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2000.6.19
 
 


遺伝子組換え農作物の創出レース…

 厚生省の遺伝子組換え農作物の安全性承認結果を見ると、技術の先行者がよくわかる。99年末までに認可された植物は、コーン、大豆、ナタネ、ポテト、綿花、トマト、甜菜の7種29品種だ。

 このうち大半は除草剤耐性品種。対象除草剤はアミノ酸系のグリホサート、グリホシネートという圧倒的なシェアを誇る製品である。(一部プロモキシニルやオオキシニルも)
 除草剤耐性品種に当該農薬散布を行えば、高い生産性の農業が実現できる仕組みが確立したのである。従って、大型製品を持つ企業が、自社農薬の耐性品種をつくりあげることができれば、市場の完璧な確保が可能になる訳だ。遺伝子組換え技術を利用することによって、強者と弱者が完全に仕訳されるのだ。

 除草剤耐性品種のほかに目立つのは、害虫耐性作物だ。蛾や甲虫に特異的に作用する遺伝子組換え品種である。除草剤耐性品種に力を入れている農薬メーカーは、こちらの品種も申請している。農薬メーカーは殺虫剤ビジネスから、種苗ビジネスへと力を移行させているようだ。

 以上の品種の申請者は外資系の農薬企業ばかりである。
 日本企業も研究を進めているとの報道も見かけるが、未だに、日本国内で認可を受けられるレベルに達していない。出遅れというより、現在のレースには参加していない状態といえよう。

 但し、日本企業の申請が1件ある。といっても開発者は米国のアグロ分野の遺伝子ベンチャー企業だ。この企業も、現在は米国大手農薬企業の傘下だ。内容は日持ちトマトである。米国で94年に販売された、アンチセンス遺伝子技術を用いた品種だが、日本では98年末に安全性確認されたもの。

 この分野は、完璧に、欧米の大手企業により制覇されている。先の厚生省のリストに登場するのは、米国系はモンサント(Monsanto、Northrup King、Calgene、DeKalb Genetics)、欧州系はヘキストとシエーリングが合同したアグレボ(Hoechst Schering AgrEbo、Plant Genetic System)とローヌプーラン(Rohne-Poulenc Agrochemie)、ノバルティス(Ciba-Geigy)である。(尚、99年発表であれば、デュポン/パイオニア・ハイブリッド・インターナショナル、ダウ・アグロサイエンスも潜在的にはリストアップされるべき企業といえよう。)
 製薬業界での、ヘキスト+ローヌプーラン合同や、モンサントの合併の動きにより、以上のアグロ業界企業も合併を進めることになる。業界の集中化はさらに進むから、技術も寡占化せざるを得ない。

 現在の対象作物はコーン、大豆、綿花が中心である。これにポテトや菜種(カノーラ)が加わって来た。今のところは、油糧・飼料作物といった原料系が中心だ。これから、穀物、果物、野菜が開いていくのだから、先はまだまだ長い。従って、技術が寡占化されるといっても、これ以外の企業にも出番はあるという声もある。ウイルス耐性品種や特定成分リッチな品種など、応用領域も広いから、事業機会は沢山あり、後発にもそれなりのチャンスが訪れると楽観視する人もいる。
 確かに、こうした分野で挑戦中の企業もある。しかし、多くのベンチャーは、底流で、上記の大手との連合体を模索している。というのは、遺伝子組換え品種開発だけで低コストが実現できるとは限らないからだ。特定の技術が優れていても、経済性発揮には、リーダー企業の技術にも依拠せざるを得ないのだ。
 アグロバイオ技術をベースとした産業が少数の大企業に集約される流れは益々強まる。

  (参考) 遺伝子組換え技術の意義をもっと訴えるべきだ…


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