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魚の話  2008年7月4日
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うぐいの話…


 恐山 あちら世界に 往くウグイ

 ウグイ君から見れば、恐ろしいのはガスではなく、遊歩道か


 宇曽利湖は下北半島恐山にあり、pH3.5の強酸性の湖ということで有名である。湖底から硫化水素が噴出しているらしい。
 驚いたことに、そんなところでもウグイは生きていける。と言うか、独占的に環境を利用できることで、安全な産卵に励むことができるということのようだ。(1)

 それにしても凄い機能だ。胃酸に耐えるヒトの胃同様な仕組みを持っているのである。(2)

 これなら、どこでも生きていけると思ったらたぶん間違い。宇曽利湖にしても、写真を見ると、コンクリート護岸工事が進んでいるし、立派な橋までかけている。岸辺はなくなるし、沢には段差ができ始めているのは間違いあるまい。流石のウグイ君も段差をジャンプで登る力はあるまい。折角ここまで頑張った来たが、どこまで持つかといったところではないか。

 そもそも、昔は、ウグイなどどこにでもいた魚だったと思われる。ハヤと呼ばれ、オイカワと一緒に扱われていた魚である。
  → 「おいかわ」 (2008年4月18日)
 それが、日本全国、どこの川もコンクリート工事だらけになり、流石のウグイ君も追い詰められてきたのである。
 それでも、まだ千曲川では生きていけるようだ。ただ観光産業振興のため、“つけば漁”(3)が行われているから、この先どうなるか。
 この漁法、投げ網で少しづつ獲るのとは違い、産卵場で一網打尽にするやり方なのである。

 まあ、名前は知っているが、馴染みが薄い魚であり、他の魚に比べるとそれほど美味しくはないのだろう。
 しかし、それなりの縁起があるお魚である。
 天武天皇が、正月と節句料理には必須としたそうなのだ。当時、そのウグイを供する役目を仰せつかった國樔乃翁は、吉野の御霊神社のご祭神。(4)
 大友皇子(弘文天皇)に襲われそうになって、吉野に逃げた大海人皇子(天武天皇 飛鳥浄御原宮で即位)に、國樔乃翁がウグイを供応したことが、今も伝わっているのである。
  → 「日本の進路を決めた古代の大決戦」 (2007年12月5日)

“『源平盛衰記』から・・・代々を経て浄見原天皇、大伴王子に襲われて、芳野の奥の岩屋の中に御身をかくさせ給いしには国栖の翁、粟の御料にうぐいというめる魚をそえて供御に奉つりしかば、朕帝位にのぼらば翁と供御とをめされなんとおぼしめされけるより此のかた元日の御祝いには国栖の翁まいれり。桐竹に鳳凰の装束を賜りて舞いけるとかや。豊明(とよのあかり)五節にも此の翁まいりて、粟の御料にうぐいの魚を御祝に奉つる。殿上より国栖とめされぬれば聲にて御こたえ申さず笛を吹きてまいるなり。此の翁まいらぬには五節も始まる事なしとなり。” [ママで引用(4)]

 --- 参照 ---
(1) snowmelt[北のフィールドノート]: ウグイの産卵(動画音声) [2006.6.10] http://snowmelt.exblog.jp/3603089/
(2) 広瀬茂久,金子豊二: “恐山ウグイの酸性適応機構” http://www.hirose.bio.titech.ac.jp/research/dace/dace2003.html
(3) 千曲市経済部商工観光課 千曲市名所探訪:千曲川河畔 http://www.chikuma-city.jp/m_chikumagawa/index.html
(4) 神奈備 御霊神社 http://kamnavi.jp/as/yosino/yosinogo.htm
(宇曽利湖アーチ橋の写真) [Wikipedia] Lake Usori2.JPG http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Lake_Usori2.JPG


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