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■■■ 日本の基底文化を考える [2018.8.18] ■■■
鳥崇拝時代のノスタルジー[39]
−日本で囀らない鳥−

鶲/火焚ヒタキ一族を眺めたが、その近縁とされており、種によっては所属変更を強いられたりした経緯があるのが、鶇//鳥馬ツグミ系。
名前はよく知られているものの、親近感を覚える人は少ないようだ。地面をホッピングしている姿を見かけることが多く、その存在自体はポピュラーなのだが、警戒心が強いせいもあり、余り好かれないということか。

昔から、面白い名前だと言われており、その由来は"口をつぐむ"の意という人が多い。教えてもらうと、オ〜、確かに鳴かないナ、となる訳だ。
そんな習性からか、詠おうと考える歌人は技巧派しかいなかったのかも。
物名 つぐみ 大伴黒主[「拾遺和歌集」#404, #405]
我が心 あやしくあだに 春くれば 花につく身と などてなりけむ
咲く花に 思ひ付く身の 味気なさ 身にいたつきの 入るも知らずて

・・・「つくみ」ツグミ、「あじきなさ」アジ、「いたつき」タヅ

しかし、当たり前の話だが、大集団で渡る鳥であり、"鳴かず"などあろう筈もない。到着直後の林中や、一斉に帰ろうとする時は相当に鳴く筈である。
この鳥は、集団でやってきても、到着すると散開して過ごすため鳴き合う必要がなくなるだけの話。旅先では大声を出さないことにしている訳で、そこらは大陸の人々の文化とはえらく違う。もちろん、沈黙に徹しているのではなく、コミュニケーションが必要となれば小声を出す。

到着時の季節にもよるが、果実が実る時期を楽しみやって来るようで、園芸農家には天敵そのもの。それ以外の人々は、熟しきった実を一心に突く姿を見て"秋深まりき"の想いをつのらすことになる。
その後は、地面に降りて虫を突くことになる。冬枯れに歩き回る姿を眺めるのも面白いと思うが、すぐ逃げてしまうのでそれほど関心を呼ばなかったようだ。

還らねばならない時期には、里にいる連中も相当に鳴く筈で、一苦労の旅までもう少しここに居たいものだと主張しているのではないかとの歌があってもよさそうに思うが、そのような情景は気分が乗らなかったのであろうか。

尚、虎鶫トラツグミはここの所属。その鳴き声がえらく嫌われている。
 鶇//鳥馬ツグミ
  赤腹アカハラ
  黒鶇クロツグミ
  虎鶫トラツグミ…ヌエ
  眉白マミジロ
  黒歌鳥クロウタドリ
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