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2006.11.7
 
 


品質優位が発揮できた理由…

 前回は、品質優位で戦っている企業は、事業戦略の再構築を迫られるかもしれない、との話をした。
  → 「品質担保方針が事業戦略を変える 」 (2006年10月31日)

 要するに、品質優位を誇れた理由をじっくり考え、持てる力を活かす方策を練る必要がでてきたということ。
 特に、“Kaizen”運動で品質向上を実現してきた企業は、その運動の意義を再認識する必要がありそうだ。

 この運動の真髄は、ヒト、モノ(使用量と在庫量)、設備と仕組みに関しての問題点を探り、その問題解決のために、迅速に対応を進める行動を、組織成員が完璧に身につける点にある。身につけてしまえば、日常的な行動になってしまうので、極く普通の組織能力と勘違いしがちだが、貴重なものである。もしもゼロからそんな組織能力を身につけるとしたら、大事なのである。
 なかでも、特筆すべきは、問題が発見された時、設備にお金を投じて対処するやり方をできる限り避ける習慣が存在している点。つまり、他人の知恵で解決を図る前に、自分達の知恵で解決策を案出しようと努力する姿勢が当たり前なのだ。しかも、これが自律的に行なわれる。

 これを当然視する人もいるが、それは間違い。
 下手をすれば、素人が集まって浅薄な問題解決をする危険性があるからだ。優れた企業は、“Kaizen”運動を通じて、そんな方向に進まないよう、常に思考の鍛錬を行なってきているのである。従って、簡単に真似ができる訳ではない。

 この思考鍛錬こそが、“Kaizen”運動の肝だと思う。

 表層的な問題処理ではなく、事業プロセス全体像を考えながら、問題の深堀に努め、合理主義に基づいて全体最適化を図るように、運動を進めているから、素晴らしい成果が生まれるのである。
 この思考鍛錬体質が染み付いている企業なら、世界に冠たるモノ作りの力を持っていると言ってもかまわないと思う。

 ただ、注意すべきは、この力を発揮できるのは、製品の目標品質について、組織的合意が形成されている時だけである。
 製品設計に応じ、工程が一義的に定義されており、誰がどのようにモニター、チェック、コントロールを行うかが自明であるから、問題発見も容易だし、全体最適な対処策も実行できる。つまり、“Kaizen”運動とは、現実には、文殊の知恵を取り入れた、QC工程表の徹底的な緻密化と見ることもできよう。
 工程表には、現場の考えが常に反映されるから、モニター、チェック、コントロールを、組織総員が担当している気分になる訳である。実際、異常に気付けば、誰であろうが、即座にラインを止めることができる仕組みもあるから、気分だけでなく、現実でもあるが。

 この例を考えればわかると思うが、複雑化した要求になると、この体制維持は難しくなることが予想される。
 目標品質についての組織的合意形成が難しくなってくるからだ。しかも、問題が錯綜してくるから、全員体制のモニター、チェック、コントロールができかねる状況になりかねない。

 従って、今まで培ってきた、思考鍛錬を起源とする強みを捉え返し、その力を生かして新しい状況に対処する必要があろう。
続く → (2006年11月14日予定)


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