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水母の話  2018年3月14日

やぐちくらげ の話

  目立ってる 蛍光色で 泳ぐ様
蛍光を出す本流は、あくまでも珊瑚の仲間だと思う。

ノーベル"化学"("生物"ではない。)賞受賞対象の研究題材になったGFP(緑色蛍光蛋白質)を提供したということで、一躍時代の寵児になった感がある御椀水母[→]は、エイレネ水母[→]と同じ、ヒドロ虫【軟水母】に属す。

生物の発光は珍しいものではなく、たいていは酵素反応。この場合は、そのようなまどろっこしいことではなく、紫外線を可視光の青色光に変換し、その光線が緑色発光体を励起して緑色光が生まれるという仕組み。面倒な2段階戦術。
よく知られているように、同じ刺胞動物の珊瑚や磯巾着には蛍光を発する種が目立つ。従って、この手の発光を始めたのは、おそらくそちらだろう。・・・
花虫…固着"ポリプ体" (珊瑚、磯巾着、等々)
└┬ヒドロ虫…"ポリプ体"優勢
┼┼┼┼◆【軟水母】
┼┼
┼┼└┬鉢虫…"クラゲ体"優勢
┼┼┼└─箱虫 十文字水母

そう考えるのは、極く自然なこと。グリーンは海洋でももっともポピュラーな蛍光タンパクの色(Blue, Cyan, Green, Yellow, Orange, Red, FarRed)であり、それは葉緑素の色を暗示しているからである。そのコトをじっくりと考えてみるべきだと指摘したのはかのダーウィン。
It is remarkable that in all the different kinds of glowworms, shining elaters, and various marine animals (such as the crustacea, medusae, nereidae, a coralline of the Clytia, and Pyrosma), which I have observed, the light has been of a well-marked green colour.(「緑色の放射管が特徴的。
海の動物(甲殻類, クラゲ, ゴカイ,
ウミコップ属のサンゴ および ヒカリホヤ)のなかで光が判然と緑色であるのは注意すべきだ。」[内山賢次訳]Charles Darwin:"THE VOYAGE OF THE BEAGLE"The Project Gutenberg 2013)

ということで、海コップについて眺めてみたい。
分類上は、珊瑚の花虫ではなく、クラゲ系のヒドロ虫である。つまり、見かけはどうみても"ポリプ体"でしかないが、"クラゲ体"を産むということ。

マ、浅海岩礁珊瑚については、何故に蛍光グリーン光線を発する必要があるかは、素人でも推定がつく。
共生藻類にとって一番こまる強い紫外線を吸収し、光合成に魅力的な光線を出すことになるのだから。藻類が弱ってしまえば、珊瑚は途端に白化し、早晩、砂と化すことになるから死活的な機能とも言えよう。

深海でも、この論理はそのまま通用する。
ただ、浅海では光が当たる上側に蛍光蛋白質が配置され、深海では残光を使うから下側になるだろう。・・・
"太陽光がわずかにしか届かない中深度の海で、黄色や橙色、赤色に輝く蛍光サンゴが発見された。これらのサンゴは自ら光ることで、共生藻類に足りない光を補充しているのかもしれない。"ということ。
深海は浅海とは違い、藻類にとっては緑色より赤色の方が効率がよいということだと思われる。[Allie Wilkinson:"Radiant reefs found deep in the Red Sea--Corals may glow yellow, orange and red to improve light conditions for algae."NATURE 24 June 2015]
尚、参考に、花虫の珊瑚のほんの一部に過ぎないが、気になった種をいくつかピックアップしておいた。

さて、GFPの御椀水母だが、分類を眺めると、軟水母[有鞘]で同じではあるものの、"ウミコップ"とは少し離れて種のようだ。
そういう点では一番近いクラゲ名はこちら。
  八口[ヤグチ]水母

