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■■■■■ 2014.4.5 ■■■■■


の話

 塀低き 田舎の家や 葉鶏頭
 百姓の 秋はうつくし 葉鶏頭

    子規

  観賞用葉鶏頭はトリコロールが普通だが.


名前がカタカナの「バイアム」で漢字表記無しなのに、中国野菜とされている植物がある。正直、ビックリ。
誰が言い始めたのか知らぬが、音から考えて、ソリャ違うだろう。常識的にはインドネシア語の「Bayam」。日本語検索結果からではわからぬが。
中国語なら、「菜」。(大陸では"見"は簡略字化されて ""になるが。)日本語も、同じ漢字でよい筈だが、単に「」と呼ぶ方が自然だろう。そう、「ひゆ」である。

この野菜だが、中国から東南アジア一帯では別に珍しいものでは無い。もともと、ガンジス辺りが原産と言われている位で、熱帯域で元気に生育する植物だからだ。
日本は温帯だが、古くから渡来している植物であり、野菜の定番品になっていてもおかしくなかった。

実際、江戸期までは、結構、食されていたらしいし、種類もえらく多かったようである。極く近しい親類は鶏頭だが、こちらはもっぱら観賞用。日本人の美意識から見て、おそらく、派手な花が愛されたのではなく、「雁来紅」と呼ぶことで生まれる季節感が嬉しかったのだろう。さらに、葉もなかなか美しいではないかとの評価が加わる訳だが、こちらは現代的なものかも知れぬ。
ちなみに、観賞用とはこんなところ。
 ・鶏頭, 野鶏頭
 ・葉鶏頭[
雁来紅]
 ・千日紅, 黄花千日紅
 ・蔓野鶏頭
  -模様
  -赤葉千日紅

ところが、明治期に入ると、野菜「(ひゆ)」は綺麗さっぱり捨てられてしまう。理由のほどはわからぬが。

今頃になって、珍しい中国野菜ですゼと拡販し始めているようだが、なんともチグハグ。中国野菜人気に便乗というところなのだろう。
まあ、国内では野生化してしてしまい、栽培用の種も見つからない状況ということで、種はインドネシアから調達ということかナ。

そんな流行大好き文化を眺めていると、文明開化の掛け声と共に、ヒユは避けよう気分が持ち上がったのもわかる気がする。名称からの、大胆な推定にすぎぬが。

ヒユの英語名といえば、一般にはアマランサスだ。この名称を目にした途端、アレだなとなろう。そう、南米の雑穀。(尚、野菜系以外のヒユ類はたいていが南米原産のようだ。)
知名度が高いのは、2012年に、アマランサス推奨キャンペーン活動が世界的に盛り上がったからだと思う。そんなことがあったから、たまたま口にした方も少なくないかも。もしも、そういう経験がおありなら、俗称は「赤粟」としたくなろう。
ただ、これでは種が全く違ってしまうから拙い。従って、しいて名付ければ「紐鶏頭」。ただ、こうなると、いかにも観賞用植物臭い。

おっと、肝心な野菜ヒユから話がズレてしまった。

要するに、野菜ヒユは、葉鶏頭的な植物ということ。そこから派生したか否かはよくわからぬが。
それはともかく、葉鶏頭と聞くと、どうしても三色イメージになる。しかし、香港辺りで見ると、紅、白、青、紫と、色代わりはいくらでもあるようだ。もちろんのこと、緑モノはあるが、他の色も野菜として通用している。縁起かつぎもありそうな土地柄もあろうが。

しかし、こんな状況は中国での話。文明開化には、中国文化は無用である。
そこで、英名を見てみよう。
な、なんとPigweedとくる。ついでながら、Thorny Pigweedという種もあり、こちらは「針」。コレは野菜扱いにはならないようで、日本では、トウモロコシ農家の大敵の雑草。
コリャ、イメージ悪し。

欧州に追いつきたい一心の明治期、Pigweedを食べている人種などと呼ばれるのは、面白くなかろう。民族差別は食べ物から始まることが多いから、注意にこしたことはないし。
もっとも、欧州でも、地中海辺りでは中世までは、「犬」を野菜として喜んで食べていたらしいから、それほど気にかける必要もなかった可能性もあるが、妥当な判断だったとは言えそう。

・・・つまらぬことをダラダラと書いてしまったが、要するに、ヒユ食をお勧めしたいのである。

なんとなれば、葉野菜としての、「」は灰汁が少ないし、食べ易いから。
最近の分類学ではアカザ(代表はホウレンソウ)とヒユは同一グループになっているが、日本人はこの辺りには触手を伸ばそうとしない。この手の植物にタブー感はないだろうから、もっと積極的に取り入れたらよさそうに思うが、どうだろう。

それに、最も重要なのは、ヒユが熱帯性の植物である点。
つまり、夏に矢鱈に強い野菜なのである。葉野菜が欠乏してしまう時期に大量に供給できる訳で、素晴らしいではないか。

  ご参考→ 「野菜の素人的自然分類」 (2013.11.25)

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