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■■■ 日本語の語彙を探る [2015.4.3] ■■■
コウモリの語源

コウモリ(蝙蝠)は、平安時代はカハホリ(加波保利)と呼んでいたらしい。俳句の世界では過去形ではないが。
 かはほりや むかひの女房 こちを見る 蕪村
畿内ではカハボリと濁音化させたりしたようだ。

それを考えると、語源をカワモリ(川守)と考えるのは一寸無理がありそう。
イモリ(井守)、ヤモリ(家守)があるから、川守にしたくなる気持ちはわかるが。

顔は紛れも無い鼠だから、「飛鼠」と呼ぶ人もいたようだが、文字の縁起担ぎ大好きな中華帝国のこと、「蝙蝠」以外が使われる訳もなし。そうなると、日本がそれ以外の文字を使用するのも拙いとなりがち。

ちなみに、「和漢三才図会」[巻第42]では、鼠の仲間ではなく、原禽類である。名称は伏翼。[伏翼 和名加波保利@「医心方」]
禽扱いはこまるなら、「虫+飛」という国字を使ってもよかったが、気が進まなかったのだろうか。
ともあれ、一般の俗称は蚊食鳥だった可能性があろう。
 我宿に 一夜たのむぞ 蚊喰鳥 一茶@文政8年
 門の月 蚊を喰ふ鳥が 時得たり 一茶@文政14年
まあ、現代でも使われる季語だが。

と言うことで、小生は、「蚊屠り」語源説に軍配を上げたい。

実際、蚊を大量に食すのは間違いないようだし。聞くところによると、現在の日本でも、天井裏に住んでもらうと、蚊帳不要になるほどとか。戸袋だと、糞が下に落ちるが、天井だと外出してから脱糞するので、臭いは気にならないらしい。ヒトが触れることはないから、寄生虫やウイルス感染の問題もないということなのだろうか。エボラウイルス源は野生コウモリが疑われているから多少気にかかるだけが。
ただ、出入り口直下の糞掃除の手間は必要となる。毎朝の掃除が日課となっているご家庭ならどうということはないのだが、そういう時代でもなくなりつつある感じがしないでもない。
考えてみれば、このような糞掃除が結構盛んな時代があったのかも。
コウモリの糞のなかに消化されない目玉が沢山含まれているからだ。・・・「蝙蝠食蚊而眼不化 其屎為夜明砂[醫方集解 "羊肝丸"(治目疾内障)]

コウモリと一口に言うが、色々。洞窟とか、大木の洞に住む種類が、学習で覚えるコウモリ像になっているから、知識と実態とがかけ離れ始めているかも。
小生は、日本では、コウモリと言えば、もっぱらイエコウモリを指したと見る。
夕刻、ヒトが家の外でウロウロしていると、"蚊ホホリ"がその周りを飛び回り始めるというシーンが頭に浮かぶ訳である。

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