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2008.1.21
 
 


ハイテク軍事技術の拡散が始まる…

 米国が中国への軍事物資の禁輸政策の緩和を始めたそうだ。(1)
 対象は軍用転換可能なハイテク製品である。
  ・aircraft engine parts
  ・navigation systems
  ・telecommunications quipment
  ・sophisticated composite materials

 “We have adopted a consistent, broad-based approach to hedging against helping China's military modernization.”ということだが、かなりハイテクなものを輸出することになるようで、方針転換が徐々に進んでいるようだ。
 軍事ハイテク技術が、中国からさらにイランに流れるという意見もあるし、軍事独裁国には注意が必要なのは確かだが、(2)そうも言っていられないということだろう。それに、Sarkozy大統領が、EUの武器禁輸維持方針に反対することを中国首脳に伝えたようだし。
 まあ、フランス政府の本音は、航空兵器分野で仏中共同開発を早く始めたいというところではないかと思うが。

 ともかく米国政府にとって、グローバル経済を支えていくためには、中国との関係強化は最優先事項だ。中国からの禁輸緩和要求に応じない訳にはいかないと言ったところだろう。

 もっとも、スパコンを見ればわかるように、すでに汎用技術化が進んでいるハイテク分野も多い。どの程度意味ある緩和に踏み切っているのかは、個別に見ないとよくわからない時代である。
 なにせ、中国には、2007年11月時点で、処理スピードトップ500位(3)に入るスパコンはすでに10台ある。そのうち6台はHP製で、3台がIBM製だが、250位に入っているのは中国国産。(Shanghai Supercomputer Center(4)の“Dawning(曙光) 4000A”)2004年に登場して一時騒がれたが、そんな時代はとうに過ぎ去った。
 その後、さらに改良が加えられ、次世代5000Aを開発中とのこと。(5)
 日本で言えば、AIST Super Cluster P-32(6)のようなマシンだろう。
 中国は、汎用CPU“竜芯”の開発にも成功していると発表しており、禁輸に耐える状況を作りだすことには極めて熱心なのだ。

 そして、なんといっても、重視しているのが軍事が絡む宇宙分野。ここでのキーエレクトロニクス部品やコンピュータの内製化には力が入っているに違いない。

2007年に打ち上げられたロケット(8)
1月 PSLV,Soyuz,Zenit
2月 Delta,H-2A
3月 Atlas,Ariane,Falcon
4月 Soyuz,Proton,長征[Long March]
長征,Dnepr,PSLV,Minotaur,Pegasus
5月 Ariane,Soyuz,長征,Soyuz
6月 Delta,Shuttle Atlantis,Dnepr
Atlas,Dnepr
7月 Kosmos,長征,Proton
8月 Soyuz,Delta,Shuttle Endeavour
Ariane,GSLV
9月 Proton,H-2A,Soyuz,Delta,
長征,Delta
10月 Ariane,Soyuz,Atlas,Delta,Soyuz
Shuttle Discovery,長征,Proton
11月 Kosmos,Delta,Ariane,Proton
12月 Proton,Delta,Atlas,Soyuz,Delta
Ariane,Soyuz,Proton
 そんな姿勢を顕著に示したのが、2007年1月に行われた、地上発射ミサイルによる老朽化気象衛星破壊実験。
 “成功”(7)とされるが、体当たり破壊だから、一昔前の技術だし、当たって当然。常識的には、遅れた技術開発体制を示す実験ということになる。そんな無駄な実験をあえて行うのだから驚き。
 日本が加わったミサイル防衛技術開発が進んでいることで焦燥感が生まれたか、新技術試行に失敗したのどちらかだろう。前者としたら、えらく厄介である。
 合理的思考ができないのだから、何を始めるかわかったものではない。
  → 「ミサイル防衛をどう考えるべきか 」 (2008年1月9日)

 2008年に3回目を予定している有人宇宙船“神船”も国威発揚的な印象を与えているが、軍事的側面も濃厚である。
 すでに、“長征”の打ち上げも100回を超えており、ロケット大国の一角を占めるまでに成長している。通信衛星打ち上げ受託も成功させ順風満帆と自画自賛状態。
 2008年1月に開催された「国防科術工業工作会」では、そんな成果を誇るとともに、重点課題の最初に“完成高新武器”をあげた。“高科術自主創新能力”を追求するのだ。そのため、“軍民結合産業”を重視し、“航空工業体制改革”をなしとげるつもりだという。(9)

 巨大な軍産複合体を構築し、これを輸出産業にしていくつもりである。問題なのは、後発中国のお客さんは得体の知れぬ国が多くならざるを得ない点。ハイテク技術が管理されずに拡散していくことになる。言うまでもないが、そんな国々からどんな兵器が登場するかわかったものではない。

 ソ連は、かつて、運ぶのも大変な超巨大水爆を開発したことがある。
 軍事技術開発は、常識外れのとんでもない方向に進むことは稀ではない。

 --- 参照 ---
(1) Steven R. Weisman: “Doubts raised on sales of U.S. high-tech equipment to China” International Herald Tribune [2008.1.2]
(2) Wisconsin Project on Nuclear Arms Control: “In China We Trust? Lowering U.S. Controls on Militarily Useful Exports to China” [2008.1.2]
  http://www.wisconsinproject.org/pubs/reports/2007/inchinawetrust.pdf
(3) http://www.top500.org/static/lists/2007/11/TOP500_200711.xls
(4) 上海超級計算中心 最新動向 http://www.ssc.net.cn/title/title20071217.asp
(5) 北京新浪網 [2007.4.4] http://news.sina.com.tw/tech/sinacn/cn/2007-04-04/190438142075.shtml
(6) http://unit.aist.go.jp/tacc/ci/supercomp.html#SuperComputer
(7) Craig Covault: “Chinese Test Anti-Satellite Weapon” Aviation Week & Space Technology [2007.1.17]
  http://www.aviationweek.com/aw/generic/story_channel.jsp?channel=space&id=news/CHI01177.xml
(8) Worldwide launch log  http://spaceflightnow.com/tracking/launchlog.html
(9) 国防科術工業委員会リリース [2008/1/7] http://www.costind.gov.cn/n435777/n435783/138808.html
(防衛省の写真) (C) 東京発フリー写真素材集 http://www.shihei.com/tokyo_001.html


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