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■■■ 日本の基底文化を考える [2018.6.16] ■■■
蜘蛛をこよなく愛した人々[22]

「古事記」のストーリーとは不一致だが、黄泉比良坂で伊邪那美が伊邪那岐に追いつき口論となり、菊理媛神が仲裁したと記載されている書があったと伝わる。
この女神は、山岳信仰の本山的存在である加賀の白山(比)神社のご祭神である。
加賀や若狭は、大和や出雲に並ぶ倭国誕生期の古代信仰を引き継いでいそうだ。互いの関係については今一方よくわからぬが。
出典は不明だが、崇神天皇(所知初國御眞木天皇)創建とされている。倭国創成の流れを汲んでいる神社と主張している訳だ。
海彦系ではなく、山彦系の地域ということかも知れない。

 若狭彦神社("山彦"彦火火出見尊)
 若狭姫神社
(豊玉比淘ク)

崇神天皇創建となれば、神使は白馬ではなかろうか。
ところが、現代宗派の霊能力者が、この女神の眷属は蜘蛛としたようだ。情報不足でこれ以上のことはわからないが。

せっかくだから、蜘蛛が登場したことでもあり、少々、考えてみた。・・・

大和では三輪山自体がご神体。(拝殿しか無い大神神社の存在で有名。)
古事記でも、そのお遣いかご神体の化身かは定かではないが、神婚話が収載されており、「蛇」が男の実体であることを示唆している。
民俗学では、こうした話は、聟(婿)入譚として分類されているが、各地でよく見られるパターンである。
 ・男が毎晩女のもとに通う。
 ・朝方になると姿を消す。
 ・正体不明ということで追跡する。
 ・ヒトではないことが判明。


この聟入譚に登場する動物は色々あるが、明らかに古代の山信仰を反映していると思われるのは、蛇の他には蜘蛛をあげることができよう。
検索すると、綾部猪倉では高城、宇奈月黒薙温泉では立山を信仰対象とする例があることがわかる。これ以外にも山岳地域には少なからず存在しているだろう。こうした民話が作られた時代は新しいこともあろうが、古代信仰を反映していると見て間違いなかろう。

ともあれ女のもとに男通う「通い婚」の時代であり、山は男神たるべしだ。従って、蛇体がその象徴となるのは合点がいく。しかし、その一方で、山が女神の場合もあり、その場合は聟入譚をどう考えるべきか悩ましいものがある。雌蛇ではそぐわないから、雄蛇とするしかないが余りに唐突すぎよう。その場合は、蜘蛛ということになっているのかも知れぬ。
蜘蛛は雌雄の体躯の差が極めて大きく、代表は雌にするしかないことだし。

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