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2005.5.17
 
 


自作スパコン流行の気配…

 パソコンサーバも安くなった。Pentium 4 (2.8GHz)にメモリー256MB、ハードディスク80GBを搭載して、¥49,800 (OS無)である。(1)

 とは言え、安定した高速処理が必要な人にとっては、安価なハードを集めただけの大型システムはまだまだ夢の世界だろう。
 パソコンのハード仕様はすぐに変わるから、どうしても様々な機種が同居することになり、トラブル発生対応は難しい。その際のリスクを考えると、安価なシステムにはなかなか踏み切れまい。

 こんな状況もあっという間に変わるかもしれない。

 先ずは、スーパーコンピュータ (HPC)の世界で、安価なパソコンの寄せ集めが流行そうな気配がするからだ。

 もちろん、相当前から、安価なパソコンを集めてHPCシステムを構築できることはわかっている。大学のラボの予算でも稼動可能だ。
  → 「大学のスパコン研究の実力向上 」 (2002年6月25日)

 しかし、これには大前提がある。
 コンピュータ専門家が維持するから動くのである。だれでもが簡単に使えるシステムとは言い難い。
 例えば、1台が一寸したトラブルをおこすだけで、その瞬間システム全体が不安定になるし、ハードの仕様が少し違う機種が紛れ込むだけでもタイミングが合わずに機能が発揮できなくなったりする。
 要するに、不安定なCPUを切り離して、即座に別なCPUにその負担分を振り替える作業を専門家が行っているから動くのである。

 安価なハードの寄せ集めだけではなかなか簡単に動かせないのである。
 そのため、結局のところ、HPCが必要な人は高価なHPCを購入せざるを得ない。人件費も含めたトータルで考えれば、その方がコストパフォーマンスがよいからしかたがない。

 ところが、2005年4月に発売されたApple Computer の新サーバOSのお陰で、この前提が変わるかもしれない。
 10クライアントで52,000円/499ドル、制限なしで98,000円/999ドルと、極めて安価という点もあるが、それ以上に重要なのは添付プログラムの方である。(2)

 このUNIX系OS上で、こなれたグリッド化プログラム「Xgrid 1.0」(3)が動くのである。UNIX用の定番は専門家向きだが、これはちょっとした知識だけで使えそうだ。
 もちろん、ラックに収まるApple 製純正サーバを使うためのOSになってはいるが、CPUの系列が同じだから、Apple のパソコンなら問題なく稼動するに違いない。
 素人でも簡単に試すことができる訳だ。

 ここがポイントである。

 Apple は垂直統合メーカーなので、もともとハードの設計思想が統一されている。つまり、多種のパソコンといっても、それほど多様ではない。しかも、100BASE/TのインターフェスだけのiMacやiBookでも、IP over FireWireを使えば無理なく400Mbpsのネットワークを構築できる。

 従って、安価なパソコンを集めてHPCシステムを構築しても、安定稼動は難しくないかもしれない。

 今までコンピューター・サイエンスに熟達した人達でなければなかなか取り組めなかったHPCシステム構築を、サーバをどうやら動かせる程度の人が挑戦できることになる。
 しかも、Apple Computer はiPodで収益力が上向いているから、大胆なマーケティング投資やサポート費用も負担できる。その気になれば、「Xgrid 1.0」を短期間に普及させることも夢ではない。

 ひょっとすると、Apple パソコン10台といった類の自作HPCがあちこちに登場するかもしれない。もし、お気軽に高速処理が実現できるとなれば、超安価HPCの登場は時間の問題だ。

 ・・・と考えると、「Xgrid 1.0」は産業界に強烈なインパクトを与える可能性を秘めていると言えそうだ。

 企業のエンジニアリング部門、インフォマティクスを道具としているラボ、映像編集分野の企業にとっては、高速処理コンピュータは不可欠な道具だ。HPCは何台でも欲しい。
 ここに超安価HPCが投入されたら、仕事の進め方は大きく変わるだろう。

 エンジニア・研究者1人にスーパーコンピュータ1台という夢の世界が現実化するかもしれない。

 --- 参照 ---
(1) http://club.express.nec.co.jp/store/server/index.html#tower1way
(2) http://www.apple.com/jp/server/macosx/
  http://www.apple.com/server/macosx/
(3) http://www.apple.com/acg/xgrid/


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