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2004.11.2 |
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お洒落な林檎…リンゴについて素人談義をしてしまったが、実は、日本市場の話は刺身のツマで、話たいのは新品種の普及方法のやり方である。→ 「甘過ぎる林檎 」 (2004年11月1日) 世界を席巻している品種は、日本の果樹研究所(盛岡支場)が開発した「ふじ」である。 世界に誇れる素晴らしい成果だ。 ところが、その結果、日本のリンゴ生産業がグローバル競争力を高めたとは言いかねる。国内消費低迷を抑える力を発揮してようにも見えない。 せっかくの成果だが、産業の飛躍につなげる施策と連携しないのは、いかにももったいない感じがする。 ・・・と、現時点で批判するのは、余りに勝手すぎるだろう。 開発は昔のことだからである。なにせ、りんご農林1号なのである。(2) しかし、最近の新品種ではどうだろうか。
日本産としては、「東光」と「ふじ」の交配「千秋」、と「ゴールデン・デリシャス」と「紅玉」の交配「つがる」が登場している。 前者は、鮮やかな紅色で、薄い甘味と酸味のバランスが良いジューシーな小型リンゴである。 後者は甘く、晩生の「ふじ」に対する、早生の「つがる」として定番商品化が進んでいる。 とはいえ、一般消費者に、こうしたイメージはあるだろうか。味の違う品種といった程度ではあるまいか。 両者ともに、成功品種ではあるが、これでは、せっかくのチャンスを捨ててしまうことになりかねまい。 ・・・と考えるのは、学ぶべき成功例があるからだ。 それが、「Pink Lady」である。導入はまだ新しい。 ピンク色の美しい肌、甘くて、酸味もある品種と言われている。オーストラリア開発だが、オセアニアだけでなく、南仏/伊、南アフリカ、米国、南米でも作られている。 と言っても、広く作られていることに注目しているのではない。 厳格なライセンス体制を敷いて普及に努めている点が特徴なのである。 その体制を支えるのが、リンゴそのもののマーケティングである。 「Pink Lady」はブランドリンゴであり、高級品なのである。(もっとも、日本産のように桁違いの高級品という訳ではないが。) もちろん、対象市場は欧米である。 欧米では、生のリンゴをごろっと並べるだけの売り方が一般的だった。ここに、新しい売り方を持ち込んだのである。 女性を対象として、ファッショナブル性を訴求し、ヒット商品に仕上げたのだ。 ホームページ(3)を見ると、その方針が一目瞭然だ。ピンク色で飾られており、農産物の宣伝と言うより、若い女性への情報提供ページと言える。 これこそ、現代の、新品種浸透方法と言えるのではないだろうか。 農産物の特徴を語ったところで、インパクトは弱い。 コアユーザーを決め、その琴線に触れるポイントに絞って、訴求すべきなのである。 ただし、間違ってはいけない。 「Pink Lady」は「Golden Delicious」と「Lady Williams」の交配品種だが、単なる品種ではない。登録商標なのである。 ここが重要なポイントである。 同じリンゴでも、品質基準を満たせないと、販売する際に、この名称は使えないのである。 同じ品種でも、「Cripps Pink」となってしまう。ブランドイメージ維持を徹底している訳だ。 グローバル競争に晒されているのなら、当然の動きといえよう。 中国の生産能力急進で、過剰生産は見えている。こんな状況で、商品の特徴を打ち出せなければ、バーゲニングパワーを失い、小売に値段を叩かれるだけである。 生き残りのためには、ユーザーに嬉しさを与えるような商品に仕上げるしかないのである。 その鍵は新品種である。そして、その特徴を売り込む知恵が成功の鍵なのである。 --- 参照 --- (1) http://www.actahort.org/chronica/pdf/ch4303.pdf (2) http://fruit.naro.affrc.go.jp/kajunoheya/ikuseihinsyu/data/1hinsyuindex.html (3) http://www.pinkladyapples.co.uk/ http://www.pinkladyusa.com/recipes.htm 「食」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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