[→鋏角類目次] [→蜘蛛目次] "! ■■■ 2018年5月5日 ■■■ Spitting spider吐いた唾 自分に返って 来ないのか 口から糸を吐くことで有名なのが山城蜘蛛の仲間。 特技と見る人も多いが、蚕に代表される蛹化昆虫は粘液吐出という紡糸作業をいとも簡単に行っており珍しいものではない。 たまたま蜘蛛というが生物概念が"糸出虫"であるため、そのオドロオドロした印象にのって、"凄いゼ!"という気分で見てしまうに過ぎまい。この糸は、身体の後端にある糸腺⇒出糸疣の機構とはなんら関係ないからだ。要するに、牙から餌に入れ込む毒唾液に粘着性物質を加えて飛ばしているにすぎないと言うこと。 ただ、そんな機構を保有するという点では、蜘蛛一家としては確かに異端と見なされても致し方ない。 しかしながら、徘徊能力向上を図る流れに乗れば、細くて長い脚での歩行を始めることになるだろうし、そうなれば毒入り絡み糸飛ばし機構を装備する方針は自然なコト。 マ、そう思うのは、ヒトの唾も糸を引く訳で、空中で急速に固化する淡泊系組成にすれば、ダイス状吐出口を作れそうなムシならそう難しいことではさそうに思えるから。蜘蛛の場合、神経毒と消化用酵素が入った唾を刺した牙から獲物に注入する機構があるのだからなおさら。 しかし、よく考えると、そう簡単でもなさそうだ。 吐く唾を捕獲に使うためには、とてつもなく強力な皮膚浸透毒が必要だが、対象餌の外皮はかなり厚い訳で。従って、運動能力を奪う粘着性物質で肢を包む必要があるが、このためには遠くに撒きながら飛ばす能力が必要となる。 蜘蛛には、体外消化反応済の液体をゆっくり吸い込む筋力はあるものの、液体を一気に吐出するために唾嚢を強力かつ急速に締め付ける力は持っていそうにないからだ。 できない算段ではないが、体内の合理的構造を旨とする蜘蛛にとっては余り魅力的とは思えない。 しかし、武器のオプションとしては、実際のところ、そう悪くない手なのかも。 唾吐きに関しては、大先輩の「鉤虫」[→]がいるからだ。・・・ 標的目がけて水圧ポンプ的に高速で液体を吐出すると、自動的に左右に振れるので、餌を上手に粘液物質で被うことができるのだ。 山城蜘蛛も同じような機構だと見てよかろう。 結局のところ、物陰に隠れていて、極く近辺にやってきた餌を頂戴するという生き方の一種と言えそう。 神経毒ありと言っても、急所注入なら即効ありだが、咬み付きに失敗して懲りたため、直接武闘を避けたのであろう。 そう考えるのは、姉妹種は神経毒から細胞壊死毒に変更しているからだ。これなら、急所でなくとも注入した途端に甚大なショックを与えることができ、すぐには死なないものの網に引っ掛かっている状態なら対抗意欲喪失効果は大きかろう。 鋏角類 《蜘蛛 Araneae》 │ │┼┼中疣…出糸疣が腹の中ほどに存在 │┌──【古代風 Mesothelae】 ││┼┼◆Liphistiomorpha 腹節蜘蛛と木村蜘蛛を代表とする群 └┤ ┼│┌─【原始的 Orthognatha】…真っ直ぐの牙顎類 ┼││┼◆Mygalomorphae ┼││┼┼┼│┌─《Fornicephalae 戸立蜘蛛と地蜘蛛を代表とする群》 ┼││┼┼┼└┤ ┼││┼┼┼┼└─《Tuberculotae 漏斗蜘蛛とタランチュラを代表とする群》 ┼└┤後疣…出糸疣が腹の後端に存在 ┼┼│ ┼┼│↓脱地中穴棲 ┼┼│ ┼┼└─【新生型 Opisthothelae】…二軸鋏型牙類(Labidognatha) ┼┼┼┼◆Araneomorphae ┼┼┼┼┼┼└┬─《Paleocribellatae 古篩板類(単性域類有篩板)》 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼├─《Austrochiloidea》<Neocribellatae新篩板類>基底的群 ┼┼┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼┼┼│┌《Haplogynae 単性域類篩板退化》…性器単純 ┼┼┼┼┼┼┼└┤┼┼↓ ┌───────│──┘ │┼┼┼┼┼┼┼└《Entelegynae 完性類》…性器複雑 │ │┼┼┼┼【Caponioidea】 │┼┌────Caponiidae 酸漿[カガチ]蜘蛛 │┌┤ │││┼┼【Tetrablemmidea】 │││┌───Tetrablemmidae 蛇腹蜘蛛 ││└┤ ││┼│┼┌─Oonopidae 卵蜘蛛,蜱蜘蛛,跳蜘蛛 ││┼│┌┤ ││┼││└─Orsolobidae 双爪猪蜘蛛 ││┼└┤【Dysderoidea】 ││┼┼│┌─Dysderidae 猪蜘蛛 ││┼┼└┤ ││┼┼┼└─Segestriidae 閻魔蜘蛛,宮蜘蛛 ││┼┼│ ││┼┼└──Trogloraptoridae └┤ ┼│┼┼┌──Pholcidae 幽霊蜘蛛,シモン蜘蛛 ┼│┼┼│ ┼│┌─┤【Pholcoidea】 ┼││┼│┌─Diguetidae 琴蜘蛛 ┼││┼└┤ ┼││┼┼└─Plectreuridae 口子蜘蛛 ┼└┤ ┼┼│┼┌──Ochyroceratidae 猿猴蜘蛛,冠蜘蛛 ┼┼│┌┤【Leptonetoidea】 ┼┼│││┌─Leptonetidae 猿[マシラ]蜘蛛 ┼┼││└┤ ┼┼└┤┼└─Telemidae 八木沼蜘蛛 ┼┼┼│ ┼┼┼│┼【Scytodoidea】 ┼┼┼└─┬─Sicariidae 糸蜘蛛 ┼┼┼┼┼├─Scytodidae 山城蜘蛛 ┼┼┼┼┼├─Drymusidae 彩[アヤ]蜘蛛 ┼┼┼┼┼└─Periegopidae 棘抜閻蜘蛛 【新生型蜘蛛類 Opisthothelae】 (後疣…出糸疣が腹の後端に存在) ◆Araneomorphae 《Haplogynae 単性域類篩板退化》 【Scytodoidea】 -Sicariidae Recluse spider【造網-籠状】 ○Loxosceles・・・イトグモ類 糸蜘蛛 Fiddle-back spider (rufescens) …バイオリン斑紋 毒糸蜘蛛 Brown recluse spider(reclusa)@米州▲毒[細胞壊死タイプ] Mediterranean recluse spider(rufescens)▲毒[細胞壊死タイプ] ○Sicarius Six-eyed sand spider(hahni)▲毒 -Scytodidae Spitting spider @汎世界(除外:豪州,NZ) [6眼] ○Scytodes・・・ヤマシログモ類…口から粘液を吐く 山城蜘蛛(struatuoes)【徘徊】 黒山城蜘蛛(fusca)【造網-漏斗状】 浴衣山城蜘蛛(thoracica)【徘徊】 (thoracica)@北半球広域 -Periegopidae Periegopid spider [6眼] ○Periegops・・・トゲヌキエンマグモ類 (suteri)@NZ南島 -Drymusidae False violin spiderアヤグモ ○Drymusa@南ア,カリブ海島嶼【造網】 「鋏角類」の目次へ>>> 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |