤
│┌──<翼手(飛翔膜)類>・・・蝙蝠[飛鼠]
││
│├──<奇蹄類>
└┤
│┌─<有鱗類>・・・穿山甲
└┤
└─<食肉(肉切歯)類>

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