ヤグチは人名ではなく、口多数ということからの命名と勝手に推測した漢字記載である。
そう考えたのは、このクラゲ、身体を分裂させてクローン増殖するというから。"クラゲ体"だが、万能細胞からなる"ポリプ体"のようなもの。
蛍光を発する必要などなさそうだが、珊瑚の真似か。互いに認知するためとも思えないが、光ると喰われる可能性が減るのかも。食ったところまでは良いが、自分が光ったりすれば、注意を引くことになりターゲットにされかねない訳で。

なかなか面白い生物である。危険に遭遇し自切で逃亡というのはよくわることだが、増殖にその手を使うとは。そんなこともあるのか、どの辺りが魅力なのかはわからぬが、クラゲ飼育ファンは育てて見たくなる手の種のようだ。水産業界誌に記事が掲載される位だから。
[秋山仁:"養殖技術講座 ―クラゲ類の繁殖・展示― ヒドロ虫綱とクシクラゲ類の繁殖技術(ワタゲクラゲ、ヤクチクラゲの一種など)"「養殖ビジネス」緑書房 2017年4月号]

🚰 幼児でも すぐに学ぶは コップ飲み

と言うことで、前段を終わり、海コップを眺めてみよう。
一番知られている種はコレ。
  房海コップ

もちろん、"ポリプ体"のヒドロに注目している訳である。
その根は海藻の表面を這ってしまう。そして、所々から茎を立てて、枝分かれし、数多くの莢を付ける訳だ。(有鞘ということ。)それが、コップ型。
そこに口があるのだが、十数個の歯があるそうだ。

形が少々変わると、名前もコップではなくなる。
  海盃

形状的には毛皮に似ているとも思えないが、俗称"Sea fur"。
  尖葉オペリア
植物的には見えないということで、オベリアとなったのだと思われる。しかし、軟水母[有鞘]は、茎を立てて、莢を造るのだから構造的には植物とよく似ていると言えよう。
だが、一番の特徴と言えば、生殖用の茎ができる点では。"ポリプ体"と"クラゲ体"の間に、も1つの世代がある訳だ。

【刺胞動物/Cnidaria
花虫/Anthozoa…ポリプ型(珊瑚, 磯巾着)
┼┼六放珊瑚Hexacorallia
┼┼《石珊瑚Scleractinia》(造礁珊瑚)
┼┼-Acroporidae
┼┼┼○Acropora・・・ミドリイシ類
┼┼┼┼緑石(studeri) шCyan
┼┼┼○Momtipora・・・コモンサンゴ類
┼┼┼┼グリセアコモン珊瑚(grisea) жGreen
┼┼-Lobophylliidaeオオトゲサンゴ
┼┼┼○Echinophyllia・・・キッカサンゴ類
┼┼┼┼菊花珊瑚/Chalice coral(aspera) шGreen:Dronpa
┼┼-Trachyphylliidae
┼┼┼○Trachyphyllia・・・ヒユサンゴ類
┼┼┼┼[ヒユ]珊瑚 or 大花珊瑚/Open brain coral(geoffroyi)@深場
┼┼┼┼┼┼┼┼шRed&Green:Kaede
┼┼-Mussidae
┼┼┼○Favia・・・キクメイシ類
┼┼┼┼菊目石(speciosa)
┼┼-Poritidaeハマサンゴ
┼┼┼○Goniopora・・・ハナガササンゴ類
┼┼┼┼花笠珊瑚(lobata)
┼┼《角珊瑚Antipatharia》
┼┼《骨無珊瑚Corallimorpharia》
┼┼《磯巾着Actiniaria》
┼┼《花磯巾着Ceriantharia》
┼┼《砂巾着Zoantharia》
┼┼八放珊瑚Octocorallia
┼┼《Alcyonacea》
┼┼{海鶏冠Alcyonacea}
┼┼-Alcyoniidaeウミトサカ
┼┼┼○Sarcophyton・・・ウミキノコ類
┼┼┼┼海茸(aculangulum) жGreen
┼┼┼┼海鶏冠/soft coralleatherly coral
┼┼-Nephtheidaeチヂミトサカ
┼┼-Nidaliidaeタイマツトサカ
┼┼-Paralcyoniidaeカクレトサカ
┼┼-Xeniidae ウミアザミ
┼┼{石灰軸Calcaxonia}
┼┼{角軸Holaxonia}
┼┼{石軸Scleraxonia}
┼┼{海蔦Stolonifera}
┼┼-Clavulariidaeウミヅタ
┼┼┼○Pachyclavularia
┼┼┼┼Green star polyps coral(violacea)
┼┼《青珊瑚Helioporacea》
┼┼《海鰓Pennatulacea》
┼┼-Renillidae
┼┼┼○Renilla
┼┼┼┼海椎茸/Sea pansy(reniformis)

