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水母の話  2018年3月9日

はながさくらげ の話

花笠と 紅型染の
   華やかさ
琉球舞踊は
   水母の世界

…と考えると間違い。
  水母ではなく、熱帯魚乱舞。


極めてカラフルなので、昔から、図鑑を飾ってきた有名なクラゲがいる。5cm〜10cmの大きさなのでほぼ原形的な写真も多かった。一般人向けの解説としては、美しいものには毒がある程度しかなかったような記憶がある。今や、葛西の水族館での拝見も可能(短寿命だから簡単ではなさそう。)になり、その色彩爆発的な姿に感動を覚える人も多いのではなかろうか。コリャ一体なんなんだ、ということで。
  花笠水母
透明感ある薄いブルーの基質に、ピンキッシュな紫色と黄緑色を着色した短細棒的触手があり、繊細な糸の触手を合わせるとその数は100本は越えよう。こんな文章ではどうにもなるまい。
ゆらゆらさせて水流に身をまかせている姿を見るに限る。・・・
→"綺麗なクラゲ ハナガサクラゲ Flower hat jelly Olindias formosa"
   by Underwater Video JP@YouTube 2014/07/16

色遣いが半端ではないから、小生は、カラフルな石珊瑚の擬態と考えていた。誤解して近寄る小魚を捕獲しての生活者とみて。
ところが、本州中部から四国・九州沿岸にかけての、黒潮が流れる海域のやや深い海で見つかるそうだ。"花笠"という命名は、各地でみられる花踊りから来ているということか。
尚、沖縄にも棲息しているそうだが、色はさらに派手になる訳ではなく、逆に淡い色に変わっているそうだ。たいていは、海藻のひっついていることが多いので、ダイバーは傘の上の突起状触手に十分ご注意のほどと言われている。寝静まった夜間に蛍光色でも発しながら活動するのであろう。

このクラゲ、分類では"淡水水母"である。

もちろん、名実共に淡水棲息種もいるが、[→]海藻にひっつかまっているだけで全く泳ぐつもりのない海水棲息種[→]も所属しているので実に紛らわしい。

花笠水母は遊泳するが、静かにして藻につかまったり、底で鎮静していることが多いから、体質的には海藻ひっ付き型生活者に近いのかも。

さて、"クラゲ体"だけの話をしてきたが、"ポリプ体"にも触れておかねばなるまい。

"淡水水母"の代表は、淡水棲息の真水水母であるから、その"ポリプ体"を調べたら、その大きさはなんと僅か1mmなのである。そんな大きさで餌を採取するのだからご立派。小クラゲとはいえ、余りの小ささに驚かされる。まさに、虫メガネで拝見の世界。
これでは、ポリプ体の触手などどうなっているのか、すぐにわかるものではなさそう。

同じように2cm程度の"クラゲ体"の種だが、"ポリプ体"はさらに僅少で僅か0.3〜0.5mmという種も。
  北水母
アラスカ中心に棲息しているようだが、北海道の厚岸でも見つかる。

これを踏まえると、奇妙な名前の種があるのも納得がいく。"ポリプ体"の話なのである。
  片手人形
操り人形の用語ではなく、片手を挙手している人形のように見えるヒドラということ。("クラゲ体"はどうなっているかは情報がみつからないのでわからない。)つまり、1本の触手が筒状体躯から立ち上がっている"ポリプ体"ということ。
ただ、それ以上に注目すべきは、このポリプの棲息場所。
化粧白鳥(二枚貝 円簾貝類)に根を下ろすのだ。貝の捕食者もポリプの刺胞毒に驚いて手を出せないということで、警護役として働いている訳だ。熱帯では、よくあることだが、宿主と寄生者の特別緊密な関係が成立しているのである。
(宿主としては、冬葉桜貝(二枚貝 日光貝)、雲母貝(二枚貝 豆胡桃貝類)との指摘もあるから、それぞれ別の種である可能性もあろう。)

と言うことで、ザッと"淡水水母"を眺めて来た訳である。

【刺胞動物/Cnidaria
花虫/Anthozoa…ポリプ型(珊瑚, 磯巾着)

Jellyfish/Medusozoa
┼┼ヒドロ虫/Hydrozoa
┼┼┼淡水水母Limnomedusae
┼┼┼-Armorhydridae
┼┼┼┼○Armorhydra
┼┼┼┼┼(janowiczi)
┼┼┼-Microhydrulidae
┼┼┼┼○Microhydrula
┼┼┼┼┼(pontica)
┼┼┼┼○Rhaptapagis
┼┼┼┼┼(cantacuzenei)
┼┼┼-Monobrachiidae
┼┼┼┼○Monobrachium・・・カタテニンギョウ類
┼┼┼┼┼片手人形(parasitum)
┼┼┼-Olindiidae
┼┼┼┼○Craspedacusta・・・マミズクラゲ類
┼┼┼┼┼真水水母/桃花扇/Freshwater Jellyfish(sowerbyi)
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼→[2018.3.2]
┼┼┼┼┼伊勢真水水母(iseana)
┼┼┼┼┼┼┼…1921年師範学校内井戸での発見のみ
┼┼┼┼○Astrohydra
┼┼┼┼┼夢ノ水母(japonica)
┼┼┼┼┼┼┼…1985年実験室内で発生[0.5mm]のみ
┼┼┼┼○Eperetmus・・・キタクラゲ類
┼┼┼┼┼北水母(typus)
┼┼┼┼○Gonionemus・・・カギノテクラゲ類
┼┼┼┼┼鉤ノ手水母(vertens)→[2018.3.3]
┼┼┼┼○Scolionema・・・コモチカギノテクラゲ類
┼┼┼┼┼子持鉤ノ手水母(suvaense)
┼┼┼┼○Maeotias
┼┼┼┼┼汽水水母(marginata)
┼┼┼┼○Olindias・・・ハナガサクラゲ類
┼┼┼┼┼花笠水母/Flower hat jellyfish(formosa)

(イラスト) (C) イラスト沖縄

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