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2006.11.28
 
 


品質問題の本質…

 前回は、日本の優良企業は、品質向上運動を通じて、新しいマネジメントの仕組みを作ってきたとの話をした。
  → 「マネジメント革新が肝 」 (2006年11月21日)

 これは、実は、古い話に基づく。
 1980年のことだ。NBCが“If Japan Can, Why Can't We?”と題した番組を流したのである。(1)世界中で、市場を席巻している日本メーカーの成功の秘訣とは、Dr. Deming が教えた品質管理手法にありとの内容だ。当然ながら、全米に与えた衝撃は大きかった。
 この結果、TQMが野火のように広がったのである。米国が、日本を見習って、競争力強化に動いたといえよう。
 身につくまで時間はかかったが、80年代後半、この成果は顕著に現れたと言ってよいだろう。米国の競争力は復活してきたのである。
 と言っても、そんな実感は湧かないかもしれない。後追いで品質を高めただけで勝てる訳もないから当然だろう。
 米国が行ったのは、製造業における日本企業キャッチアップではない。官庁やサービス産業も含め、全ての産業でマネジメント品質の向上を図ったのである。
 この取り組みがあったから、その後、米国は急速なIT化を進めることができたと言えなくもない。

 一方、日本では、用語も、TQMよりは、以前のままのTQCが好まれた。品質管理とは、あくまでも、メーカーの生産部隊の話に留まってしまう。ブルーカラーの手法ということで毛嫌いする人も多く、なかにはあからさまにTQMの意義を否定する人も多かった。
 そして、結局、大いに遅れて、ISO9001やシックス・シグマを輸入することになる訳だ。

 どうしてこのようになるかといえば、視野が狭いからである。その上、自分の頭で徹底的に考えようとしないから、物事の本質を見抜くことができないのである。

 この体質は、今も変わっていないと思う。流行の手法を導入することに熱心なリーダーが多いからだ。
 自分達の頭で考えなければ、同じことを何度でも繰り返すことになろう。

 Dr. Deming は、日本企業の姿を見て考え抜いたに違いない。それは、マネジメント原則を見ればよくわかる。(2)
   (10) Eliminate slogans, exhortations, and targets for the work force.
   (11a) Eliminate numerical quatas for the work plan.
   (11b) Eliminate numerical goals for people in management.

 曖昧な戦略しかなく、意思決定もなかなかできない、いかにも稚拙なマネジメントしかできそうにない日本企業が何故強いのか、米国人が考え抜いた結果である。

 組織の力とは、結局のところ人々の知恵にほかならず、その力を活かすには、人々の自発的な動きが不可欠ということである。知恵袋たる人材育成に注力している企業なら、Dr. Deming が何を言いたいかすぐにわかるだろう。

 日本企業が直面している、製品の品質問題とは、実はこの問題である。今迄知恵を発揮してきた組織が、これからもその役割を果たせるのか、との根本的な疑問が生まれているからだ。
 この疑問に、はっきり答える必要があろう。

 もしも、新しい知恵の出し方が必要だとしたら、どうすべきなのか。
 おそらく、その答えは、単純な手法導入では見つからないだろう。徹底的に考え抜くしかないのである。

 --- 参照 ---
(1) http://en.wikipedia.org/wiki/If_Japan_can..._Why_can't_we%3F
(2)“Elaboration on the 14 Points”--- William Edwards Deming: “Out of the Crisis” The MIT Press 2000[1986]年
  http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?ttype=2&tid=3261


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