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■■■ 日本の基底文化を考える [2018.7.25] ■■■
鳥崇拝時代のノスタルジー[15]
−松の実喰い−

"の嘴(イスカのハシ)の食い違い"という駄洒落的諺がある。物事が食い違っていることを指す。
聞き慣れない人が多いのは、近松門左衛門の人形浄瑠璃「冥途の飛脚」封印切りの段で知られる言葉だから。
 いすかの嘴のくひちがふ心を知らぬぞ是非もなき。

とは、嘴の上下が合わさらず、上下が交叉しており、上側の先は下向き、下側の先は上向きになっている鳥。
イスカと称されるが、その語源は(いすかし)(心が)捻れているという意味の古語だ。漢字は交喙とすることの方が多そう。
常識外れの嘴設計だが、松毬から種を取り出すことだけを考えれば素晴らしいの一語に尽きる。水を飲む時はどうするのか気になるが。
当然ながら、幼鳥期は普通の噛み合わせ型の嘴で、成長するにつれてねじれてくる。

針葉樹林帯棲息であり、東アジアの鳥信仰の地域の植生とはかなり離れているせいもあるのか、とりたてて取り上げられるような鳥ではなかったようだ。
(冷泉為村歌集:「伊須加の吟」1761年という書物はあるが。)
松の実は大陸では仙人食の一角に位置付けられているのに、それを食す特別な鳥として位置付けられなかったのである。

この鳥は、ユーラシア・北米に広く分布しており、各地の食性的適応と見られる亜種が数多く認定されている。ユーラシアではこんなところ。
日本、ヒマラヤ、天山(山脈)、アルタイ、安南、ルソン、クリミア、キプロス+トルコ+コーカサス、コルシカ、バレアリック群島(スペイン南)>、英、スコットランド

東アジアと違って、冷涼乾燥な気候帯に覆われている欧州では、この鳥への対応は違うようだ。
イエスの磔の場面では、新約聖書には鳥の記述は見かけ無いが、ゴスペル的伝承話が残っているそうだ。体色が血の色ということだからか、交喙もそのなかに選ばれている。
○交喙Red crossbill…釘を抜こうとした。
○燕Swallow…茨の冠を外そうとした。
○ヨーロッパ駒鳥European robin…痛みを癒すため囀った。
○鳩Dove…傍らで喪に服した。
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