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前口動物

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■■■ 2017年12月1日 ■■■

くまむし…

Worm[→]を前口動物群で考えたが、汎節足類を除外してしまったから、そのなかで無間接の足を持つ類について触れておこう。

┌──────珍無腸[→]
左右相称
├─後口動物群
│┌─────毛顎[→]
└┤前口動物群
┌───線形, 類線形, 鰓曳, 動吻, 胴甲
│┌┤脱皮/Ecdysozoa
│││┌──有爪動物/Onychophora (Velvet worm)
││││
││└┤汎節足//Panarthropoda
│││┌─緩歩動物/Tardigrada (Water bears)
││└┤Tactopoda
││┼┼└─節足動物/Arthropoda
││┼┼┼┼┼舌形 or 舌虫/Pentastoma (Tongue worm)
└┤
┼┼└───顎口, 微顎, 輪形, 鉤頭
┼┼┼┼┼┼腹毛, 扁形, 菱形, 直泳
┼┼┼┼┼┼有輪, 軟体, 腕足, 箒虫, 内肛, 外肛, 紐形, 環形
「進化と分岐の考え方[続 附録]」(2017.11.24)

先ずは、名称が余り知られていない緩歩動物/Tardigradaだが、脚はあってものんびり歩くという意味であるとなれば、微小動物(0.3〜1mm)である熊虫/Water bearを指すのだろうと、推定できよう。
4対の短い脚を持つ紡錘形で所謂日陰者だが、どういう訳か可愛いとされている。

熱帯から極域、深海から高山、はては温泉まで、世界中に存在しており、1,000種を越える、もちろん、市街地の苔にも。基本は海中での生活で、陸上では蘚苔類の隙間棲であり水中類似環境と見てよさそう。
有名になったのは、陸棲種が冬眠ならぬ、"乾眠(クリプトバイオシス)"能力を持っていたから。(蛋白質・糖鎖・水が基本成分の液体と固体が混在する状態から、生物標本作成の如く、一気にガラス状態に持ち込んで細胞を固定化させるのであろう。)
乾燥体になり乾眠に入ると、高線量放射線・超高圧・超低温・真空環境に耐えることができるようだ。生き残る割合はよくわからないが。
ともあれ、驚異的生物として度々紹介され、耳目を集めてきた。(熊虫すべてがそんな能力を持っている筈はなく、水中棲種は乾燥すると即死だろう。)

しかし、小生から見れば、その強靭さそのものより、その能力を身に着けた理由の方が衝撃的。
なんと、全く異なる世界の生物に由来する外来遺伝子が含まれているというのだ。その割合が半端ではない。
 細菌(16%)
 菌類(0.7%)
 植物(0.5%)
 古細菌(0.1%)
 ウイルス(0.1%)

(出典) "「最強生物」クマムシ、衝撃のDNA構成が判明" Nikkei National Geographic 2015.12.02
乾眠でDNAが断片化し、復活の際に外来断片が紛れ込んだと考えるしかなさそう。トンデモない現象である。
1,000種を越えているが、わかり易い視点での分類だ。と言っても、1mm未満の小好物の爪を調べるのだから、凡人には耐えきれぬ労苦が必要そうだが。・・・
【真熊虫】Eutardigrada…無突起 淡水棲/陸上棲がほとんど
 近爪/Parachela
 -Hypsibiidae
  ○Halobiotus
 遠爪/Apochela
 -Milnesiidae
  ○Milnesium・・・オニクマムシ類
   鬼熊虫(tardigradum)
【異熊虫】Heterotardigrada…前端突起 鎧的外皮 海水棲がほとんど
 節熊虫/Arthrotardigrada
 棘熊虫/Echiniscoidea
 -Echiniscidae
  ○Echiniscus
   Madonna's water bear(madonna)@ペルー
      …マドンナのように強靭なのだろうか?
【中熊虫】Mesotardigrada
      ……論文記載のみ(温泉熊虫@雲仙温泉)[採取実態無記録]
ほんの一部しか記載していないが、細かくは、Webナショジオ【連載】「クマムシ観察絵日記」(柄と文:堀川大樹)を閲覧するのが一番。[→(C)Nikkei National Geographic]
オ〜!、"ある愛の記録”だそうな。
最強は横綱熊虫@札幌市豊平川の橋上の苔中だとか。都内では、下水熊虫や帝長命虫@皇居が発見されている。ご自宅に苔が生えている場所があるお方は、探せば一匹くらいにはご対面可能ではないか。一度、ご挨拶しておいた方がよかろう。

