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2006.9.14
 
 


重大事故と製品品質の連関はあるのか…

 エレベーター事故(1)の解説にはがっかりさせられた。
 人が閉じこめられたことが何度もあり、これが「黄信号」だという話ばかり聞かされたからである。

 “閉じこめられた”とは、安全のために運転を停止した状況を示す。その理由は様々。
 設計上の問題かもしれないし、整備不良のこともあるかもしれない。地震でも安全装置が働くのだから、乱暴に取り扱われたことが原因のこともあろう。
 しかし、重要なのは、重大事故は防げたという点にある。

 閉じ込めは、重大な事故を防ぐためには不可欠なのだ。従って、閉じ込めがほとんどないエレベーターを要求するのはどうかしている。止まらなくするのは簡単だからだ。感度を甘くすればよいだけのこと。
 この状況を理解していないと、重大事故を防ぐのは難しい。

 回転ドア事故(2)で学んだ筈だ。
 安全装置はあった。しかし、センサーの誤作動で運転停止が多発するから、感知範囲を狭めた。そのため、小さな子供の存在は感知できなかったのである。
 ガス瞬間湯沸器事故(3)も同じようなもの。
 安全装置が度々作動し、顧客からクレームがついたのである。お蔭で、停止しないように工作したという。
 安全装置作動を非難すれば、安全性軽視の片棒を担ぐことになりかねないのである。

 そもそも、不具合発生と重大事故を一緒に論ずべきではない。故障が多発すると、重大事故に繋がる構造になっている訳ではないからだ。

 人命に係わる機器では、安全装置は故障に備えて必ず2重になっている。又、たとえすべてが壊れても重大事故にはならないように工夫されているのが普通である。
 ところが、このエレベーターは重大事故を防げなかった。
 驚くことに、扉が開いたまま、かごが上昇したのだ。つまり、モーターの電源が切れても、錘の力でかごが上がったということ。ブレーキが突然外れた訳だ。
 とんでもない事故である。製品の品質が悪いから発生するような類のものではなかろう。全く別な問題だと思われる。

 何故、こんなことを書くかといえば、品質に関する技術体系が変わり始めたからである。

 今回のエレベーター事故では、当該企業の製品の不具合や事故発生率が高すぎるのが問題だという意見が多い。
 人命に係わる製品にしては、余りに安全性軽視ではないかという怒りの言葉が目立つ。
 実際、そうなのかもしれないが、冷静に状況を見つめた方がよいと思う。

 と言うのは、一部の産業では、品質に係わる技術体系が変わる兆候が現れているからだ。
 技術体系が変われば、製品品質で戦っている企業は競争力を失う可能性もある。これが杞憂ならよいのだが。

 と言っても、何のことかわからないから、次回、簡単に説明しよう。
続く → (2006年9月21日予定)

 --- 参照 ---
(1) 2006年6月3日 12階に到着したエレベーターから降りようとした16歳男子が, 扉が開いたまま上昇したかごの床と外枠天井に体を挟まれ死亡
(2) 2004年3月26日 6歳の男児が大型回転ドアに挟まれ死亡
(3) 2005年11月28日 半密閉式ガス瞬間湯沸器の排気ファン作動不良による一酸化炭素中毒事故で1名死亡 [同様な事故で過去14名死亡]


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