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2006.11.21
 
 


マネジメント革新が肝…

 前回、世界に冠たる優等生企業には、同じような組織的特徴があるとの話をした。
  → 「組織能力を考えよう 」 (2006年11月14日)

 この話は重要なので、もう少し説明しておこう。

 と言うのは、同じように、熱心に品質向上活動を進めているかかわらず、目だった成果があがらない会社もあるからだ。これを、表面的な真似だけの運動をしている結果と見なしてよいか、よく考えた方がよいと思う。もしかすると、品質向上で頑張ってきたから、日本企業の競争力が向上したのではないかも知れない。

 ちなみに、筆者は、品質向上活動そのものではなく、その運動を通じてマネジメント革新を実現した組織が競争力を発揮し続けていると見ている。
 どういうことか、簡単に説明しておこう。

 品質といえば、誰でもが知っているのは、おそらく「デミング賞」(1)だろう。
 1950年代、Dr. Deming が日本企業に統計的品質管理を教えたことが発祥になっている歴史的な賞である。“Deming cycle”[Plan-Do-Check-Act cycle]、QC7つ道具、管理図[JIS Z9021]の普及に繋がったことでも、よく知られる人である。
 しかし、こうした方法論を用いて、教えられたことを地道に実行しただけでは、その後に登場した、カンバン方式、JIT (ジャスト・イン・タイム)、いわゆるリーン生産等の施策に繋がるとは思えまい。そこには、大きな飛躍があったのは間違いないのである。

 つまり、品質管理にただならぬ力を入れてきた日本企業のなかに、革新的な企業が多いのは確かだが、それは品質向上運動が生み出したというより、品質向上運動に本気で取り組める組織を作りあげることで、マネジメントと業務の革新がし易いということだと思われる。

 しかし、不思議なことに、日本企業は品質マネジメントで先行しているとは言い難い。
 この分野は、5つのステップで発展してきたと言われているが、(2)後半のステップにあげられている、ISO9001やシックス・シグマは日本企業が作り上げた仕組みとは見られていない。
  (1) SQC (統計的品質管理---Dr. Deming が日本企業に教えた米国流の製品管理の方法論)
  (2) TQC
  (3) TQM
  (4) ISO9001
  (5) シックス・シグマ

 日本企業が賞賛されたのは、TQCだけかも知れぬ。
 質が高く廉価な日本製品に市場を席巻され、米国のメーカーはDr. Deming にその秘訣“TQM”を教えてもらったのだが、これでさえ、日本企業にあまねく広がったとは言い難い。
 しかも、それは、1980年のこと。それからすでに、四半世紀がたっている。ずっと同じパターンでTQCを続けているだけなら、追い付かれて当然ではないか。

 実際、アジア製が、品質で日本製を凌駕しているとの声も聞こえてくる。故障率が低かったり、細かなところまで目が行き届いているとか、驚くほど安価にもかかわらず十分すぎる品質だ、等々、称賛の声は絶えない。
 こうした現実を直視すべきだろう。

 こんな状況で、圧倒的な競争力を発揮したいなら、製品品質という狭い分野での競争ではなく、新しい仕事のやり方や、新しいマネジメントの仕組みで挑戦することで、差をつけるしかなかろう。
 品質向上運動を通じて、そんな挑戦を続けてきた企業にとって、こんなことは、実は、当たり前なのである。
続く → (2006年11月28日予定)
 --- 参照 ---
(1) http://www.juse.or.jp/prize/deming_1.html
(2) http://www.asq.org/learn-about-quality/history-of-quality/overview/total-quality.html


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