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2009.3.12 |
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土器時代の勾玉の意味…【土器時代】を眺めてみた。→ 「倭国以前の土器時代を考える」 [2009年3月5日] さらに、もう一歩この話を進めてみよう。 土器の出現で、間接的だが、農産物の生産能力が促進され、富が蓄積してくるから、自然と交易量も増える。これに対応し、船も大型化した。ただ、目視による航海技法が変わった訳ではないから、事故損害は格段に大きくなる。航海安全祈願は極めて重要になってくる。 呪術で航行計画を決定することになるが、これで部族の浮沈が決まったりしかねないのである。 自然と呪術師の権威は高まる。その力を強化するには、呪術用具の“珠”を集める必要がある。それが「海人」の伝統である。(“珠”の威力で交易を広げ、ネットワークを構築したともいえる。)だが、それも限界がきていた。大きな天然真珠がそうそうある訳はないからだ。 だが、「海人」であっても、呪術の対象は海だけではない。港の後背地の山と森は信仰対象だったからである。 こちらの呪術用具は、獣の“牙”。山の精霊の力を得るため、呪術者は、こちらも同じように扱っていた筈だ。 しかし、先進的な「海人」からみれば、“珠”は輝いており、珍しいものだが、“牙”は余程の特大でもない限り特段の神秘性を感じさせないから、違和感があったのではないか。 そこで登場したのが、新しい用具である。それは、翡翠■でできた牙様の玉。(呪術を駆使したとされる女王、卑弥呼も、多数の真珠と、翡翠の勾玉を使っていたに違いない。両方ともに、魏に献上している。)“珠”と“牙”を合体させたものと考えてよいだろう。 呪術者の権威は、翡翠製勾玉ネックレスになったのである。 この変化を主導したのが、北九州地域を根城にする「海人」だと思われる。そして、その交易ネットワークには、必ず、勾玉が係わることになる。要するに、勾玉ネックレスを身にまとった呪術者が各地に存在するようになったということ。 全土に、初めて宗教的なつながりができたのである。おそらく、言語もかなり統一化された筈。 この変化は、見方によっては、「海人」が武力で圧力をかけながら覇権を図ったとも言える。北九州の「海人」勢力は、戦闘には長けていたのである。 その親分格が、博多湾の志賀の島勢力。その力は中国大陸でも認識されており、対馬海峡交易権(奴国金印)が与えられたほど。ただ、その後、他所に移住したようだが。 尚、肝心の原石の翡翠だが、糸魚川[姫川]の原石(1)がゴロゴロしている朝日町宮崎・境海岸等から収集したものだろう。“海水までエメラルドグリーンに輝いて見える”(2)ほどだから、日本海沿いに航行する「海人」がこの石に気付いたに違いない。 そして、「海人」は、黒曜石で培った石の知見をベースに、竹を用いて硬い玉に穴をあける技術を開発し、呪術用具として普及することに成功した訳だ。 そして、翡翠の価値が理解されるのと平行し、この辺りに北九州地区から移住勢力が定着したと思われる。その、繁栄はたいしたものだった筈。 古事記で、大国主命が、高志の奴奈川姫に求婚する話があるように、翡翠の利権の魅力はただならないものがあったのだ。(3) 玉造温泉という名称が、翡翠の一大加工場を示しているように、大国主命派にとって、呪術用具の勾玉流通をおさえることは極めて重要だったことが伺える。言うまでもないが、もちろん神話だけでなく、出雲大社で最高級の硬玉製勾玉が発見されている。(4) 要するに、翡翠製の勾玉を沢山身につけた呪術師とは、女王か男王の片腕だったということ。 勾玉とは、王権の象徴なのである。勾玉が出土したということは、その地域は、武力を持った国家に変身しつつあったということ。 そして、対外的にも、その翡翠の玉を貢ぐことで、中国の王朝の関心を引こうとした。おそらく、それは大成功だった。 ともあれ、こんな動きが【土器時代】ではないか。小生は、時代の名称としては【勾玉時代】の方がよいと思うが。 →続く[来週] --- 参照 --- (1) 「翡翠を探せ」 新潟文化物語 http://www.n-story.jp/special/03/page1.html (2) 「ヒスイ海岸」 富山県朝日町 http://www.town.asahi.toyama.jp/site/hisui/kaigan.shtml (3) 「奴奈川姫の伝説」 糸魚川市 http://www.city.itoigawa.niigata.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AC020000&WIT_oid=icityv2::Contents::1671 (4) 硬玉製勾玉 出雲大社宝物殿 http://www.izumooyashiro.or.jp/keidai/homotsu/index.html (勾玉のイラスト) 和風素材の篆刻素材AOI 歴史から学ぶの目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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