お次は、有爪動物こと鉤虫。
熊虫より爪が目立つ訳だ。と言うより脚だらけ。
脚に間接が無いだけで、体節が目立つから、節足動物の姿にもう一歩というところ。と言っても、間接が無いから筋肉で直接動かす訳ではなく、水圧ポンプで動かすような機構だろうから、その差は結構大きそう。

特徴として忘れてならないのは、粘液である。どの動物も、分泌物がある訳だが、この動物はふっかけて狩りをするらしい。なかなか怖そうな生物である。
"Secrets of Velvet Worm Slime" (C) New York Times@Yotuve2015/03/31

分類は化石もいれるとこんなところか。(素人のいい加減な編纂なので割愛と間違いだらけなのはご容赦の程。)
【鉤虫】Onychophorida or Udeonychophora
 鉤虫/Euonychophora
 -Peripatidae
  ○Peripatus・・・ペリパツス類
   "Solóoazano's velvet worm"(solorzanoi)
     @コスタリカ…全長22cm
 -Peripatopsidae (Southern velvet worm)
  ○Peripatopsis・・・ペリパトプシス類
 ◆[化石]昔鉤虫/Protonychophora
 -Aysheaidae
  〇Aysheaia・・・アイシェアイア類【バージェス】
 -Xenusiidae
  〇Xenusion
  〇Siberion
  〇Hadranax・・・ハドラナックス類【シリウスパセット】
  〇Diania・・・ディアニア類
   "Walking cactus"(cactiformis)
     「新種の古代生物“歩くサボテン”を発見」
    (C)Nikkei National Geographic 2011.02.24
 -n.a.
  〇Onychodyction・・・オニコディクティオン類【澄江】
[化石]葉足動物】Lobopodia)
 ◇Scleronychophora
 -Eoconchariidae
  〇Microdictyon・・・ミクロディクティオン類【澄江】【シリウスパセット】
 -Hallucigeniidae
  〇Hallucigenia・・・ハルキゲニア類【バージェス】【澄江】
   細長い胴体の背中には長い刺7対
   脚は10対
(3対は細く無爪)
   無触角単眼
   口腔内に鱗片状の歯

(M.Smith, et al.:"Hallucigenia's head and the pharyngeal armature of early exdysozoans" Nature 523, 2015)
  〇Collinsium・・・コリンズ・モンスター類
   (ciliosum)
     "5億年前の奇妙な新種化石を発見、全身トゲだらけ
    カンブリア紀の「パワーアップしたハルキゲニア」"
    (C)Nikkei National Geographic 2015.07.02
    "Newly-discovered 'ring of teeth' helps determine
    what common ancestor of moulting animals looked like"
    University of Cambridge News 24 Jun 2015
 -Cardiodictyidae
  〇Cardiodictyon・・・カーディオディクティオン類【澄江】
 ◇Archonychophora
 -Luolishaniidae
  〇Luolishania・・・ルーリシャニア類【澄江】
  〇Miraluolishania
 -Paucipodiidae
  〇Paucipodia・・・パウキポディア類【澄江】
◇n.a.
  〇Facivermis・・・ファシバーミス類(Torch worm)【澄江】
   先端に数本の触手


最期に舌虫を取り上げよう。

胴体は、対の脚付き節構造だから節足動物によく似ているが、脚に間接が無い。にもかかわらず、節足動物所属になっているところを見ると前駆的な扱いなのだろう。
爬虫類や哺乳類の肺や鼻腔に寄生しているらしい。
分類的には、・・・
節足動物《甲殻類》
顎脚
/Maxillopoda
  ケファロバエナ/Cephalobaenida
  ポロケファルス/Porocephalida
尚、顎脚系の代表格はこちら。似ているとは思えないが。
  鰓尾/Arguloida
   "金魚蝨"
[チョウ] or 魚虱/Argulus japonicus

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