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魚の話 2009年1月30日 |
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やなぎがれいの話…ムシガレイ 念仏聞いて 往生か その昔、若狭は素晴らしい海産物を貢ぐ地域だった。 伝、御食国。 カレイは煮付、ヒラメは刺身というのが常識。 どうしてそうなるかなど、説明の要無しと思っていたが、そうでもないらしい。両者の目の位置の違いだけは、面白いのでよく知られているのに、肝心な魚の味わいについては関心が薄いのだろう。 魚食文化風前の灯火。 → 「かれい」 (2006年3月3日)、 「ひらめ」 (2006年1月13日) 小生の理解では、カレイの身は概して水っぽく、ヒラメにはコリコリ感があるというだけのこと。ただ、たいした食経験がある訳ではないから、当たっているのか、多少心配ではある。実際食べてみると、刺身が結構いけるカレイもあるようだし。(1) そういえば、カレイの縁側なるものがお店で、出てきたことがある。どうせ、輸入ものだと見て、詳細を聞きのがしてしまったのが悔やまれる。 水っぽい身だと言うと、低級品と見られかねないが、それは刺身を勝手に最高級と考えているからに過ぎない。カレイのよさは、水っぽさなのである。 だからこそ、上手に煮ると絶品ができあがる。あるいは、干して水分を飛ばして、味を濃縮してもよい。干し方の巧拙はあるが、まず美味になると考えて間違いない。 もちろん、煮魚に適しているのは大物カレイの切り身で、干物に合うのは身が薄い小ぶりのカレイだ。 ご存知、「若狭がれい」は後者の典型。 この鰈、ムシカレイの高級品と思っていたが、正確にはヤナギムシガレイと呼ぶそうだ。柳の葉形のムシガレイということだろう。 こんなカレイを刺身で食べるとどんな味がするのかと思い。ぼうずコンニャク氏のサイトを眺めていたのだが、仰天。刺身の話ではなく、命名話。ムシガレイとは「虫鰈」だというのである。 そんな! 一体、誰がそんなことを言っているのだ。 そこで検索してみたら、“榮川省造は、体側斑紋から虫の食った葉のような鰈という意味”(2)と指摘しているそうな。 出典がわからないので、調べようがないが、ふつふつと疑問が湧いてくる。専門家が言ったとしても、どうしても、腑に落ちないのである。 和漢三才圖會はどうなのか、探してみた。 あんのじょう、“蒸鰈”が登場している。 どう見ても、これこそ「若狭がれい」だ。命名の理由もうなずけるし。・・・塩水で蒸し、半熟にして取り出し、陰干し数日で、炙って食べれば美味とのこと。(3) こんなつまらぬことにこだわったのは、個人的なこと。亡母が“蒸鰈”が好きだったから。別に、グルメという訳ではなく、好き嫌いが激しく、肉や赤身魚は絶対に手をつけなかっただけのこと。喜んで食べる魚介類と言えば、海老と白身魚だったのである。お蔭で、ムシガレイはよく覚えている。 もしも、この魚の名前が「虫鰈」だったとしたら、食卓に登場することはなかったと確信している。 --- 参照 --- (1) ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 カレイ目・フグ目の目次 http://www.zukan-bouz.com/zkanmein/fish111.html (2) ムシガレイ Web魚図鑑 http://fishing-forum.org/zukan/mashtml/M000185_1.htm [推定の原典: 目を通していないので間違いかも.] 榮川省造:「新釈魚名考」 青銅企画出版 1982 (3) 寺島良安: 「和漢三才圖會 卷第五十一 魚類」 やぶちゃんの電子テクスト http://homepage2.nifty.com/onibi/wakan51.html “蒸鰈 出於若狹及越前大尺許者以鹽水蒸令半熟取出陰乾數日而炙食如有些[魚委]氣而亦味美也” 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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