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■ 孤島国JAPAN ■ 2010.4.13 |
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日本の横笛考[その8]…雅楽のそれも“高句麗楽”しかつかわない笛の話をしたが、実はもう一本特別な笛がある。多くの場合、この笛が日本伝統の笛ということになっている。それは、笛の名前が“大和笛”だからだ。まあ、一般にはこの名前ではなく“神楽”笛となっている。ほほ〜。雅楽は雑炊的になんでも入れたように見えるが、そうではないことが、これでわかる。日本の楽の基本は“神楽”で、それ以外は外来楽の“蕃楽”ということではないか。 どうして、その“蕃楽”にこだわっているかは、わかる気がする。インターナショナルに生きていこうと決意し、海外の文化に触れ、驚愕したと思う。 それは、光輝く仏像であり、多種の楽器による聞いたこともない音楽である。こうした文化を理解しないで、世界標準の政治の仕組みである律令国家に進むことなどあり得ないと考えるのは自然なこと。その感覚を大切にしたかったのだと思う。 という理解で、全ての横笛を整理するとどうなるか。 ・7ッ指孔笛 -装飾笛・・・・龍笛(公式) -素竹笛・・・・篠笛(民俗) -特殊構造・・能管(アバンギャルド) ・6ッ指孔の塗り笛 -太・・・・・・・大和笛(神楽用) -細・・・・・・・高麗笛(高句麗楽専用) 龍笛は名称や雅楽に使うから、祭祀用に見えるが、どうも違いそうである。正式な宗教儀式は6ッ指孔ということでは。この手の笛は特別な人しか触れることができなかったかも。なにせ、雅楽は門外不出だったようだから。 面白いのは、神楽笛。太いため、高音がでない。神を呼ぶ声とは違うことになる。ここでハタと気付かされる。祭祀に使うといっても、用途が違うのだ。 神楽とは神を喜ばすためのもので、お呼びするものではない。それは、天の岩戸でのストリップショー的乱痴気騒ぎを連想させるような音楽ということ。覚醒させるような高い音など厳禁である。 呼ぶなら龍笛。 そして、神を迎えるために準備体制を整えるのが篠笛のように思えてくるのだが。 さあ、ここで最初の篠笛の話にもどろう。 神楽笛と呼ぶこの笛だが、吹く人は特別に習った人だけである。神楽といっても、雅楽に属するものだけで、一般の“里”神楽とは違うのである。普通、神楽に使う笛とは、“地笛”こと篠笛なのだ。 ここでの笛の役割はなにか。神楽を見たことがあっても多分わかるまい。というのは、神楽は神殿とは別な、感曲が大勢見れる場所で開催されるのが普通で、それは神とともに楽しむものとなっているからだ。要するに、演目は多岐に渡り、流行はなんでも取り入れてたプログラムと化しているのが普通。演奏はそれぞれの演目毎の演出に合わせて設定されている。五線譜音楽ではないが、まあ、同じようなもの。 しかし、そのなかに、昔から伝わる演目が必ずある。それは、たいていは和歌のような歌謡であり、派手な踊りがつくことが多い。太鼓と笛の単調なリズムが延々と続くことが多い。おそらく、踊り手はトランス状態に陥るのではないか。 これが神楽の本質だと思う。 そして、当然ながら、神社毎に歌も違うから、演奏のリズムや音程が同じものなどないのである。 もしかすると、最初は、笛は一本と太鼓のリズムで歌で始まり、次第に場がのってくると、笛の本数が増える仕組みかも。そうだとすると、ここで、自作の“地笛”の威力が発揮される。西洋音楽の演奏とは違って、全ての笛の調子をピッタリ合わせないから、微妙なズレが音の波紋を生む。 それが一体感を醸し出す。西洋ではそんな宗教性を感じさせるためにポリフォニーを生み出したが、日本は微妙なハーモニーで実現しているということ。しかも、それを始めたのは古代ということ。 日本の横笛は奥が深いのである。 笛は横笛いみじうをかし。遠うより聞ゆるが、やうやう近うなりゆくもをかし。 近かりつるがはるかになりて、いとほのかに聞ゆるも、いとをかし。 [枕草子 204段] 「孤島国JAPAN」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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