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■■■ 日本の基底文化を考える [2018.8.9] ■■■
鳥崇拝時代のノスタルジー[30]
−猫頭鷹の捉え方−

フクロウとミミズクは、耳ではないが、それとしか思えない羽角の有無で区別される。例外があるが、死体だけで、生態をじっくり観察できなかった北方ミミズクの誤認の結果では。
そもそも、この耳的羽の機能が語られていないが、小生は枯葉の擬態と見る。夜行性であり、昼間、餌となる小鳥の棲息地の樹木に止まっていたりすると、小鳥に襲われたりすることもある位で、目立たなくするのは結構重要なのでは。
分類的には、こんな具合と見た。

 梟/鴟///(貌鳥)フクロウ@ユーラシア(亜寒帯)ふくろふ
  金目梟キンメフクロウ@北半球(亜寒帯)
  雀梟スズメフクロウ@ユーラシア(タイガ定住性)
  白梟シロフクロウ@極北
  《木菟/耳木菟/角鴟》ミミズク(みみ)づく(羽角突き)
  青葉木菟アオバズク@東アジア〜東南アジア〜インド
  木葉木菟コノハズク@東アジア〜東南アジア〜インド
      (↑近年、"仏法僧"の鳴き声の主と判明。)
  小耳木菟コミミヅク@北半球(渡り鳥)…注意:"小耳"の木菟
   虎斑木菟トラフズク@北半球(渡り鳥)
  鷲木菟ワシミミズク@ユーラシア(亜熱帯〜亜寒帯)
  島梟シマフクロウ@樺太と対岸沿海地域…注意:梟だが有羽角

日本で一番知られていた種は小耳木菟コミミヅクではなかろうか。小生の感覚的には、頭鷹がピッタリ。
上記のなかでは、かなり異端的な鳥である。一般的には林禽の筈だが、この種だけは、湿地あるいは水辺に近い野原に棲息しているからだ。
しかも、渡り鳥とくる。つまり、群れでやって来る。これで目立たない訳がなかろう。
巣は地上。当然、地面に居ることが多いが、杭のようなものがあると、そこで留まって、じっとしていることが多い。ヒトからすれば、じっと見つめられるからどうしても目が行く。本来的には夜行性とされている鳥だが、実際は、昼光下厭わずで餌が動き始める夕方前の活動が多いようだ。

そもそも、猛禽類は肉食なので餌捕獲が大仕事であり、餌場たる縄張りを持つのが普通だが、そんな一般解をものともせず暮らしているのである。それを考えると、萱鼠が多かった時代、この鳥にとっては日本列島はさぞかし魅力的な地だった筈。

しかし、この種は、和歌には登場してこないようだ。耳木菟はあくまでも林禽であるべきと言うことか。・・・

 足引きの 山深く棲む 耳木菟は 世の憂きことを 聴かじやと思ふ
   土御門院[「夫木和歌抄」#12794]
 山風に 楢の葉樫葉 音高し 棲む耳木菟も きぞや驚く
   葉室光俊[「夫木和歌抄」#12795]
  (ご注意:漢字化は誤っているかも知れませんい。)

政治的に騒がしくなった時代であり、耳木菟には、癒しの猫的な愛着を覚えていたのかも知れぬ。

一方、耳無しの梟=鴟の位置付けは、全く違う。
よく知られるように、「説文解字」では"不孝鳥"。儒教勢力が父母を喰う鳥として扱ったからである。
「常陸國風土記」では、土着の抵抗者である國巣の悪き性分表現につかわれている。
古老曰く、昔、國巣(俗語ではツチクモ又はヤツカハギと云う。)在り。・・・常に穴に居住。
・・・狼の性で、梟の情、・・・。

  [(参照) 秋本吉郎[校注]:「風土記」日本古典文学大系2 岩波書店 1958年]

もともと、悪霊が跋扈する夜間に、儒教が最重要する宗廟を守護する番人とされていたようで、それこそ恐ろしきモノに、恐ろしき鳥が対抗するの図。殷の時代にすでに紋様が確立しており、そのような扱いがされていたことが知られている。
古層の信仰なのである。
  「鴟 [@「詩經」國風 風]
 鴟、既取我子、無毀我室。恩斯勤斯、鬻子之閔斯。
  天之未陰雨、徹彼桑土、綢繆戸。今女下民、或敢侮予。
 予手拮据、予所荼、予所蓄租、予口卒、曰予未有室家。
 予羽、予尾、予室翹翹、風雨所漂搖、予維音


日本の仏僧なら、そのような流れを嫌いそうなもの。語呂合わせで、不苦労や百八ツ(2x9x6)と呼んでいる人もいたというのに。実情から言えば、三条河原に於ける梟首刑の世界を追認する以上ではなかったのである。(要するに、人々総出で梟の杜に向かい、梟族を対象とした徹底的な首狩りイベントを愉しんでいたことを示す古い用語である。"仏法僧"の鳴き声の主も血祭りにされただろう。)
このような歌が残っている。
 山深み 気近き鳥の 音はせで 物恐ろしき の声
   西行法師[「夫木和歌抄」#12796---「山家衆」#1203]
 物思えば 木高き森に の 苦しきかとも 問ふ人ぞなき
   寂蓮法師[「夫木和歌抄」#12797]
  (ご注意:漢字化は誤っているかも知れません。)
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