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2007.7.17
 
 


乾燥大根の話…

生きている ものの向こうに 干大根  吉賀三徳

 大根は日本では生産量最大の野菜だが、できすぎで、たびたび大量廃棄が行われてきた。いわゆる、国の緊急需給調整事業である。
 平成18年度の秋冬だいこんの廃棄量は3,400トン。(1)
 日本全国、大根といえば、育てやすく売りやすい青首総太大根ばかりだから、この状況は続きそうだ。
  → 「地大根は残るか 」 (2006年7月6日)

 もっとも、こうした廃棄は「もったいない」と批判されるため、出荷停止期間を設けることで、有効利用先への引き渡し可能性を探る仕組みを導入するらしい。(1)特別な利用アイデアがある訳でもないようだが。
 大根の場合は、すぐに思いつくものといえば、“切干”か、漬物原料としての“塩蔵”位のもの。1,000トン規模が流入しても対応可能な生産キャパシティがあるとはとうてい思えないし、難しい話だ。

 ちなみに、乾燥大根の2005年の輸入量は6,212トン(生鮮換算で6.2万トン)で、最近は減少しているようだ。(2)
 国内産の9割は宮崎県産だそうで、年産2,500〜3,000トン。(3)
 中国産とは価格で勝負にならないと思うが、よく頑張っている。

 素人からすると、干し大根市場はもっと伸びてしかるべきと思う。
 水で洗うだけで食べれるものはソウソウ無い。しかも、コリコリした食感は独特だ。
 “塩蔵”野菜を塩抜きして、風味付け液を滲みこませた漬物が売れるのだから、干し大根の即席漬物風が流行ってもおかしくない筈だ。
 なにせ、酢醤油と出汁に生姜や唐辛子を加えるだけで十分おいしい。甘いのが好きなら寿司酢に微量の酒もいけるのだから簡単そのもの。学校給食でも使えそうである。(4)

 もっとも、一口で、干し大根と言っても、作り方はいろいろあり、風味は大きく違うらしい。
 商品は、「切り干し」だけではないのだ。(5)

 と言うと、せん切り、薄切り、縦割り、といった形態分類と思う方が多いかもしれないが、作り方もイロイロなのだ。

 もちろん、よく見かけるのは、生の大根を切って、そのまま干すだけの商品。
 これに対して、熱処理後乾燥させた商品があるという。この処理で、弾力が保たれ、柔らかく、ふっくら感がでたり、味が濃くなるのがウリである。
 有名なのが、長崎県西彼杵半島の西海町の特産品「茹で干し大根」。
 これは、地場の大栄大蔵大根を使うことで知られている。(6)

 又、「蒸し干し大根」というものもある。味が凝縮されるせいか、非常に甘いのだという。煮物には好評のようだが、余り見かけない。
 切って干し、蒸して又干し、という手間がかかるものだから、当然高額になってしまう。置く店が限られているということだろう。

 そういえば、忘れてならないのが、極寒地域の定番モノ、「凍み大根」。土室に入れておいた大根を、皮を剥いて茹で、外気にさらすことでフリーズドライ処理するのである。
 味噌汁の定番だった筈だが、最近はあまり見かけなくなってきた気がする。
 それも無理は無い。根雪も無い暖冬だと作れないだろうし、スーパーに一年中生大根がならぶ状態だから面倒な作業をする人もいなくなる。
 しかし、そんな流れに抗して、プロモーション活動に力を入れる生産農家も少なくない。例えば、「へそ大根」。宮城県丸森町筆甫地区の特産品だ。(7)
 高野豆腐の煮込みが好きな人には嬉しい商品かも知れぬ。

 乾物こそ、日本の伝統料理の素材だ。
 乾燥大根にもっと人気がでてしかるべきと思うのだが。

 --- 参照 ---
(1) 第1回「野菜の緊急需給調整手法に関する検討委員会」資料 [2007.2.15]
  http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1030&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000019711
(2) 藤野信之: 「野菜輸入の動向と課題」 農林金融 2007年3月
  http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0703re1.pdf
(3) http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/chiiki/seikatu/miyazaki101/aji_hana/021.html
(4) [受賞作レシピ] 都城市立南小学校 6年 長谷川千悠さん・長谷川岳洋さん: 「切り干し大根のすのもの」
   http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/kyoiku/sports/kyushoku_con/m_5.html#04
(5) http://www.kiriboshi.com/syurui/syurui.htm
(6) 「グリーンチャンネル・アグリネット通信」vol.70 [2005.3.18]
  http://www.syskyo.or.jp/agrinet/magazine/back_050318.htm
  [Video: アグリネット]  http://str.syskyo.or.jp/agrinet/c_006/index.html#05
(7) http://www.miyagi.coop/coop/sanchoku/kakouhin/simidaikon.htm
(俳句の出典) 「かささぎの旗」 2007年6月10日 の引用から  http://tokowotome.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/index.html


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