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■ 孤島国JAPAN ■ 2011.2.10 |
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トイレ表記に矢鱈こだわる人達だらけ…日本の世界一が確実なのが、トイレ名称の数。 Toiletの和訳を見れば一目瞭然。日本語不案内の人だと、覚えるだけで大手間。観光案内の一口会話紹介を眺めたことはないが、どうなっているのだろうか。 ひょっとして日本でも"Toilet"と言うなどと記載してなければよいが。真に受けて、"Toilet room" [仏:Toilettes] と発音しても、そんな単語は初めて耳にする人ばかりなのだから、トイレとはわかってくれないぞ。 それに、カタカナ表記にしても、トイレットとトイレの2種類あり厄介。後者が圧倒的に優勢だが、前者にこだわる人も少なくないから、表記は結構見かける。 どう名付けようが勝手気ままな社会ということがよくわかる好例と言えるのかも。 ようやく、"便所"が標準語的に使用されるようになったというのに、糞便イメージが気にくわないからトイレにすべしとの風潮。面倒だが、こうした流れに逆らうと変わり者として嫌わる。漱石ではないが、実に面倒な社会である。 そんな流行体質なので、最近は外国語の並列表記も始まった。そうなると、そのうち「厠所」で統一したらとの話がでてくるかも。 しかし、考えて見れば、「便所」表記を嫌うというのも可笑しな話である。濁音だから、好まれない単語であるのは致し方ないが、もともと「糞」と言う直接的用語を人間様用に使いたくなかったからこその用語。「糞所」では動物的だし。 「便」は、便(弁)当として使われる位で、知的な言葉。そんな上品な言葉を穢れた言葉扱いにするのだから、どういう発想なのだろうか。崩れる日本語という人がいるが、そうなのかも知れぬ。 ちなみに、「糞」の音は"フン"で、訓は"クソ"。"うんこ"は"(お)しっこ"と同じ幼児語。"ベン"は糞とは縁も所縁もないのである。 ただ、純正仏教用語は便所ではなく、東司/東浄(西司/西浄)。東福寺伽藍の南西にある大きな建物"東司"を眺めた人は少なくなかろう。禅宗では三黙道場(私語厳禁)の一つでもあり、大切な場所だ。もっとも、現代ではそう言う意味は完璧に失っている。にもかかわらず、未だに「東司」表示を使う寺院は少なくない。拝観だけでなく、僧侶になった気分で用をたせというつもりか。大笑いは、その横にカッコつきで便所と記載されていたりすること。なんだかね。
そう言えば、東京の人だと思い浮かぶ名前があろう。「半四郎の落とし処」だ。様々な工夫でなんとかして有名観光地にすべく努力をすればこうならざるを得ないという見本。ネーミング権で人気というほどまでにはいかないから、それがどの程度の効果なのかはよくわからないところがある。 まあ、糞便感を与える表現が嫌われるのは、日本だけではない。施設内だと"Lavatory"表示が多いし、場所を尋ねる場合でも、"men's/lady's room"と言うの普通だろう。ただ、個人宅だと"Bath room"か。 それに対応するのが、"お手洗い"、"洗面所"、"化粧室"だろう。どれも、施設案内図では、"トイレ"と"便所"と並んでよく見かける用語。 そうそう、一昔は"WC"が一般的だった。これは、"W.C.(Water Closet)"だが、都会では水洗以外を見つけるのが難しいご時世では、流石に使うことはなくなったということのようだ。ただ、未だに、昔の表記がそのまま残っている建物も少なくない。ピリオド無しが多いのがいかにも日本的。 この程度なら、少し、言葉が多いということになるが、もう一つ廃れない言葉が2種類ある。これがあるから、世界に類を見ない種類の多さになってしまうのである。 一つは、"御不浄"。古事記の頃から、糞は穢れているから、不浄場とされる訳だ。ご不浄拝借という言い方は少なくなりつつはあるが、消えるとは思えない。この類語は"はばかり"。こちらは、知識としては知っている人は多いが使うことは滅多になかろう。消え行く言葉か。 もう一つが、"厠"(かわや)。漢語だと"廁所"であり、屋根つきの別棟としての側屋といったところ。と思っていたら、「川屋」の当て字と考えるべきものらしい。日本お得意の両者習合なのだろう。 これだけでもずいぶんな数だが、実はまだある。言葉自体はよく知られているが、便所としては事実上死語の用語があるのだ。 そう"雪隠"である。雪隠詰めといった形で残ってはいるが、そのうち意味がわからなくなることだろう。味わい深い言葉であり、小生は好きだが、使う場面がなかなかない。どうせ勝手に名前を付けるなら、これは面白いと思うのだが。 尚、類語として"閑所"もあるので、付け加えておこう。便所が嫌いなら、これなどどうかとも思うのだが。 そうそう、雪隠はカワヤと違い中国の話が由緒とされている。小生は、この話、どうも信じる気になれない。格好をつけた言葉遊びに映るのだが、残念ながら、そんな説は無いようだ。 「孤島国JAPAN」の目次へ>>> 「超日本語大研究」へ>>> トップ頁へ>>> |
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