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■ 分類の考え方 2017.11.24 ■


進化と分岐の考え方[続 注]

動物の始原としての鞭毛虫をとりあげた。[→]

この場合、どうしても進化シナリオが描ける時代に入ったとのスタンスになりがち。

一見、当然に思いがちだが、正解に到着しつつあるとは言い難い。例えば、襟鞭毛虫と海綿が近縁だとの結論が出ただけではたいした価値はない。分類の視点で両者にどんな特徴が受け継がれたのかを指摘し、そうなった推定理由が必要ということ。

言い換えれば、こういうことでもある。・・・

今まで考えられていた分類学の筋道とは違うのだから、今までのモノの見方がどうして生まれてしまたのか、明確にする必要があろう。
例えば、素人にとっては、蛞蝓魚はどう見ても脊椎動物の祖先に近い生物と思っていた訳だが、海鞘だと言われればビックリする訳だ。

素人からすれば、以下のように描くことができれば納得感が生まれるのだが、これは実体とは違うのだ。・・・

│↓濾し獲り器官発祥

襟鞭毛虫[固着型]

│↓襟付胃腸嚢構造化
│ →大型群体
├─┬───海綿動物[固着型]
┼┼│↓襟大型捕獲器化
┼┼├┬──刺胞動物[固着型]
┼┼┼
┼┼┼├─────冠輪(触手冠)動物 箒虫[ホウキムシ]
┼┼┼┼┼┼┼┼(環形動物, 軟体動物, 腕足動物を含む.)
┼┼┼┼┼┼┼┼[固着型]
┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┌─棘皮動物
┼┼┼┼┼┼│↑
┼┼┼├───┴─半索動物 翼鰓 総担[フサカツギ]
┼┼┼├─────半索動物 腸鰓 擬宝珠[ギボシムシ]
┼┼┼├───┬─尾索動物 海鞘[ホヤ]
┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼│↓[固着型⇒遊泳型]幼生成熟
┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼├┬頭索動物 蛞蝓魚[ナメクジウオ]
┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼│↓
┼┼┼┼┼┼┼┼
┼┼┼┼┼┼┼┼脊椎動物

このことは、脊椎動物と無脊椎動物はかなり近しいということを意味していそう。

マ、もともと、系譜を辿るのは一筋縄ではいかない作業。
浅学なのでよくわからないが、A.S.Romer[1894-1973]が打ち出した思想がそれを物語る。2つの流れが絡んでいるというのだから。(邦文解説では余り取り上げられていない。)
"somatic" (that sense the environment and respond by shaping bodily motions)
"visceral" (that sense the interior milieu and respond by regulating vital functions)

Romerが提起した分岐は遺伝子解析結果とは全く合致しない訳だが、だからといって捨て去るべきモノの見方ではなかろう。実際の組織形態の特徴で考えても混在しているゾ、と指摘しているからだ。つまりどのような生態を始めたかが分岐の本質で、その結果としての組織形態でしかないと言っているようなもの。祖先の生態の推定など100%のウソでしかない訳で、ポイントをついている。
つまり、分子生物学的な遺伝子による分類は、生物としての「類」の概念形成には直接的に役立たない可能性もある訳だ。遺伝子的な同類とは、単に「ツールキット」を所有しているか否かでしかなく、同じものを持っているからといって、それを使う条件で組織形態は大きく違ってしまう、ということ。つまり、ツールがあっても、発現の順番によっては、発揮を抑制されてしまう場合もあり得るから、見かけの形態は大きく異なる訳である。

と言うことで、前口と後口を含めた表を作成しておいた。[→]

わかりにくい説明なので、蛇足。・・・早晩、この前口(旧)と後口(新)という命名を変えざるを得なくなる可能性があるということ。(エッ。脱皮動物が一括りに!というのと同じようなもの。)従って、ここで、一旦、系譜図をブッ千切ることをお勧めしたい。
発生観察結果が、前口とか後口という類の名称と相反する例がでてきてもおかしくない。ただ、後口はどう見ても本流ではないから、そこには大きな変化はないと思うが。

(参照) A.S.Romer:"The vertebrate as a dual animal-somatic and visceral" in "Evolutionary Biology" Appleton-Century-Crgofts 1972

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