Jellyfish/Medusozoa
┼┼ヒドロ/Hydrozoa
【Leptolinae】
┼┼┼水母[有鞘]Leptomedusae (=Thecaphorae or Thecatae)
┼┼┼《Conica》
┼┼┼{---}
┼┼┼-Aequoreidae
┼┼┼┼○Aequorea・・・オワンクラゲ類
┼┼┼┼┼御椀水母(coerulescens)
┼┼┼┼┼火灯[ヒトモシ]水母(macrodactyla)
┼┼┼┼┼台湾御椀水母(aiwanensis)
┼┼┼┼┼Crystal jellyfish(victoria)
┼┼┼《Proboscidoidea》
┼┼┼-Bonneviellidae
┼┼┼┼○Bonneviella・・・ツリガネガヤ類
┼┼┼┼┼釣鐘萱(grandis)
┼┼┼-Campanulariidae
┼┼┼┼○Gastroblasta
┼┼┼┼┼八口[ヤクチ]水母(chengshanensis)
┼┼┼┼┼(raffaelei)
>┼┼┼┼┼(timida)
>┼┼┼┼○Campanularia・・・ウミサカヅキガヤ類
┼┼┼┼┼アフリカ海盃萱(africana)
┼┼┼┼┼相模海盃萱(brachycaulis)
┼┼┼┼┼足長海盃萱(caliculata)
┼┼┼┼┼縦筋海盃(groenlandica)
┼┼┼┼┼インド海盃(indopacifica)
┼┼┼┼┼ヨレ海盃(volubilis)
┼┼┼┼○Clytia・・・ウミコップ類
┼┼┼┼┼姫海コップ(delicatula)
┼┼┼┼┼小皿水母(discoida)
┼┼┼┼┼(folleata)
┼┼┼┼┼丸葉海コップ(gigantea)
┼┼┼┼┼細襞海コップ(gracilis)
┼┼┼┼┼Gregarious jellyfish(gregaria)
┼┼┼┼┼(hemisphaerica)
┼┼┼┼┼房海コップ(languida)
┼┼┼┼┼枝海コップ(linearis)
┼┼┼┼┼子持ち沖海コップ(mccradyi)
┼┼┼┼┼廓海コップ(multiannulata)
┼┼┼┼┼斜葉海コップ(obliqua)
┼┼┼┼┼二重海コップ(paulensis)
┼┼┼┼┼オーストラリア海コップ(serrulata)
┼┼┼┼○Obelia・・・オベリア類 (Sea fur)
┼┼┼┼┼痩オベリア/Sea thread hydroid(dichotoma)
┼┼┼┼┼枝太オベリア/Bell hydroid(geniculata)
┼┼┼┼┼ヒラタオベリア(plana or longissima)
┼┼┼┼┼支那オベリア(chinensis)
┼┼┼┼┼尖葉オベリア(oxidentata)
┼┼┼┼┼Doubletoothed hydroid(bidentata)
┼┼┼┼○Orthopyxis
┼┼┼┼┼鋸コップ萱(crenata)
┼┼┼┼┼ヒラタ足長コップ萱(platycarpa)
┼┼┼-Phialuciidae

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