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2009.6.15 |
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日本の半導体産業の課題とは…半導体業界は抜本的な改革が必要と叫ばれて久しいが、歩を進めることができるだろうか。言うまでもないが、業界人が問題を認識していない訳もない。問題は、外部の方かも。教科書的な当たり前の解決策を語る人ばかり目につくからだ。 外部から、大きな流れを読んで、提言してあげれば、この業界は変身できるというのは思い上がりである。この業界の問題は、頭が働かない人が集まっているのではなく、働きすぎる人が集まりすぎているから、なかなか上手くいかないと見た方が当たっていると思う。 この業界の一番の課題とは、不退転の決意で、改革を進めるチームを編成することだろう。 そもそも、改革はなかなか計画通りに行くものではない。場合によっては、事態打開のためには、改革の流れに逆行するように見えることでも、チーム一丸となって、平然と進める胆力が必要なのが普通。 外部の、理屈だけの提言が成果を生みにくいのは、最初のとっかかりが間違っているため、チームが一丸になれないことが多い。総論賛成でも、各論では意見の対立が発生して、頓挫するパターンは多い。 例えば、供給過剰になることは皆わかっているから、マクロでの状況分析にはたいした意味はない。そんな議論は時間の無駄かも。 工場投資が巨額ですぐに寿命がくるので、建てたら、投資回収のためにひたすら作るしかない。生産調整したからといって、状況が変わるような事業ではない。 個別企業の関心時は投資のタイミング。素人がアドバイスできるようなものではない。 にもかかわらず、事業に対するアドバイスは少なくない。これからは自動車用半導体に注力すべしというような類のものをよく見かける。 そんなことは、言われなくても、とうの昔からやっている話だ。 しかし、その市場は、多分、今でも全体の1割を超えたところではないか。縮小一途の家電用にようやく規模で追いつきつつある程度だろう。 何が言いたいかおわかりだろうか。 自動車用半導体設計に特化した強靭な企業を作りたいという施策をお勧めしているのかネ、とききたいのである。 その気になれば、間違いなく、高収益で、圧倒的な競争力を発揮する企業は作れそうだ。だが、それなら、残りはどうするの。 こういうこと。 規模の経済を実現せよという主張も多い。こんな話など、ずっと前からわかっていたこと。 工場の投資額が余りに巨大化し、1工場のチップ生産量が膨大になってしまったのを知らない人はいない。 → 「半導体産業の激動が始まる」 (2007年7月5日) 年10億ドルの償却費をまかなえるのは、年商100億ドル以上の巨大企業、潤沢で安定したキャッシュフローがある企業、国策企業のいずれかしかないのは自明。 それなら、日の丸半導体工場だと言う人がでて当然。 しかし、日の丸半導体工場をシェアしようとの動きは出なかった。製造委託するには、標準化が必要だが、それに乗りたくない企業があれば作れないのは当たり前。 工場の統合メリットとは、あくまで一般論でしかないのである。 上流部門(機能企画・回路設計)にしてみれば、下流部門(製造)が統合されれば、独自の製造プロセスを組み込むのは難しい。製造側の都合に合わせて設計せざるを得なくなる。 それなら、台湾企業に製造委託した方がましということになりかねない。 こうなるのは、上流と下流の“摺り合せ”を強みにしたい企業が存在するからでもある。 ただ、フラッシュメモリのように製造が難しいものは、このスキルを磨いて、技術を移転を防げば競争力は自動的についてくるからよいが、様々な素子を同居させるシステム型のチップでもこの路線を追求しているのだ。 その結果、優秀なエンジニアの大量投入が必要となり、高コスト体質に陥っているのだ。それだけのプレミアを得られれるのならよいが、そうでなければジリ貧化の恐れ濃厚な作戦である。部外者から見れば、そんなことは止めたらと言いたくなるだろうが、そうもいかない。 “摺り合せ”を減らせば、上流では工場を持たない専業企業、下流では受託生産企業と、直接的な競争になるからだ。今から始めて、勝てるのか、ということ。 なにせ、製造プロセスの標準化のリーダーシップを図れるのは、台湾のTSMCという図式ができあがってしまっているからだ。 まあ、だからこそ AMDでさえ製造部門を切り離しかなくなったということである。 それに、産業全体で見れば、上流と下流の研究開発費はほぼ同額というのが現代の半導体産業。下流で優位に立つためには、できる限り製造プロセスを多岐に渡らせないことが必要になろう。上流と下流の“摺り合せ”に力を注ぐということは、この逆を志向することになる。 これで勝つのは簡単なことではなかろう。 そんな志向の企業が集まっただけなら、規模の経済は働かないかも。 だからといって、いい加減に標準化すれば、今迄、競争力を発揮していた虎の子が弱体しかねないのである。 こんな状態だとしたら、頭だけで作った計画での成功は難しいのではないか。“muddle through”できる強固な改革チームをつくれるかが勝負だと思う。 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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