[→本シリーズ−INDEX]

■■■ 日本の基底文化を考える [2018.8.20] ■■■
鳥崇拝時代のノスタルジー[41]
−純外洋棲の鳥−

本格的魚獲水鳥のうち外洋性の鳥を見ておきたい。

古代の海人はよくご存知の鳥ばかりだと思うが、貴人化して歌を詠むようになると、そんな記憶は消し去られるもの。

ほとんどの名前は新しいものと見てよさそう。
例えば、阿呆鳥など、捕獲商売が始まって一般化した名前だろうし。
ただ、江戸期には海外資料をも用いた百科事典的な図譜製作が流行っていたから、その時にそれなりに考えてつけられた名前の可能性が高い。すでにその時点で、古代名は辿れなくなっていたと見てよかろう。
なかには、結構見かける種もあるが、すでにその時点で、"○○鴨"といった手の、誰が見ても全く無縁そうな種の名称が地域毎に勝手につけられていたのでは。専門家は、そんな名称を無視するしかなかろう。

●信天翁/阿呆鳥アホウドリ
現代日本では、小笠原棲息ということで保護活動が知られるが、そのあたりまで古代人が訪れていたかはなんとも言い難し。
しかし、伊豆諸島には、火山信仰の海人が住んでいたのである。しかも、産出する黒曜石を本州に供給しており重要な拠点だった。その島々の有人南端は現在は青ヶ島。ココと小笠原の中間地点にあるのが火山島で断崖の鳥島。名前から見て、ここが一大繁殖地だったのは間違いなかろう。
そして、漂流者が必ず辿りつく島でもあった筈。どうやら生きていくだけ以上の生活しかできぬが、そのような憂き目にあった古代人がいたのは間違いない。
鳥にしても、繁殖期を除くと、太平洋上で魚や烏賊の群れと一緒に北上し帰還するという生活をしていた筈である。

●海燕ウミツバメ
姿が燕に似ているのではなく、脚を垂らしてひらひらと海面すれすれを飛ぶ様子がそっくりというにすぎない。陸地に居るのは夜間のみ。その巣は、肉食獣から隔離された岸辺だから、その存在をしるのは海人のみ。

●水薙鳥ミズナギドリ
立派な水掻きがあり、常時洋上生活していそう。しかし、羽ばたいてからグライダー的に水面を飛ぶことにも長けている。
そんな姿を見て、始終荒れる外洋で凪いでいる時に現れるということで水凪鳥と呼ばれたのだろう。その発想は現代的だ。餌が獲り易い気象条件の海域に移っていくにすぎないのだから。
いくら、完璧な外洋性の鳥と言っても、繁殖時だけは上陸不可欠。穴を掘ったり、岩の割れ目利用と、工夫した巣作り。
熱帯域が多く、南半球島嶼好みの種だらけだが、日本近海にも進出する種がおり、渡り的な活動なのだろう。
海人は、長距離航海を実現できる能力を身につけ一人前。帰還できたりすれば、超人扱いで、神の地位に登りつめる。そのセンスから言えば尊敬対象の鳥と見てよいだろう。
嘴細水薙鳥ハシボソミズナギドリなど、1年累計渡り距離が32,000km内外と言われるのだから。
繁殖地(豪州ビクトリア/タスマニア)→日本近海→(ベーリング海)→北米沿岸→(太平洋)→帰還

●軍艦鳥グンカンドリ
空母登場時代にこの用語ピッタリということで使い続いていそう。倭の伝統の戦船のイメージとは程遠いにもかかわらず。
熱帯〜亜熱帯の鳥で、せいぜいが太平洋岸に迷鳥として渡来するだけなので、注視されていなかったかも。
そう思うのは、水に入ると溺れるので、長時間洋上飛翔しているしかないからだ。
いくら目が良い海人でも、ア〜、いるな程度しかわからない。

●鰹鳥カツオドリ
この鳥は、熱帯〜亜熱帯に棲息。しかし、そこから外れるにもかかわらず、黒潮沿岸に営巣地は少なくなかったようだ。巣はもっぱら断崖の岩棚である。
大型魚に追われ水面に出る小魚横取り猟に徹する鳥だ。海人にとっては、魚群探知機のようなもの。
従って、種の名称と言うよりは、そのようなタイプの鳥の総称だろう。

外洋性本格的魚獲水鳥には、このような通称名がついていたと見てよいのでは。
例えば、烏賊好きの種は、沖糠蝦食でもあろうから、鯨鳥と呼ばれることになる。
もちろん、鮪鳥もいた筈だ。
[→鳥類分類で見る日本の鳥と古代名]

  本シリーズ−INDEX> 超日本語大研究−INDEX>  表紙>
 (C) 2018 RandDManagement.com