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2006.7.4 |
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電子ペーパー分野が騒がしい…折角注力したのに、電子書籍リーダービジネスは鳴かず飛ばず状態で、残念なことである。→ 「電子書籍騒ぎを振り返る 」 (2006年6月27日) 本屋ビジネスが上手くいかないのは、そのようなビジネスにしたのだから、致し方ないが、長期メモリ可能な新型ディスプレー(コレステリック液晶と電気泳動マイクロカプセル)がビジネスとして飛躍できないのは、実に悔しい。 今までの液晶に必要だった、偏光板、反射板、カラーフィルター、バックライトがなくなり、メモリ表示可能になったのだから、画期的であり、しかも、それが商用化されたというのに、その後応用製品が登場しないのだ。 まさかこのままま技術を使い捨てにするつもりではないと思うが。 一般に、表示デバイスは、ラボの試作の後が大仕事である。低コストで大量生産できる生産機械の開発や、検品の仕組み作りは、簡単ではない。 従って、技術を確立したら、デバイスを大量に使用する分野を急いで立ち上げる必要がある。もたもたしていれば、次の技術が立ち上がってくるかもしれないからだ。 なにせ、この分野の競争は凄まじい。 1992〜2002年出願の特許調査では、提携関係者が重複するとは言え、リストアップされた主要参入者は23にものぼる。(1) 富士ゼロックス, キヤノン, セイコーエプソン, コニカミノルタ, ブリジストン, 凸版印刷, リコー, スター精密, ソニー, 富士写真フイルム, 米Xerox[現Gyricon Media], 東芝, 富士通, シャープ, TDK, 東洋インキ製造, ブラザー, 米Eink, 松下電器産業, 大日本印刷, 米MIT, 東海大学, 産総研 言うまでもないが、ここにリストアップされていない注力企業も多い。提携先だけではなく、独自方式もある。(2) 旭硝子, 日立製作所, 三菱製紙, 欧Philips, NEC(ネッツエスアイ), シチズン時計, NOK, スタンレー電気, 工学院大学, 九州大学, 大日本インキ化学工業, 米SiPix, トッパン・フォームズ, 米NTERA, 米QUALCOMM[旧Iridigm Display], ・・・ これだけ沢山の企業が入ってくると言っても、電卓に50社参入というような熱にうかれている訳ではなく、先が読めないから、研究開発テーマが続いている可能性も高い。何が主流になるかは、見えているようで、確信を持てる人などいないのだ。 技術が様々なのだから当然だろう。 ツイストボール 電気泳動 マイクロカプセル型 インプレーン型 着色溶液型 磁気泳動 電子粉流体 帯電トナー 液晶 電解析出 エレクトロクロミィ フィルム移動 これらすべてに目を通すなど不可能に近い。他の状況を徹底的に解析している暇があるなら、自分達の技術を磨いた方がチャンスを活かせると考えるのは当然だと思う。 しかも、現時点で他の技術水準が分かったからといって、どこにイノベーションが隠れているかわからない。遅れていそうに見える技術を熱心に追求しているのは、ブレークスルーを狙っているかもしれず、油断ができなのである。と言って、年中競争相手ばかり気にしている訳にもいくまい。 要は、細かなことではなく、事業と技術の本質を見抜く目が必要なのである。 これこそが、MOT教育の真髄だが、だいたいは手法の学びであるから、役には立つまい。 脱線してしまったが、この分野、2006年に入り、急に動きがでてきた感じがする。 企業が元気になって投資できる体力と自信を回復したこともあるが、新しいテーマが枯渇しており、一番有望そうなのは、この辺りということでなければよいが。 早めに、発表してユーザーの関心を惹きつけるとか、投資家へニュースのタネを提供するといった効果もあるが、これだけ競争が激しくなると、市場開発に動かざるを得ないのは確かであろう。 それに、A6で1,536×2,048画素のモノクロディスプレーや、0.2ミリ秒の画像変換タイプも登場しており、技術も成熟してきた。ここまでくると、この市場の勃興は時間の問題だろう。 ただ、大きな問題が残っている。表示ではなく、どのようにして、このディスプレーに情報を伝達するかという部分である。 長期メモリ可能で、薄くてフレキシブルなフラットディスプレーを「電子ペーパー」と呼ぶが、紙というなら、筆記具や印刷機器も一緒に考える必要があろう。石、木、皮、紙と、書き込み技術と表示技術は車の両輪のごとく動いてきた。片方だけ新しいのでは、たいしたことはできない。西洋が、皮から紙への代替に遅れた理由もそこにあった。 別に新しい技術を登用しなくてもよいのである。書き込みの工夫に知恵を働かせるだけのこと。ここで手を抜けば、市場はいつまでも開かない。 使い易いディスプレーが登場すれば、この市場はあっと言う間に拡大しておかしくない。 それを阻んでいるのは技術の問題と言うより、技術の特徴を活かして、何を表示するかという「事業観」が今一歩だからではないのか。 電子書籍リーダーの二の舞だけは避けて欲しいものである。 --- 参照 --- (1) http://www.ryutu.ncipi.go.jp/chart/H16/denki25/frame.htm (2) http://www.trcbook.com/electro/epaper.html 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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