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2006.1.31
 
 


組み込みソフトの開発体制を考えるべき時

 インドのIT分野エンジニア活用を考えるべき時が来ているが、日本のモノづくり企業はこの流れにのることを躊躇しているように見える。それで勝てる戦略ができているのなら結構なのだが、心配である。
  → 「インド活用の重要性とは」 (2006年1月30日)

 もう少しこの分野を眺めてみよう。

 組み込みソフト開発にあたっては、アプリケーションに合わせて、CPUとOSの組み合わせを考えることになる。アプリケーションとハードの構成によって、反応の許容時間は様々だし、その重要性も異なるから、それに合ったOSを選び、そのOSに対応し易いCPUを選択するしかないのである。
 CPUの選択では、パソコンなら処理の平均値が重要だし、科学技術用なら最高性能が鍵を握るが、組み込み型はそうはいかない。
 最低保障値がすべてと言ってよいだろう。安全と信頼からいえば当然だ。

 このため、CPUはバラバラになりがちなである。OSもCPUに対応するから同じことになる。
 エンジニアもそれが当然と考えていた。

 しかし、競争が激しくなると、そうも言っていられない。高度なものを開発して差別化しないと、生き残れなくなってきたからだ。そうなると、機器メーカーとしてはアプリケーション開発に全精力をつぎ込むことになる。膨大な工数が必要だ。ところが、開発力は限られている。外部の力も活用できる、フレキシブルな体制にせざるを得ないのである。
 しかし、CPUもOSもバラバラであると、委託先は限られる。スキルを欠くエンジニアに任せたのでは、工数削減どころか、問題対応に忙殺されかねないからだ。
 こうなると、マイナーなCPUとOSを避けざるを得なくなる。

 と言って、単純にOSを変えたりはできないことが悩みの根源である。
 アプリケーションソフトで戦っているのに、他社とたいして変わらない製品になってしまい、競争力を落としかねないからである。
 そのため、思ったほどは標準化は進んでいない。
 Tornad / VxWorks / pRISM+ / pSOS 等々、様々なものが使われているそうである。

 しかしながら、携帯電話のCPUではいち早くARM系が勢力を伸ばしたように、CPUとOSの標準化が進む可能性は否定できない。
 そんな流れが強まれば、OSでは“Windows CE”系は有利である。組み込み用であるにもかかわらず、一般のWindows用のC++ やBasicの開発環境とほぼ同じだから、総合的な統一環境が始めから用意されているようなものだからだ。しかも、MIPS、SuperH、Strong ARMといったメジャーなCPUのシリーズに対応している。活用できるエンジニアが豊富であるから、使い易い訳だ。
 “Lynx RTOS”のようなUNIXライクなものも、x86、MC680x0、PowerPC 60x、MIPSなどCPU対応が広いようだから、同じように優位性がありそうだ。

 しかし、統合開発環境の技術が進歩すれば、今までのスキルや資産を使える上、外部のエンジニアも自由に使える。
 従って、モノつくり企業として蓄積してきた知識を生かすには、こちらに進むべきだと思うが、その路線を採用している企業は少ないようである。
 これで大丈夫なのだろうか。
  → 「統合開発環境への歩みが遅いようだが」 (2005年10月24日)

 さらに厄介な動きが進んでいる。
 組み込みソフトの対象範囲が急速に拡大しているのだ。今や、音、画像、通信インターフェースが同居するのは当たり前になってきた。こうなると、全てを自社で開発するなど無理だろう。
 特殊なやり方を志向すれば、この流れにはのれないということである。

 要するに、ソフト開発部隊の外部化は避けがたいのである。
 と言うことは、どのように外部化を図るかで競争力が大きく左右されるということだろう。

 将来、どのようなタイプの企業になるかを決めて、組み込みソフト開発体制のあり方を熟考すべき時が来たように思う。


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