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2006.6.26
 
 


スパコンが変わる…

 ISC2006開催を前にして、2006年6月19日、理研が1ペタFLOPSのスーパーコンピュータ構築に成功したと発表した。(1)
 専用チップ搭載型なので、他のスーパーコンピュータと直接比較はできないが、現在のトップ性能の約3倍だそうである。
  スーパーコンピュータ処理能力競争の「“ASCI-RED”→“ASCI-WHITE”→(“Earth Simulator”)→“BlueGene/L”」という大型クラスタ化の流れに、一石を投じたと言える。

 だいぶ前からペタFLOPS実現との噂は流れていたから、実は、驚くような話ではないが。
  → 「超スパコンの登場 」 (2003年10月2日)

 2000年頃は、特殊な専用チップを使ったと称するコンピュータは結構みかけた。利用者にとっては、宝物のようなコンピュータだった。他と比べれば、格段の差があったから当然だろう。
 しかし、汎用パソコンの性能が急速に向上したため、多数のパソコンを使うだけのクラスタ型のコストパフォーマンスに圧倒されてしまった。高価な専用CPU路線は嫌われたのである。
 結局、残ったのは、膨大な処理が必要な、特殊用途分野だけである。

 理研の専用チップ搭載型はそんなジャンルにあたると思う。

 このコンピュータシステムは、独自設計の専用CPUを多数搭載したコンピュータに、複数の汎用パソコン(サーバ)を接続したシステムと見ることができよう。形態としては、各サーバに対応するボードが並んだ形態もありえるが、全体を制御するコンピュータに多数のパソコンと見た方がわかり易い。
 専用CPUの使い方としては、えらく中途半端に見えるが、この構造が魅力的な時代に入ったようである。

 この手のシステムは、実際には、多数の汎用サーバが稼動しているにすぎない。但し、すべてのサーバで同じプラットフォームのソフトを動かすから、高い処理能力が実現できるのである。
 このソフトに合うよう、全サーバをコントロールし、すべての処理能力を一括利用する仕組みである。従って、利用側からは1つのコンピュータに見える。

 ちょっと前までは、単純に汎用パソコンを集めるだけのクラスター型が有望に思えた。

 確かに、そこそこの規模のシステムではコストパフォーマンスは高い。ところが、規模が大きくなるとチューニングが大変な作業になる。しかも、期待したほどパフォーマンスはあがらない。
 しかし、専用チップを使うといっても、一つの応用しか利かない。
 市場規模と、専用チップ開発コストを考えると、そんな方向へ進むのは、無理があると見なされていた。

 ところが、この見方が覆った。
 半導体開発・製造技術が進展したからである。優れた設計・製造プロセス管理ソフトウエアが登場し、開発コストは劇的に低下しつつある。その上、ウエハが大型化したため、試作レベルでもかなりのチップ個数がとれるようになった。お蔭で、機器テストのハードルは急激に下がった。
 専用チップを使っても、思ったほど大きな投資にならないのだ。

 こうなると、巨大計算機をブンブン回す土方作業が必要なプロジェクト向けに、データ処理アルゴリズムに最適化した専用チップをつくる動きが発生してもおかしくない。アウトプットから見れば、素晴らしいコストパフォーマンスが発揮できることになるからだ。

 クラスタ型にしても、、すでに珍しいものではない。研究に注力するより、標準的な接続のシステムを構築して、後はコンピュータベンダーに調整してもらうようなものである。
 ただ、超大型になると調整が難しい。といっても、結局のところ土方仕事になろう。と言っても、深い知識がなければ、待ち時間を減らすポイントがわからないから、研究者は熱中するのかもしれないが。
 しかし、そんなものに、いつまでも注力するのは勿体ないと思うのだが。

 理研の発表は、そんな状況を見透かしたような感じがする。
 専用チップ計算機に人気が集まるかもしれない。

 と言っても、そんな特殊計算はそう多くはないと見る向きもあろう。
 だが、市場は小さい訳ではない。それに、科学技術だけでなく、ビジネス市場が開き始めている。
 日本では、まだまだ感があるが、Java、J2EE、.NETが主流化しているからだ。エンタープライズ用途の、巨大なマルチサーバ処理のニーズは今後高まることは間違いないのである。
 と言うより、実は、すでに対応は始まっている。
 “Network Attached Processing ”の考え方である。

 どう見ても、巨大なデータベースを用いるソフトを動かす、世界最高速の理研のコンピューティングとコンセプトは同じである。

 しかし、この分野では、日本が先頭に立つのは難しそうである。
 応用ソフトのプラットフォームが日本にはないからである。応用を決めない限り、専用チップ開発はできないのである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2006/060619/index.html
(2) http://www.azulsystems.com/products/nap.html


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