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2006.9.21
 
 


アセンブリ産業での不良発生現場とは…

 品質に係わる技術体系が変わる兆候が現れているとの話をした。
   →  「重大事故と製品品質の連関はあるのか」  (2006年9月14日)

 こんなことを言うと、世界に冠たる日本のメーカーの不良品発生(1)についての話と考える人も多いかもしれぬ。確かに、それもあるが、もっと本質的な問題である。
 簡単に言えば、一部の民生産業で、従来型品質向上路線に限界がきたと言うことである。この波を読み違えると、競争力を失う可能性も高いから、じっくり考えるべきだと思う。

 ともあれ、日本のメーカーで不良品発生が続いており、その原因については、様々な指摘がなされているから、こうした変化に、なんとなく気付いている人も多いかもしれない。

 例えば、どういうことか、アセンブリ産業での不良発生多発を考えてみよう。
 現場で考えれば、表層的な原因はすぐに指摘できる。開発現場環境が一昔前と違っているからだ。
 競争に勝つためには、できる限り部品管理表に収載されたものを選ぶことになる。認定されたのだから、利用したところで問題は発生しないと考える。そして、コンピュータ・シュミレーションで確認することになる。しかし、モデルによって、部品の使用環境は微妙に違うし、シュミレーションが現実使用を反映しているとは限らない。これだけで信頼してよいのか、はっきりしている訳ではない。だからと言って、個別検討を、こと細かく行うのは現実には難しい。開発スピードが低下すれば競争に負けることを意味するからだ。従って、この手の不良発生はそう簡単には減らない。

 このような問題が発生し始めているのは、ようやく本格的なグローバル化が進んできたということでもある。皆が顔をつき合わせて議論する“すりあわせ”型開発から、ITを駆使した仕組みに変えて来たからである。蓄積されてきた情報をそう簡単にIT化できるものでもないし、問題発生を予測する直観力を期待できるほどITシステムは進化してはいないから、以前より問題が発生し易くなるのは致し方ない。
 しかし、これは、一度は越えなければならないハードルである。開発・設計への参画者は益々地理的に分散するし、調達先も世界中に散らばる。コミュニケーションの仕方も違えば、意思決定スタイルも千差万別だから、IT化は避けて通れないのである。
 問題を防ぐには、どのような仕組みを作ればよいかが問われている訳だ。

 と言っても、当座やれることは、レビュー運営の厳格化、開発要員増、ITによるサポートプログラムの高度化を図るといった施策になる。どれも特段に目新しいものではない。
 そして、問題が目立つ分野に注力することになろう。たいていは、材料絡みのようだが。

 この方針は、ある前提の下で成り立っていることに注意した方がよい。「人」を増やす、問題が発生する分野に注力するといっても、どのような「人」を増やし、どんな業務に注力すべきかは、自明と思いがちだが、それは今までの発想にとらわれているということかもしれないのだ。
 特に、本当に注力すべき分野についての意思決定には注意を払った方がよい。長期的な競争力に大きな差がつく可能性があるからだ。

 こんな心配をするのは、従来型の品質担保が奏功しない時代が近づいてきたからである。現場主義では見落とし勝ちな課題にも目を向けるべきだと思う。
 別に難しいことを言っている訳ではない。どういうことかは、次回ということで。
続く → (2006年9月28日予定)

 --- 参照 ---
(1) 最近の例:
  ・小型複写機[2006年9月12日] http://cweb.canon.jp/e-support/info/060912pfc.html
  ・デジタルカメラ[2006年8月3日] http://cweb.canon.jp/e-support/info/ps530540.htmll
  ・ノートブック型コンピュータの電池パック[2006年8月25日] http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200608/06-0825/index.html
  ・12車種[2006年7月18日] http://toyota.jp/recall/2006/0718_1.html
  ・9車種[2006年5月30日] http://toyota.jp/recall/2006/0530.html


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