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2004.1.2 |
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ファーストフードの先行き…ハンバーガー市場が飽和してきたようだ、と述べた。→ 「ハンバーガー文化の転換点」 (2004年1月1日)
市場は何時か成熟する。 伝統食でさえ衰退することがあるのに、同じものばかり食べ続けて、飽きが来ない筈はない。ハンバーガーは、今その転回点にさしかかっていると思われる。 もともと、ファーストフードの対象食は、ハンバーガーだけではない。しかし、ハンバーガーのサービス業務プロセス(食材調達/調理/包装/提供/後処理)が群を抜いて優れていたから、他の食が広がりようがなかった、と見ることもできる。 「パン+肉調理品+ドリンク」なら、工夫すれば、安価な食材でも品質担保が可能だ。しかも、僅かな手間で調理感を与えることができる。従って、ハンバーガーには、もともと、グローバル化の条件を満たす素地があったのだ。 (一度市場を拡大してしまえば、圧倒的な規模の経済が働くから、巨大企業が生まれるのは当然といえる。) ところが、1990年代に入り、他の食も、競争力が発揮できるサービスの仕組みを考案してきた。このため、1食300円は珍しくなくなった。ハンバーガーのコスト競争力は相変わらず強いが、競争相手も十分戦えるまでに力をつけたのである。お蔭で、ファーストフード市場の競争は一挙に激化した。 今や、ファーストフード化可能そうな、めぼしい食は、ほとんど試された、と言って間違いあるまい。様々な食が登場し、淘汰されたのである。 それでも、地方色が訴求できるファーストフードや、斬新なシステムの導入といった挑戦が続く。今後も、様々なファーストフードが入れ替わり立ち代り登場するだろう。 1990年代は、このようなファーストフード業界内の競争の激化に加え、他業種との戦いも熾烈化したことが特徴といえる。調理済みの安価な食を販売するコンビニや、弁当販売業が、その力を伸ばしたのである。ファーストフード市場は、この両者に相当程度、侵食されたと思われる。さらに、出歩く手間を惜しむ人が、かなり宅配に流れたと思われる。 このように、消費者の選択肢は益々広くなっている。この競争で、食やサービスの質が向上してきた上に、価格も低下傾向にある。 このような競争を見ていると、ファーストフード店の本質とは、便利な場所で食べれることかも知れないという気になってくる。もしそうなら、このような需要が乏しい小商圏でのファーストフードが繁盛する可能性は低いかも知れない。 要するに、ファーストフード業界は存在意義を問われ始めたのである。 なかでも、今まで切り拓いてきた、「安価で早い」というコンセプトへの疑問が発生している点に注目すべきだろう。もしかすると、ファーストフードの魅力が失われつつあるかもしれないからだ。 お金と時間の余裕がある人が増えており、こうした人々感は、「心地よい雰囲気と美味しくて健康」を重視している。納得できる価格なら、必ずしも安価である必要はなくなってきたのである。 ファーストフード業界は、このニーズに応えて大変身するか、「安価で早い」サービスにこだわり続けるかが問われている訳だ。 前者に走れば、おそらくコスト高を招くだろう。そうなると、価格上昇で、安価を望む顧客を失うことになりかねまい。コスト構造が変わり、売上減で沈没する可能性さえある。と言って、安価なままで、このニーズに応えるのは相当難しい。どう考えてもイノベーションが必要なのである。 もし、革新的なシステムを生み出すことができれば、全国津々浦々まで、健康ファーストフードが広がるかもしれない。 一方、従来型ビジネスにこだわり続けても、ブランドを確立しているなら、楽勝かもしれない。さらなるコスト削減を図ればよいからだ。規模拡大を止め、資本収益率の高い事業を目指すことになる。 その利益で、勃興するニーズに応えた新事業創出に賭けることになる。 そうなると、消費者の支出レベル毎の業態開発を進めるしかあるまい。 これは、日本が米国型社会に近づくことを意味する。外食サービスが、顧客の収入階層で分化することになる。 業界がどちらに振れるのか、現時点ではまだよく見えない。 と言うより、動きが見えた時は、日本が、中流中心社会のままでいるか、収入階層分化社会に変わるのか、はっきりわかるのだろう。 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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